一歩先は一歩前より確実に明るいよ。
今日ぴぃは1時間目だけ学校に行きたがった。
金曜に控えたスポフェスのダンス練習があるから、それだけ出たら帰りたいと言っていた。
いつものように引きずり起こしてと言われ、7時に起こしに行くと、引きずり起こすまでもなく起きてきた。
うん、これは行きたいパターンのやつ。
と思って、久しぶりにパパとぴぃと3人で朝食を囲んでいると、少しずつ不安をこぼし始めたぴぃ。
「合同練習だから、ダンスがズレてるのが目立ってしまう。」
「みんなはもうしっかり踊れてるから、みんなのダンスを乱してしまう。」
「怖くなってきた、行きたいのに行きたくなくなってきた、どうしよう。」
家を出ると言っていた時間を過ぎて、焦って泣き出してしまう。
「最後の運動会だから、ちゃんと出たいの。ちゃんと爪痕を残したいの。」
「やるからにはちゃんとやりたい。ダンスを完璧に踊りたいのに、もうみんなにはおいつけない。」
抱えた不安を一気に吐き出すぴぃ。
張り切って早く起きて、出る時間まで時間を持て余した代わりに、不安が一気に押し寄せたらしい。
「どうしよう、どうしよう、どうしよう」
不安で押し潰れそうになっているぴぃ。
『がんばれって言っちゃダメだ』『無闇に励ましちゃダメだ』『行かなくていいよも違う』・・・混乱してしまった私は、
「パッと行って、ピッとやって、ポッと帰ってこようよ。」
我ながら何を言ってんだと、突っ込みたくなるようなことを言っていた。
するとぴぃは「うん」と言って歪んだ顔のまま立ち上がり、「行く」と言って玄関に向かった。
不安をひとしきり言った後だったのが良かったか、私のあっけらかんとした対応が逆に良かったのかわからない。
こんなこともあるんだな・・・と胸を撫で下ろす。
学校に向かう途中も不安そうなぴぃ。
私「ダンスが揃ってるか揃ってないかはそこまで気にしなくても大丈夫。見に来る親はね、自分の子しか見てないの。うまい下手を見てるんじゃないよ。大きくなったな、頑張ってるな、かわいいな、そう思って見てるの。
ダンスがわからなくなった時はお友達が助けてくれるから、お友達を信じて、ぴぃはぴぃらしく、今できる全部を見せてくれればいいよ。」
そんな私の言葉に、不安がおさまったわけではないけど、ぴぃは学校に行った。
ギリギリ1時間目に間に合って、ホッとしていた。
1時間目が終わるまで廊下で待機していると、ぴぃだけが急いで戻ってきた。
「1曲目は、〇〇ちゃんが全部カウントとって教えてくれた!2曲目と3曲目は、〇〇ちゃんと〇〇ちゃんと動きがほとんど一緒だから真似してれば何とかなりそう!!とにかく近くにいる子がみんな教えてくれた。」
早口で私にそう伝えて、クラスの友達が教室に戻ってくるのを待った。
1時間目だけと言っていたぴぃは、2時間目の後の休み時間に側転の練習があると聞き、結局それまで学校にいた。
2時間目は社会のテストだったけど、ダンスのポイントや移動の位置を、ノートに書いて復習していたという。
明日もスポフェスの練習に行きたいというぴぃ。
一歩ずつ進むことで、自分の中にある不安をひとつずつクリアしていくぴぃ。
そういうことなんだよ。
私がどれだけ言っても、どれだけ伝えても、身をもって経験することでしか、本当の不安は拭えない。
ただその一歩が重くて、怖くて、不安なんだよね。
学校から帰る道中ぴぃに言った。
私「頑張ったね、あの感じからよく行ったよ。行ってみてどうだった?」
ぴぃ「あれでよく行ったよね、ほんとに。でも、昨日より踊れるようになって嬉しかった。」
そっかそっか、ママはまだ期待しててもいいかな。