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vol.11 働き手の大きな成長と、復活の兆しが見えた矢先のマイナス収益〜京西陣菓匠 宗禅を強くした、コロナ禍のV字回復を振り返る。

こんにちは。京西陣菓匠 宗禅の店主、山本宗禅です。

今回も『京西陣菓匠 宗禅を強くした、コロナ禍のV字回復を振り返る。』コロナ禍の経営困難を京西陣菓匠 宗禅を含むグループ3社が、いかにして乗り越えてきたかを振り返っていきます。

同じような悩みを抱えていたり、経営困難に立たされた経営者の方のお役に立てたら。お付き合いいただけると幸いです。

前回のまでの流れはこちらです▼



2022年2月17日 アリババで海外へのライブ配信に挑戦

私たちは新たな取り組みとして、アリババを活用したライブコマースでの販売に挑戦しました。

グループ会社のひとつであるトライズネットの事務スタッフがプラカードを手づくりし、宗禅の商品販売のためにライブ配信や出演までしてくれたのです。

何度も練習を重ね、私もたどたどしい棒読みの英語で海外に向けた初のライブ配信に挑みました。結果、多くご視聴とご好評の声をいただき、私にとってもライブ配信に関わった働き手にとってもあたたかな励みとなりました。

また、この挑戦によって、グループの団結力がさらに増したというのも嬉しい出来事。コロナ禍の危機に打ち勝つため、営業や販売員だけでなく事務スタッフやドライバーまでが“みんなで売る”という意識を持った組織への変化を感じました。

【ここでの学び】
他部署を巻き込んでの新しい事業への挑戦はチーム力を強くし、前向きな社員作りや教育となります。

現在、アリババでのライブコマースは行っていませんが、これをきっかけとした流れは、現在行っている海外向けライブコマースや10カ国を超える海外への輸出販売へと続いています。

2022年6月11日 逆張りで京都駅内でも好立地な場所へ出店

念願であったJR京都駅1階、中央改札口を出てすぐのショップ内に『KYOTO SOUZEN 京小町店』を出店しました。vol.7で記したクラウドファンディングで出店を可能にしたお店に続き、京都駅2つめの店舗となります。

老舗の菓子店が並ぶエリアで、パンデミック前であれば、歴史の浅い弊社では入ることができなかっただろう憧れの場所でした。
さすがは好立地のショップ、家賃はかなり高額です。

ちょうど新型コロナウイルスの第7波が危惧されていた頃で、他社メーカーはリスクが高いと出店を断りました。しかし、弊社は逆張り。あの場所に店を出すなら今しかない!と出店を決めました。

必ずパンデミックは収束する。そして、必ず京都駅は息を吹き返すと予測していたからです。

予測は的中し、5か月後には月に約1,000万円を売上げ、V字回復のために先頭を走る店舗となりました。

【ここでの学び】
ピンチをチャンスに。ライバルが守りに入る時こそ攻める。
勇気の逆張りが、時として大きな成果をあげる。

KYOTO SOUZEN 京小町店

2022年7月中旬 仲間の倒産と3,400万円の収益マイナス

新型コロナウイルス感染者の増減に左右され、上昇下降を繰り返す売上にも少しずつ復活の兆しが見えはじめた矢先、仲間からの連絡により私は天国から地獄へと突き落とされました。

「本当にごめん。トライズネットやグループのために必死でやってきたけれど、これ以上はどうしようもなかった」

彼は、グループ会社のひとつであるトライズネットを共に創業し、10年間グループ会社として一緒にやってきた仲間であり、100年続く老舗おこしメーカーの社長です。

コロナ禍の当初、政府からの融資をすべて借入れ、資金も潤沢に用意できた。しかし、売上が20%ほどしか回復しない状態で融資の返済がはじまり、資金繰りがままならず、彼が経営するおこしメーカーが倒産となりました。

彼は続けて「飲食店は休業補償など政府からの救援があったが、菓子メーカーにはこれといった救いがなかった。パンデミックはあまりにも長すぎた」と言いました。コロナ禍の危機は、会社の歴史など全く関係なく飲み込んでいくのです。

