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vol.7 資本性ローンの借入れと京都駅店復活クラウドファンディング成功の振り返り。〜京西陣菓匠 宗禅を強くした、コロナ禍のV字回復を振り返る。

こんにちは。京西陣菓匠 宗禅の店主、山本宗禅です。

今回も『京西陣菓匠 宗禅を強くした、コロナ禍のV字回復を振り返る。』コロナ禍の経営困難を京西陣菓匠 宗禅を含むグループ3社が、いかにして乗り越えてきたかを振り返っていきます。

同じような悩みを抱えていたり、経営困難に立たされた経営者の方のお役に立てたら。お付き合いいただけると幸いです。

前回のまでの流れはこちらです▼


2021年4月27日 資本性ローンの借入れに挑戦

2020年度の3社の営業赤字が1億5千万円を越え、グループ3社全てが累積赤字に転落。
この頃になるとメイン銀行の支店長や本部の方が来られ、貸し剝がしに近い状況に陥ります。

「この危機を何とかしなければ、銀行取引ができなくなってしまう……」

そこで私は日本政策金融公庫の資本性ローン借入れに挑戦することにしました。
資本性ローンは、金融検査上『借入金』ではなく『自己資本』としてみなすことができる債務で、公庫の融資・特例制度のなかでも特殊な性質を持っています。

一般的な融資ではなく、資本性ローンを選んだ理由はこの特性にあります。「資本」としての借入れをしたかったのです。

何度か日本政策金融公庫へのプレゼンを行い、20年で2億円の資本性ローンを借りることができました。これがなければメイン銀行からの貸し剥がしに合っていたと思います。

また、京西陣菓匠 宗禅では創業間もない頃から毎年、働き手を自宅に集め、その年の経営計画発表会を開催していました。少しずつ会社の規模も大きくなり、この頃にはメインの銀行を含め3行から事業統括や支店長にお越しいただくようになっていました。

毎年しっかりと弊社の事業プランを伝えていたため、銀行での借入れが比較的スムーズになっています。
もちろん、コロナ禍の懇親会は取りやめましたが、グループ3社の経営計画発表会は継続しています。

【ここでの学び】
継続は力なり。経営計画発表会を開催し、取引銀行や働き手に都度経営方針を発表することは、社長の最も大切な仕事。

2021年6月3日 京都駅店を復活させたい!クラウドファンディング スタート

前回の記事で触れたように、2021年4月、京都駅に出店していたモールが閉店となり、同時に弊社の京都駅店も閉店に追い込まれました。

店舗がなくなるということは、その店舗で勤める販売員が必要なくなり、今まで一緒に頑張ってくれた働き手(スタッフ)を解雇しなければならなくなるということです。
「パンデミックの最中ではあるが、それだけは避けたい」というのが人情で、私はずっとこのことを考えていました。

その頃、新たな施設内の店舗募集がありました。要件は「自家需要を取り込むことができる新しい商品、またはブランドであること」。

コロナ渦が長く続き、余裕は全くない状況。

「売上もかなり厳しい。資金繰りも大変な時期に新たな店を出店できるのか?」
「限りのある運転資金を新店舗開発の投資に回していいのか?しかも観光客がメインの京都駅内で今???」

悩みに悩みんだその時、ひと筋の光明が!
この頃、クラウドファンディングに注目が集まっており、私が所属する会合でもクラウドファンディングの勉強会が開催されていました。

勉強会に参加し、さまざまに学ぶ中で、自社内のクラウドファンディングは前売りの通信販売と同じだと気が付いたのです。

「働き手の雇用を守りたい!」この一心で私たちは自社内にてのクラウドファンディング(前受け通販)を行うことにしました。

便宜上「クラウドファンディング」と呼んでいますが、実際は自社サイト内の前受け通販です。「クラウドファンディング」と呼んでいるのは、応援してくださる方に“オーナー感”を感じてもらいたかったからです。

