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荀子 巻第十三礼論篇第十九 1 #2

礼とは「養」うことであるとし、その理由として、人には欲望があり欲望のままに行動すると必ず争いが起き世が混乱する、物事を量る境界を決めて欲望が満たされるようにすれば争いは起きず世の中も安定するとし、物事を量る境界を決めて養い欲望を満たすことが礼の始まりであるとしています。
さらに、君子は「養」を既に得ているので「別」を好むとしていました。
続きです。

故に天子の大路に越席するは体を養う所以なり。側に睾芷こしを載するは鼻を養う所以なり。前にかぎれるよこぎのあるは目を養う所以なり。和鸞からんの声の歩には武象にあたすうには韶護しょうごに中るは耳を養う所以なり。竜の旗には九ゆう(旒)あるは信を養う所以なり。寝兕しんじ特虎[を画き]みずちけんと絲[織り]のおおい(■1)との竜とは威を養う所以なり。

(金谷治訳注「荀子」岩波書店、1962年)

■1→「辟」の下に「巾」■1→②車のちりよけ。
大路→②天を祭るときに天子の乗る車。また、諸侯の乗る車。大輅。
越席→②がまを編んで作ったむしろ。がまむしろ。
睾芷→香草。
錯→ ③おく。すえおく。
衡→⑥てすり。
和鸞→車に飾る鈴。和鑾。
武象→周の武王の徳をたたえた音楽。
韶濩→殷の湯王の音楽。一説に、韶は舜帝の音楽、濩は殷の湯王の音楽。
斿→旗の吹流し。また、旗の先につけた飾り
竜旗→天子の旗。
寝兕→一説に寝た野牛の意で、車輪に画く装飾をいう。
持虎→特虎では辞書にありませんでしたが、持虎がありました。持虎→①虎の皮で作った弓袋。②猛獣の皮で作った車の飾り。
蛟→みずち。竜に似ているとされる想像上の動物。
韅→車を引く牛馬の、両脇から背にまわす皮ひも。
絲→①きいと。きぬいと。③きぬ。
末→🈔とばり。すだれ。
弥→⑪ぬう。つくろう。
拙訳です。
『天子の車にがまむしろを用いるのは体を養う元である。側に香草を乗せるのは鼻を養う元である。前に据え置かれた手すりにつかまり(風景で)目を楽しませる元である。車に飾る鈴の音は歩いている時は武王の音楽のようで、走る時は湯王の音楽のようで耳を楽しませる元である。天子の旗には九つの吹き流しがあるのは信頼を養う元である。車輪に描いた兕の飾り絵や虎の皮で作った車の飾り、蛟の皮ひもと絹の覆いに縫った竜は威厳の元である。』

「養」うことの説明として、天子の乗る来るの様子が書かれています。
今の車で言うと、柔らかいクッションで体を休め養い、芳香剤で鼻を養い、景色を楽しみ目を養い、カーステレオで耳を養い、吹き流しに該当する者はありませんが強引にナンバープレートとして信頼を養い、タイヤのホイールや車体には飾りをつけて威厳を示す元にするという感じでしょうか。
続きは次回とします。

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