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vol.12 茶房の長期休業を決意と製造工場への設備投資。/京西陣菓匠 宗禅を強くした、コロナ禍のV字回復を振り返る。

こんにちは。京西陣菓匠 宗禅の店主、山本宗禅です。

今回も『京西陣菓匠 宗禅を強くした、コロナ禍のV字回復を振り返る。』コロナ禍の経営困難を京西陣菓匠 宗禅を含むグループ3社が、いかにして乗り越えてきたかを振り返っていきます。

同じような悩みを抱えていたり、経営困難に立たされた経営者の方のお役に立てたら。お付き合いいただけると幸いです。

前回のまでの流れはこちらです▼


2022年8月31日~9月2日 3度目の幹部合宿

大阪にて私たちはコロナ禍で3度目の幹部合宿を行います。この合宿が、もう一度自分自身のモチベーションを上げるための契機となりました。

私は合宿直前に、Our Purposeを『私たちが起点となり喜びの輪が広がる未来に貢献します』から『私たちは菓子文化の継承と革新を通して、喜びの輪が広がる未来に貢献します』に、OurAmbitionを『お客様の喜びを探究し心の豊かさをお届けする』から『お菓子を作る仲間が持続可能であるために、私たちは強いサプライチェーンを構築します』に変更しました。

変更を行ったのは、前記事で記した仲間の倒産が大きく起因します。

Our Purposeの変更は「自分は何のために仕事をし続けるのか?」を自分に問いかけ続けた答えでした。
そして、Our Ambitionの変更は、倒産した仲間のような会社をこれ以上出さないためにも、私たちは強いお菓子のサプライチェーンを作り、商品開発、製造、加工、物流、販売と、困っている菓子メーカーを多方面から助けられる共同体を作る!という決意を掲げたものです。

1日目:経常利益1億円達成!そして次の目標へ

まずは昨年度の振り返り。2021年度の戦略的フォーカスがコードネーム【All for 2021】

『私たちは常に事実に向き合い、改善と挑戦を繰り返すことで個人目標を達成し、経常利益1億円を3社で実現します』

最終結果は、グループ3社で経常利益5,500万円と実際の合計で1億円達成はできませんでした。ですが、長寿堂恵佳で採択された事業再構築補助金5,100万円(この時点では未入金でした)を合わせると、1億円超です。

私たちは終わりが見えないコロナ禍の危機の中、3社合わせて経常利益1億円を達成することができました。

2021年度の振り返りを行った後、2022年度のKGIを3社で売上12億円・営業利益5千万円と設定しました。そして、これを達成するための課題や問題点などを幹部それぞれが出し、経営課題として5つに分類しました。午後からは2022年度の戦略的フォーカスをみんなで作ります。

2022年戦略的フォーカス
『私たちは常に事実に向き合い、次のステージに向けたTEAM SOUZEN5 大戦略を実行することで、グループ総売上12億円・営業利益5千万円を達成する』

その後、2022年度グループ各社の未来の試算表を作成し、各自への売上必達予算を振り分け、1日目の合宿は終了しました。

1日目の懇親会はホテル近くのビストロを貸切り、わいわいと飲みながら2022年戦略的フォーカスのコードネームを決定しました。
2022年戦略的フォーカス コードネームは、【ROAD TO NEXT STAGE 2022】です。

2日目:去年の暗いムードを笑い話にできた喜び

私の強運なのかも知れませんが、有難いことに2022年7月より1年間限定で、私の兄貴のような存在である有名社長にメンターをしていただくことが決まりました。

その課題として、今までほとんど実践したことがなかったPPM分析、3C分析、4P分析、5F分析などを合宿に取り組んでみました。
この取り組みが、この後の宗禅のさらなる大きな原動力となり、会社の売上をアップしていきます。

そして5大戦略を完遂するための役割分担をして、合宿の2日目は終わりました。

2日目の懇親会は前期も頑張ってくれた幹部たちへのお礼の気持ちと、またTEAM SOUZENの幹部としてのセルフイメージを高めてもらうためにも奮発して鉄板焼きを食べました。

補助金の不採択結果でどんより暗い空気になった昨年の合宿をネタに大いに笑い、盛り上がりました。そして、過去の不遇を笑える現在の有難さを味わったのです。

3日目:行動計画を共有すること

最終日は、幹部それぞれが必達予算を達成するための行動計画と行動KPIを作り、発表していきます。そして、恒例となった各自の決意動画を撮影し、3回目の合宿は終わりました。

余談ですが、2022年度の決意動画のテーマ曲は、ゆずさんの「栄光の架け橋」にしました。

2022年9月11日 京都駅3店舗目「八条口店」オープン

さらに私は京都駅に3店舗目となる八条口店を開店します。「必ず駅から回復する」そして「この京都駅の3店舗がV字回復の要因となる」と確信していたからです。

卸販売ではなく、商品を自由に決めて販売できる直営店を京都駅に3店舗持てることは、今後の京都ブランド商品の開発に大きな弾みともなります。また京都で創りたい商品を開発し、いつでも自由に販売できる武器を手に入れたのでした。