このおこしメーカーからは、OEM商品の製造受託やトライズネットの配送委託、直営5店舗の販売委託費などの業務を受注しており、年間3,400万円の利益をいただいていました。

それが1日で崩壊。私たちグループは年間3,400万円の“収益”マイナスが確定したのです。“売上”ではなく“収益”です。
ようやくコロナ禍の経営困難からの脱出が見えてきたところでした。

「うちもパンデミックで経営がかなり崩れた。コロナ禍以前の状態に戻すにはこれからさらに3,400万円の営業利益を積み上げなければならないとは……もう無理かもしれない」

ミシミシと心が折れる音が聞こえるほどのショックでした。あまりにも悔しくて彼と一緒に泣きました。
しかし、このままでは連鎖倒産になってしまいます。

嘆いていても仕方がない。動かなければ!」

自分自身を鼓舞し、すぐに幹部たちを集め緊急会議を開催。「せっかくここまでやって来たが、このままでは連鎖倒産を避けることはできない」と伝えました。重い空気になるだろうな、と予想していた私の耳に届いた言葉は
「社長、なんとしても売上を作ります!」でした。

あまりにも苦しい2年間をともに頑張ってきた幹部たちは、見違えるほど成長していました。幹部全員が一丸となって営業や販売を強化していきます。

しかし、辛い現実はまたすぐにやってくるのです。

2021年7月20日 しかし、なんとかする

仲間の会社が倒産準備に入ったとテレビやネットニュースに大きく取り上げられています。

これまでも飲食店の倒産はありましたが、菓子メーカーの倒産はほとんどなく、「コロナ×土産菓子メーカー×老舗」という構図が新しいニュースになりやすかったこともあり、この倒産は一気に知れ渡ることとなりました。

このニュースが報じられてから、私が彼と一緒に会社を運営していたこと、また弊社の持ちビルを貸していたこともあり、マスコミや貸し付けていた金融機関、仕入先や取引先、さらには倒産した会社の元従業員の方が泣きながら「今後私たちはどうなるのか?何とか助けて欲しい…」と懇願するために私の元に押し寄せてきました。

「今回の件では、うちもかなりのダメージを受けている。貸付もかなり残っている」と、泣きたい気持ちでいっぱいでしたが、「今は状況が分からないし、どうしていいかも分からない。しかし、なんとかする」と伝え、その日はお帰りいただきました。

一体どうしたらいいんだろう……私は考え続けました。
そして辿り着いたのは、こんな時こそ家訓である『(先に)損して、(後で)徳とれ』でした。

倒産した会社の元従業員で弊社への就職を希望した人を全て雇い入れ、得意先にはできる限り継続して商品を供給する旨と新商品の提案を行い、そして仕入先には在庫の買取り、中でも大きな損害のあった仕入先は連鎖倒産なども危惧されるため、支払いを肩代わりしました。

2022年8月上旬 眠れぬ夜と前を向く力

老舗おこしメーカー倒産のニュースが流れて2週間ほどで、何事もなかったかのように静かになり、日々の業務が淡々と行われるようになりました。

この2週間は会社だけでなく、私も彼と一緒に連帯保証人として判を押していた銀行への説明や、さらに追加融資のお願いなど連鎖倒産を回避するためにバタバタと動いていました。

これらがひと段落してひと息つくと、100年続いた会社があまりにも儚く散ってしまうという現実、また、仲間を助けることができなかった自分の無力さが悔しく、そして情けない気持ちが押し寄せてきて、私はひとり大泣きしました。

大泣きしてから2週間ほどは何もやる気が起こらず、またうまく眠れなくなっていたこともあり、私の精神状態は散々なものでした。

眠れぬ夜が続きます。
とはいえ、迎え入れた社員もおり従業員は増えているし、マイナスとなった営業利益も積み上げなければならない。私は、わずかな力を振り絞って前を向きはじめました。


次回は、京都駅3店舗目オープンと西陣本店併設の茶房を長期休業、さらなる機械投資などを記します。


本日はここまで。
今回もお読みいただき、有難うございました。

次回もお付き合いいただけますと幸いです。


ではまた。
山本宗禅


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