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荀子 巻第三非十二子篇第六 1 その4

「巻第三非十二子篇第六 1 」が長くなっています。今回は「その4」です。

ほぼ先王に法とるも其の統を知らず、猶然ゆうぜんたるも材(才)ははげしく志は大にして聞見は雑博、往旧を案じて説をしこれを五ぎょうと謂い、甚だ僻違へきいにして類なく幽隠にして説なく閉約にして解なし。ここ(焉)に其の辞を飾りてこれを祗敬し、此れ真の先君子の言なりと曰う。子思これを唱え孟軻もうかこれに和す。世俗の溝猶瞀儒こうゆうぼうじゅ嚾嚾然かんかんぜんとして其の非なる所を知らず、遂に受けてこれを伝え仲尼と子游ともれが為めに後世におも(重)んぜらると以為おもえり。是れ則ち子思と孟軻の罪なり。(「荀子」岩波文庫 金谷治訳注)

猶然ゆうぜん→ゆったりとした様子。ゆるやかに遅い様子。
材→⑨才能のすぐれること。才知のあるもの。
劇→①はげしい。(オ)いそがしい。わずらわしい。猶然ゆうぜんへの対となる意味はこれが良いかなと思いました。
聞見→「見聞」に同じ。見聞→実際に見たり聞いたりすること。また、それによって得た経験・知識。けんもん。
雑博→雑学→いろいろな方面にわたる、秩序だっていない学問。
往旧→むかし。以前。
案ずる→③はっきりしない点を明らかにする。
僻違へきい→そむきたがう。
幽隠→②暗くてはっきり見えないさま。
閉約→熟語ではないようです。閉→とじる。とざす。約→⑮けち。ものおしみ。
祗敬→つつしみうやまう。
溝猶こうゆう→おろかで、ためらう。無知で考えが定まらないこと。
瞀儒ぼうじゅ→おろかな儒者。
嚾嚾かんかん→かまびすしいさま。争っていいたてるさま。
拙訳です。
『ほぼ過去の聖王にならうが統一性がなく、ゆったりとしているがすぐれたその才能はわずらわしく、志は大きく知識は多方面にわたるが秩序だってはいない、昔のはっきりしない点を明らかにして類をみない異質な五行という説を立てるもその説はうやむやで解答を示していない。子思が五行説の言葉を飾って慎み敬いこれこそ先君子の言葉だといい、孟軻(孟子)がそれに追従した。無知で愚かな儒者たちはその説の誤りを知らずに言い争っていたが、結局は五行説を受け入れ伝えたことにより仲尼(孔子)も子游も五行説により重きをなすようになったと思われている。これが子思と孟軻(孟子)の罪である。』

五行という言葉が出てきますが、子思や孟軻が五行説を説いたいうのは事実に合わないことだそうです。事実ではないから合致しそうな「五倫」や「五常」に差し替えるというのは良くない、荀子が「五行」を批判しているのだから、事実に合わなくても「五行」としておくべきだということを金谷先生は注に書かれています。
謎の「五行」なんですね。孟子対荀子、二人の間の謎の「五行」、孔子の孫の子思も絡めて小説になりそうじゃないですか? せっかくだからそしりの対象12人全員登場した方が面白そうですね。すみません、疲れて妄想が止まりません(苦笑)

やっと6グループ12人へのそしりが終わりました。「巻第三非十二子篇第六 1」はまだ終わらず「その5」に続きます。

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