『出資していただく』ではなく『商品をお買い上げいただく』という表現で前受け販売としました。

また、大手クラファンサイトを経由せず自社サイトを活用したのは、手数料分の節約によって、お客様に還元できる金額を100%以上に増やす目的もありました。

前受けにて販売したのは、10年に及び試作を繰り返していた『果実とわらび』という商品です。

『果実とわらび』は賞味期限が短い商品ですので、大量に送ると迷惑になってしまいます。なので、リターンでは少ない数量をお届けし、残額は宗禅でお買い物できるポイントとして還元することにしました。

これには、クラウドファンディング終了後の未来にも 宗禅との繋がりを感じてもらえたらいいなという狙いがありました。

当時のアイキャッチ画像

大手クラファンサイトを使わず、自社サイト内にて行ったこの挑戦の途中には、新商品を一緒に開発してきた仲間の突然死やリターンとして送った商品が無残な形で支援者様に届くなど、途中で何度か心が折れ、悔し涙を流すこともありました。

結果は、初日で目標金額の100万円を達成。本当にたくさんの方に応援をいただき、最終的に377万円を超えるまでのご支援となりました。

みなさまのおかげで、無事に京都駅に新店を出すことができたのです!

多くの方々に支えられ、オープンすることができた新店。

また、店舗のオープン時にクラウドファンディングの支援者様がたくさん駆けつけてくださり、初日の売り上げはモール内でトップに。

このクラウドファンディングの挑戦により、社員だけでなくアルバイトやパートさん、販売員だけでなく製造工場、事務員、ドライバーと全働き手が力を合わせ、ひとつになることができました。
また、この奇跡の達成には16,000人の会員様の力があったことは言うまでもなく、感謝してもしきれません。

そして、何より嬉しいことに「うちの会社ならパンデミックに負けずに生き残れる」という雰囲気が社内に漂いはじめたのです。

成功したクラファンの振り返り

多くの方々からご支援やご協力をいただき、クラウドファンディングを模した前受け販売は成功をおさめました。
ここで、成功を収めた要因を「目標達成まで」と「目標達成後」に分けて振り返り、共有できたらと思います。

今となっては一般的になったクラウドファンディングのテクニックといわれるものかもしれませんし、当時と現在では状況も違います。ですが、すべてが手探りで、もがきながら達成したクラウドファンディングから得たものです。どれかひとつのエッセンスでも、どなたかのお役に立てたら幸いです。

このクラファンにあたっての具体的なスキームや工夫、裏話などの詳細は、追ってnote内の別記事にてご紹介いたします。

【クラファン目標達成までの要因】

・働き手(スタッフ)の顔と、その想いをしっかりと伝える

店を守るため!と、働き手が顔の写真を出して自らの言葉で気持ちを訴えかけてくれたことが、成功の大きな要因であったと考えています。

この強い気持ちは『果実とわらび』の商品開発にも繋がり、休日に他のショップへフルーツ大福を買いに行き、試食や研究を行うスタッフの熱い気持ちに、心を打たれていました。

・『果実とわらび』の出来上がるまでの過程を読みやすいようにストーリー仕立てに

商品には絶対的な自信がありました。しかし、どれだけこだわりを尽くした商品だとしても、伝えなければお客様には届きません。

全ての商品がそうであるように『果実とわらび』にも開発秘話や物語があります。それらをストーリーとして組み立て、私自身も熱く語りました。

・商品の製造方法を動画にした

メインの返礼品とした『果実とわらび』は、このクラウドファンディングでデビューした商品です。お客様にとっては見たことも聞いたこともない新商品ですから、イメージすることはできません。

お客様の頭の中にある食感や風味のイメージを具体的にするため、製造工程を動画にしてYouTubeで公開しました。

ここにお金をかけては本末転倒ですし、伝えることが目的なのでしっかりとした作り込みもしていません。それでもイメージはしっかり伝わったと自負しています。

・できないことは潔く諦める

クラウドファンディングのプラットフォームを使えば、ご支援いただくとすぐにページに反映されます。しかし、弊社の場合は自社サイトでの展開に過ぎません。なのでそのような対応はできず、できたとしても、かなりの制作時間を費やしたでしょう。

ですので、できないことは早々に割り切り、現在の支援者(購入者)の人数や金額の発表は1日2回(9時30分と17時)としました。これは弊社の勤務時間内であり、SEが手作業で毎日行っていました。

