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荀子 巻第五儒王制篇第九 6 その2

前回は、王者は人心を得て、覇者は同盟国を得て、彊(強)者は地を得るが、強者の力は敵国と自国双方の民から怨まれて危ういということを学びました。続きです。

彊道を知る者は彊を務めざるなり。おおむね王命を以(用)いて其の力を全くし其の徳をさだむ。力全ければ則ち諸侯も弱むること能わず、徳の凝まれば則ち諸侯も削ること能わず。天下に王覇の主の無きときは則ち常に勝つ。これ彊道を知る者なり。

(「荀子」岩波文庫 金谷治訳注)

全く→完全にその状態になっているさま。すっかり。
拙訳です。
『強者の道を知る者はただ強くなることをしない。ほぼ王の命令に従いその力を完全な状態にしその徳を定める。力が完全であれば諸侯はこれを弱めることができず、徳が定まっていれば諸侯はこれを削ることができず、天下に王者・覇者がいない時は常に勝つことができる。これが強者の道を知っている者だ。』
彊だけだと自国他国の民から怨みをかい危険な状況になる(前回部分)が、徳を定めることでその危険を遠ざけることができると教えてくれています。
続いて覇者の説明がされます。

彼の覇者は然らず。田野をひら倉廩そうりんを満たし備用を便にし、すなわち募選を謹しみて材技の士をえらび、然る後に慶賀をすすめて以てこれをみちび(導)き、刑罰を厳しくして以てこれをただ(正)す。[かくして]亡を存し絶を継ぎ、弱をまもり暴を禁じ、而して兼幷の心なければ、則ち諸侯はこれに親しむ。

(同)

募選→つのりえらぶ。志望者を招き寄せる。
謹→言動に注意してかしこまる。細かく気を配る。
材技→武芸が人に過ぐる者。
兼幷→兼併→かね合わせて一つにする。
拙訳です。
『覇者はそうではない。(国内にあっては)田野を開墾し備蓄用の蔵を満たし便利にして、細かく気を配って武芸に秀でた者を招き選び、喜び祝って指導しつつ、また刑罰を厳しくして彼らを正しく導く。(国外にあっては)亡び絶えそうな国を助けて存続させ、暴力を禁じて弱国を守り、併呑の気持ちが無ければ、諸侯は親しんでくる。』
この後、他国を征服する気持ちを持てば諸侯は離れていくという説明があります。少し端折って続きです。

故に其のわさざるの行を明かにし、其の友敵の道を信にす。天下に王の主の無きときは則ち常に勝つ。是れ覇道を知る者なり。

(同)

拙訳です。
『だから他国を併呑しないということを明らかにし、友と敵の在り方に偽りをなくす。天下に王者がいないときは常に勝つ。これが覇道を知る者である。』
国内においては富国強兵を図り、外国に対しては友として弱国を助け守り、「わさざる」を明確に示すことが覇道の基本なんですね。友としてというところがいいですね~。

前回と今回で、彊道と覇道を学びました。続きます。



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