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荀子 巻第六富国篇第十 2 その2

前回は、国家が富む方法は、国家財政を節約することで剰余を生み、民衆が豊かになり好循環していくことを読みました。続きです。

用を節し民をゆたかにすることを知らざれば則ち民は貧しく、民貧しければ則ち田はせてれ、田のせてるれば則ち出実なかばならず。上は取ることを好みて侵奪すると雖もることすくなからん。

(「荀子」岩波文庫 金谷治訳注)

侵奪→他をおかし、その権益や所有物をうばうこと。
た→そうはいっても。とはいえ。
節約です。
『(国家の)費用や労力などを節約し民を豊かにすることを知らなければ民衆は貧しく、民衆貧しければ田はやせて荒れ、田はやせて荒れれば収穫は半分にもならない。上は物欲が高く民衆より税を奪い取ろうとしても得るところは少ないだろう。』

而も或いは礼を以てこれを節用すること無ければ則ち必ず貪利たんりきゅう(収)■1きょう(取)の名ありてつ空虚窮乏の実あり。此れ佗(他)の故なし。用を節し民をゆたかにすることを知らざればなり。康誥こうこうに、[民を]おおいにおおうこと天のごとく徳にしたがえばなんじの身をゆたかにせん、と曰えるは此れを謂うなり。

(同)

■1きょう→漢字は「言」偏に「喬」
貪利どんり→欲深く利益を求めること。たんり。
きゅう■1きょう→罪をただあばく。また、利をむさぼって税を取りたてる。
空虚→①内部に何もないこと。また、そのさま。から。
窮乏→金銭や物品が著しく不足して苦しむこと。
康誥こうこう→金谷先生の訳では「『書経』の康誥こうこう篇に」とあります。転用させていただきます。
弘→ひろい。大きい。
拙訳です。
『しかも礼を用いて(国家の)費用や労力などを節約しなければ必ず欲深く税を取り立てると言われ且つ実態は金銭や物品が不足して苦しい。このことに他の理由はない。(国家の)費用や労力などを節約し民を豊かにすることを知らないからである。『書経』の康誥こうこう篇に天のように広く民衆を覆い徳を守れば、あなたの身は豊かになるだろうというのはこのことを言っているのである。』

前回は用を節した時の話、今回は用を節しない場合の話でした。
ただ節するのではなく「礼」を以てというところがポイントですね。
続きは次回とします。

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