休日もすぐにできるからと、毎日更新し続けてくれました。本当にうれしく頼もしい限りであり、大きなパワーをもらいました。

今回の目的は京都駅に新店舗を出すことであり、クラウドファンディングはあくまで目的を達成するための手段であるという判断です。

・分かりやすく、趣旨が伝わりやすいキャッチコピー

キャッチコピーは本当に悩みました。 例えば『コロナに負けるな!』や『このままでは倒産。生き残りをかけた挑戦』など。

しかし、このクラウドファンディングを行った頃には、コロナ禍がはじまって1年以上が経過していました。もうネガティブな言葉に多くの方はうんざりしているのではないか?(私自身がうんざりしていたというのもあります)と考えました。

そこで、明るく前向きで目的が明確な言葉を用いることで、応援しようと思っていただけるのでは?という仮説から決定したキャッチコピーがこちらです。

『みんなの笑顔を取り戻せ!!究極のフルーツ大福で京都駅へ再挑戦』

・マスコミにも訴えかける

新商品発売や新店舗の出店は単なるPRに過ぎず、わざわざマスコミの方が取り上げたいというニーズはないと考えました。

それならば「雇用を守るために」また「パンデミックに打ち勝つために今、挑戦を行っている」と伝えた方がマスコミの方は取り上げたくなるのでは考えたのです。

そこで「京都駅初出店」や「果実とわらび新発売」ではなく、クラウドファンディングへの挑戦についてプレスリリースを書き、マスコミにも取り上げていただきました。

雑誌、新聞、TVへの掲載

・SNSの活用

SNSに関しては、3段階に分けて展開しました。
1
クラウドファンディングの挑戦を告知する前に、Facebook にて『10年越しの商品開発』として『果実とわらび』を開発していることを先に発表しました。

これは、「新商品の開発についての情報は、見る方にとって買わされるなどの意識を持つことなく、シンプルに興味を持っていただける」のでは?という仮説によるものです。

まずは『果実とわらび』(リターンとする商品)について事前に認識し、食べてみたいと感じていただくことに注力しました。

2
クラウドファンディング公開と同じタイミングで『ご支援・シェアをよろしくお願いします』といったお願いをFacebookにてポストしました。本来ならばInstagramやTwitterなどいくつかのメディアを活用する方がよいでしょう。

しかし、当時の私はFacebookしか使いこなせていませんでした。私の想いを直接伝えたかったので、告知はFacebookと会員様へのメールの2つに絞りました。

3
クラウドファンディング公開時点でも、リターンとなる『果実とわらび』はまだ完成しておりませんでした。 ヒヤヒヤドキドキしながら、毎日試作を繰り返していたからです。

こういったストーリーを『究極のフルーツ大福のもう一つの物語』としてFacebookに投稿したことで、多くの方々に興味を持っていただけたようです。

【クラファン目標達成以降の要因】

・リターンを送る際に【新店舗で使える果実とわらびの引換券】を同梱した

これは新店舗がオープンしたらお店に来て欲しいということだけでなく、店舗の販売スタッフに「この方はクラファンで応援いただいた方だ」と認識してもらう目的がありました。

また、この引換券を持って来られた方には「しっかりとお礼を伝えること。この店のオーナーだと感じていただけるような接客をするように」と店舗スタッフに伝えました。

「このお店は自分の店だ」と支援者様に感じていただくことで、愛着が生まれ、お店を忘れにくくなるとの仮説からです。

同梱した【新店舗で使える果実とわらびの引換券】

・「SNSに投稿をお願いします」というお願いのチラシを入れた

上記のような積み重ねから、『果実とわらび』が到着したことや、食べた感想などをSNSにて投稿していただき、新たなお客様の獲得に繋がりました。

『SNSに投稿をお願いします』と、こちらが希望するアクションをストレートで素直な言葉を使ってお願いしたことで、みなさまがご協力くださったおかげです。

次回は、販路の種類を変えることで売り上げアップ!地元西陣、地域の活性化のためのプロジェクトなどについて記します。


本日はここまで。
今回もお読みいただき、有難うございました。

次回もお付き合いいただけますと幸いです。

ではまた。
山本宗禅

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