京都駅3店舗目となる八条店のようす

2022年10月31日 西陣本店併設の茶房、長期休業を決意

これまでこだわり続けてきた京西陣菓匠 宗禅 西陣本店に併設の茶房(カフェ)を長期休業すると決断しました。

茶房は私の夢であり、私の自己満足を満たす大切な場所でした。また、毎年多くのマスコミにも紹介され、宗禅の発信拠点的な位置付けとなっていました。

しかし、1店舗しかないことや、こだわりすぎたメニューにより効率は悪く、赤字状態が続いていたのです。それでも働き手からは「茶房は社長の趣味の店だし絶対に閉めることはないだろう」と考えられていました。

ですが、会社を健康的に存続させるためには、「自分のやりたいことよりまずは利益を出して、働き手を守ることを優先する。ようやく観光客が動きだした今、全働き手の力を商品を売ることに集中させるために、大切な茶房であっても閉店する」という私の確固たる信念を体現しかったのです。

この決断により、販売するしか生き残る道はないという働き手の想いがひとつになり、さらに売上は伸びていきました。

【ここでの学び】
時として、自分個人の大切なものを手放しても、会社や社員と共有する利益を優先する。
その姿勢を見せることで、チームの想いがひとつになる

余談ではありますが、2024年3月に茶房は再オープンを果たすことができました。
コンセプトもメニューも大きくリニューアルし、「体験できるカフェ」として多くの方々に喜んでいただいています。

再オープンを果たした『茶房 宗禅』

2022年12月 コロナ禍の後を見越した設備投資

お菓子製造販売業ではパンデミックの収束をただただ待つ企業が多い中、弊社では1億円を越える機械投資を行いました。12月には自動包装機や自動計量器など大きな機械が入り、箱詰めや袋詰めなど多くの人員が必要な製造加工が大きく効率化。

これらの投資は事業再構築補助金を活用させていただいたのですが、このタイミングでさらに金融機関から借入をし、追加で約5千万円を製造現場の機械に投資したのです。

コロナ禍の経営不振の中、どうしてそこまで投資するのか?といえば、必ず売上が戻るとの確信があり、景気が回復した後には製造現場の人手不足は深刻化すると予測していたからです。

その考えは的中し、10月11日から全国旅行支援が開始されると、日本人観光客が動き出し、11月に入ると売上の伸びが一気に加速。

弊社では、コロナ禍の経営不振時でも働き手を一切解雇せず、さらには倒産した仲間の会社で勤めていた社員さんたちを雇い入れていたこともあり、人手不足に悩まされることはありませんでした。


また、コロナ禍の厳しい状況の中でも、取引先への商品を欠品することなく、廃棄ロスを顧みずに商品供給を行いました。他社では賞味期限の問題もあり、商品の供給を減らしたり、納品をストップするメーカーが多くあったと聞いています。

お客様第一』の考えと、『人様に喜んでいただく(困りごとをともに解決する)』という経営理念を守ったわけですが、供給を止めないという選択は、時として大変苦しいものでした。しかし、この選択による大きな恩恵もありました。

なんと、他社が商品の供給をストップしたことで、納品先の店先で売場に空きが発生し、商品陳列棚に弊社商品が並ぶようになっていたのです。商品供給の流れを止めずに商品を供給し続けることで、宗禅の販売先がパンデミック前よりも大きく拡大していました。

【ここでの学び】
お客様のために苦しい時でも通常運転をキープすることで、空いた穴に抜擢される可能性がある。

また、グループ会社である長寿堂恵佳は、製造に特化する宗禅の下請けというポジションに位置付けしていました。宗禅が売れるほどに売上が上がるという算段です。

それでもなお、コロナ禍以前同様に売上が戻らない期間が続いていましたが、本来の大阪土産屋としての販売が伸びてくると、過去最高売上を叩き出すまでになりました。

そして、もうひとつのグループ会社、物流会社のトライズネットは、京都、大阪、神戸と配送の範囲を広げました。売場が拡大する宗禅商品を宅配会社や他社の運送会社からトライズ配送へと切り替えるだけで、利益を上げる体質に転換できたのです。

この頃から、3社全てが営業黒字に転換します。
合宿にて、各自の年間のゴールセッテイング(KGI)を設定して幹部同士で握り合い、毎月のKPIに落とし込み、毎週の幹部朝礼で進捗をシェアすることを繰り返した成果と言えるでしょう。

それぞれが決めたゴールセッティングをチームで共有、進捗報告と管理を徹底することで、幹部たちは自分がすべきことを自ら考え、行動できるようになり、さらに強い組織へと成長を続けます。

【ここでの学び】
目標を決め、達成するための行動を明確化、目標が達成できなければ、何故できなかったかを自省する。その繰り返しと小さな成功体験を築き上げることで、個人は飛躍的な成長する。

次回は、コロナ禍の経営危機の振り返りと『コロナを乗り越えた感謝の会』について記します。


本日はここまで。
今回もお読みいただき、有難うございました。

次回もお付き合いいただけますと幸いです。

ではまた。
山本宗禅


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