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【経営事典①】パーパス経営とは(前編)

0.はじめに

なぜ今更、パーパス経営なのか

こんばんは、独立診断士を目指す30代、
そうきちです。
経営に関して気になったテーマを
取り上げてみる【経営事典】。
第1回のテーマは「パーパス経営」です。

「Purpose」、日本語で言えば「目的」です。
近所のスーパーに買い物に行く目的は
「晩ご飯のおかずを買うため」
このブログを書く目的は
「経営に関する知識を定着化するため」
何をするにも第一に目的があります。

もちろん、企業経営においても目的が存在し、
営業、購買、生産、販売…etc 
すべての企業活動は目的を達成するための
手段であると言えるでしょう。

そんな当たり前のことが、なぜ今更
「パーパス経営」といった新しい言葉で定義され、多くの大企業がこぞって経営に取り入れている
のでしょうか。

1.パーパス経営とは

パーパス経営の提唱者

パーパス経営という概念はアメリカの
投資会社が発祥です。

パーパス経営は元々アメリカの大手投資運用会社であるブラックロックのラリー・フィンクが2018年に「パーパスの重要性」を提唱したところから始まった考え方であると言われています。2019年にはアメリカの大手経済団体であるビジネス・ラウンドテーブルが「企業のパーパスに関する声明(Statement on the Purpose of a Corporation)」を発表し、株主至上主義の経営から、人や社会を重要視する経営への転換を求めました。

このような動きは、近年日本国内でも広がっており、多くの企業がパーパス経営に注目して取り組み始めています。

パーパス(purpose)経営とは何か 注目の理由やメリット、取り組み方を解説 | 株式会社リンクアンドモチベーション (motivation-cloud.com)

昨今のSDGsやサステナビリティ経営の注目に
伴い、企業の社会に対する関わり方を示すもの
としてパーパス経営が広がったようです。

名和高司氏によるパーパス経営論

一橋ビジネススクール 客員教授である名和高司士
によるパーパス経営の定義について紹介します。

名和高司氏によるパーパス経営の定義(スライドは筆者作成)

従来から存在する概念である、「Mission、Vision、Value」が外部から与えられたものである一方、
自分の内から湧き出てくるものが「Purpose、
Dream、Belief」であり、これらを定めることで
様々なバックグラウンドを持つ人財をまとめることがパーパス経営だと定義しています。

また、パーパスを設定する上で重要な3つの要件を
挙げています。
①「ワクワク」
・・・社員や顧客が「ワクワク」し、
②「ならでは」
・・・自社「ならでは」のものであり、
③「できる!」
・・・絵に描いた餅に終わるのではなく
   実践「できる!」

パーパス経営の事例(スライドは筆者作成)

大企業におけるパーパス経営の事例では、
食品メーカーのネスレに代表される海外企業では、「よい食事、よい生活」というように
客観的に正しいことを定めているものが多い一方、
日本企業ではユニクロの「LifeWear」など、
各企業「ならでは」の言葉でパーパスを設定
している場合が多いことが特徴です。


その企業「ならでは」の言葉について、
クリエイティブディレクター
原野守弘さんの著書
『ビジネスパーソンのためのクリエイティブ入門』
の中にこんな記載がありました。

ブランドにも、それぞれ決まった『声のトーン』がある。これを専門用語で『ブランドボイス』と呼んでいるが、広告やブランディングで大事なことのひとつは、このブランドボイスを尊重することだ。
〔中略〕
かつて『Honda Green Machine』のキャンペーンを担当しているときに発見したことのひとつに『命令形にするとHonda っぽい』ということがあった。
『クルマを、救え Honda Green Machine』
『ハイブリッドカーを、安くつくれ。』
『ハイブリッドカーは、エコで終わるな。』
もしこれらのコピーをそのままトヨタ自動車の広告に使ったら、ちょっと違和感がある。『オヤジ』の『ブランドボイス』がコピーにも憑依するからこそ、これらのコピーは『Honda らしい』と感じられるのだ。

原野守弘. 「第四章「好き」が世界を動かす」.
『ビジネスパーソンのための クリエイティブ入門』.2021, p.142-146

本書の中で原野さんは、日産自動車の
『やっちゃえ。NISSAN』というキャンペーン
について、
「矢沢永吉さんのブランドボイスとしては
ピッタリだが、日産自動車のブランドボイス
としてマッチしているかは疑問が残る」
と言っています。

その企業の沿革、風土等、「ならでは」の
要素を一言で表したものがブランドボイスであり、パーパスでなければならないということ
だと思います。


中小機構における定義

中小機構の運営するビジネス支援サイト
「J-Net21」における、パーパス経営の定義についても紹介しておきます。

「パーパス」と混同されやすい言葉として「ビジョン」「ミッション」「バリュー」があり、これはそれぞれ「ビジョン=企業が目指す未来像」「ミッション=企業が果たすべき使命」「バリュー=企業の価値観や行動指針」などと定義されます。これらを「ビジョン=どこを目指すのか(Where)」「ミッション=何をするのか(What)」「バリュー=どのように実現するか(How)」と言い換えた場合、パーパスは「なぜ社会に存在するのか(Why)」に当たるでしょう。ここが両者の大きな違いです。また、特に「ミッション」と「パーパス」には近い部分もありますが、パーパスの方が「社会にどのような価値を提供するのか」という「対社会」の視点が強く出ている点も特徴といえます。

パーパス経営とはなんでしょうか? 中小企業が取り組むメリットとあわせて教えてください | ビジネスQ&A | J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト] (smrj.go.jp)

名和氏の定義とは異なり、
「ビジョン、ミッション、バリュー」
の上位概念として「パーパス」を定義しています。

自分なりの解釈

ここまで、パーパス経営についていくつかの
定義を紹介してきましたが、
正直、あえて「パーパス経営」という流行り
言葉を持ち出す必要はないと感じています。

名和氏の定義、中小機構の定義のいずれも
間違いでは無いですが、その定義が浸透し、
今後も残り続けるかと言われれば疑問です。

冒頭で述べた通り、「目的」があって「手段」
があるという関係性は企業経営に限らず
重要なことです。

利益追求のみに走り、本来の存在意義や
目的を見失ってしまった企業が当初の志に
立ち返るために、その企業「ならでは」の
パーパスを設定するといった場面で活用
できるのではないかと思います。

2.おわりに

本当は、パーパス経営について紹介した後、
独立診断士となるための自分のパーパス、及び
中小企業におけるパーパス経営の事例紹介を
するつもりでしたが、
ボリュームが多くなってしまったため
次回「パーパス経営とは(後編)」として記載
したいと思います。

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