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荀子 巻第三非十二子篇第六 1 その1

本日より「非十二子(十二子をそしる)篇」に入ります。

仮今いまの世に、邪説を飾り姦言をかざりて以て天下を■1きょう(擾)乱し、矞宇きつう嵬瑣かいさ、天下をして混然として是非治乱の存する所を知らざらしむる者に人有り。(「荀子」岩波文庫 金谷治訳注)

■1→漢字が表記出ません。さんずいに右上に鳥、右下に豕ではないかと思うのですが字が小さくて・・・。(擾)とありますので、擾乱→入り乱れて騒ぐこと。また、秩序をかき乱すこと。騒乱。で意味を取っていきます。
矞宇きつう→いつわり誇る。調べた辞書の読みは「けつう」でした。
嵬瑣かいさ→嵬は理想に走って過激な行いをする者、瑣はよこしまでつまらぬ行いをする者。一説に、くどく細かくてとるに足らぬこと。
拙訳です。
『今の世に、邪説・姦言なのに飾って見せ天下を騒乱させる、くどく細かくて取るに足らぬことをいつわり誇る、世の中を混然とさせて是と非、治と乱があることを分からなくしている人がいる。』
今風な言い方にぶっちゃけると、『似非えせ文化人が人々を煽動している。』という感じでしょうか。その似非文化人が12人にいて、その12人をそしるというのが本篇のタイトルになっています。

本文ではこの先12人を論難していくのですが、先に論難される12人を挙げておきます。
它囂たごう→いかなる人物か不明
魏牟ぎぼう→楊注では、『荘子』と『列子』にみえ、また『漢書』芸文志に四篇の著書が著録される道家の公子牟をこれにあてる。
陳仲→戦国時代の斉の国の名族でありながら、水汲人足となって灌漑にあたり、清廉さをもとはやされて於陵仲子おりょうちゅうしと号した。
史鰌ししゅう→春秋時代の衛の大夫で字を子魚といい正直をもてはやされた。
墨翟ぼくてき→B.C.400年頃の思想家、墨家の開祖。兼愛(ひろく愛しあう)・交利(利益しあう)・非攻・節倹・非楽(音楽否定)などを説いた。
宋鈃そうけい→B.C.4世紀末、孟子と同時でやや先輩の思想家、寡欲・禁攻などを説いた。
慎到しんとう→B.C.300年頃の法思想家、『漢書』芸文志に慎子42篇の書があるが今日に伝わる書物は明人の偽作。
田駢でんべん慎到しんとうと同じころ斉の稷下にいた道家的思想家、田子25篇の著作があったが亡んだ。
恵施→戦国時代の孟子と同じころにの宰相ともなった弁舌家。
鄧析とうせき→春秋時代のていの詭弁家で宰相の子産に刑戮されたという。
子思→孔子の孫の字、名はきゅう。『中庸』を作ったといわれ、その学派の著述に『子思子』23篇があった。
孟軻もうか→孟子のこと、B.C.300年ごろに仁義王道を唱え性善を説いて活躍した。『孟子』7篇の書は有名で「四書」の一つしてひろく読まれてきた。

儒家の先輩・孟軻もうか(孟子)もそしる対象になっていますが、「性悪説」の荀子からすると「性善説」の孟子は非難の対象になるんですね。どんなふうに批判しているのか、興味津々です。しかし、12人の紹介だけで疲れてしまったので、続きは明日以降に投稿します。

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