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設計担当に聞く、心地の良い空間づくり(前編:井上さん)

こんにちは。スープストックトーキョーです。皆さま、お変わりなくお過ごしでしょうか。今回は、Instagramの質問コーナーでリクエストをいただいた「心地の良い空間づくり」をテーマに、たっぷりとしたボリュームでお届けします。一人の時間を豊かに過ごす場所、家族との団らんの場所、さらにはワークスペースとしての「おうち」。おうち時間が長くなれば長くなるほど、「心地良くおうちで過ごすためには?」を、より一層考えるようになった方も多いかもしれません。

前・後編にわたって、スープストックトーキョーの店舗設計を担当するメンバーに「心地の良い空間づくり」のポイントをたずねていきます。今日はまず前編、設計担当の井上麻子さんに聞きました。

空間づくりを15年担当する、井上さんのこと

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まずは井上さんについてご紹介します。井上さんは、スープストックトーキョーの店舗設計を担当して15年。ブランドが始まって20年ですから、スープストックトーキョーのことをよくよく知っている社員のひとりです。そして、“お客さん”としてお店に日々足を運んでいる社員のひとりでもあります。

―井上さんにとって、スープストックトーキョーの空間づくりのやりがいを聞かせてください。

私自身がスープストックトーキョーのヘビーユーザーなので、スープストックトーキョーが忙しくても短い時間で心も体も温められる、貴重な場所になることを日々実感しています。お店を作り増やしていくことで、そこにいる人たちに喜んでもらえるという確信を持って仕事ができるのがやりがいです。
レイアウトを考えながら、この場所に来るお客様はどんなお客様で、どんなテンションで来てくれるんだろうとか、どんな気持ちでどんな風に過ごしてもらおうかとあれこれ想像することが楽しくて、そうやって想像したシーンを図面に落とし込んでいくので、1店舗1店舗自然と違うデザインが導かれ、飽きることのないお仕事です。

ルクアスケッチ

―店舗の空間づくりで、特にこだわっていることはなんですか?

数え切れないほどあるのですが(笑)、ピックアップしてみると、特にこんなポイントです。
■素材の自然な色や質感を生かすこと
スープストックトーキョーの空間づくりの大きなポイントは、素材の色や質感をそのまま生かすこと。創業当初から、主役であるスープの彩りを目立たせるため、木、ガラス、ステンレス、モルタル等素材そのものの色以外は使わないというルールがあります。特に木については、できる限り国産の木材を使い、トレーサビリティを大事にしています。食材に関しても、トレーサビリティを大切にしているので、共通した考えですね。
■自分自身が座りたくない席は作らないこと
「自分自身がお客さまだったら?」をまず考えます。入り口のお席は人の行き交いが気にならないか、お隣との距離感や目線の先が気にならないか、すこし高い椅子を使う時は足先が落ち着くかどうかなど、お店の隅々まで考えるようにしています。
■「らしさ」のある、黒の使い方をすること
“ナチュラルになりすぎず、クールにもなりすぎない”、“スープストックトーキョーらしさ”のある、バランスのとれた空間ということを意識しています。素材の質感や色を活かすというルールの中で“らしさ”を表現するために、実はロゴのカラーでもある黒の使い方がポイントになってきます。
■照明で、空間を演出すること
オープンキッチンは明るく活気のある雰囲気に、店内に入ると照度を落としたり、色味を変えたりして、落ち着く雰囲気にしています。渋谷マークシティ店の場合は、一番奥の席を明るくして、手前を少し暗く。差をつけることで自然と奥まで目線が行き誘い込まれるような工夫をしています。どう過ごしていただきたいかにあわせて、照明で漂う雰囲気を丁寧に作っています。

渋谷店

おうちで実践。心地の良い空間づくり

ベーシックなこだわりをお伝えしたところで、いよいよ本題。井上さんにポイントを教わっていきましょう。

▶1:長く手に触れる場所はできるだけ自然の素材で

メンテナンス性と居心地のバランスをよく考えます。空間の全てを自然の素材にすることはなかなか難しいこともありますし、掃除しやすさもポイントです。ですが、手に触れるところはできるだけ自然の素材を使うと、心地よさのグレードが格段にあがります。

2:お食事をする場所の照明は、電球色を選ぶ

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温かい食べ物はオレンジがかっている方がおいしく見えます。お食事をする時に団らんするんだったら電球色がおすすめです。会話が弾みやすくなります。電球色に変えてみて「すこし暗いかな?」と思った方は、メインの照明のワット数を大きくするのではなく、壁や天井に光を当ててみるといいと思います。上記の写真のアトレ恵比寿店でも、メインの照明と壁にあてるための照明をいくつか使っています。

▶3:お部屋ごとにテーマカラーを決める

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お部屋ごとにテーマカラーを決めておくと、自然と統一感が出てスッキリします。リビングルームはリラックスできる緑(ラグ・カーテン)、キッチンは食欲と元気が出る黄色など部屋ごとに変えるとより楽しめます。1色決まっていれば、それに合う色は何色か、という視点も生まれてコーディネートしやすくなります。雑貨屋さんに買い物に行ったときにも迷わずに済みます(笑)。より、スープストックトーキョーに近づけたい方は、黒がおすすめです。

▶4:モノトーンでまとめる場合はどこか1点をカラフルにする

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(それぞれの店をテーマにしたタイルアート。写真は東急プラザ銀座店)

素材の色+モノトーンしか使わないスープストックトーキョーにも、壁面のタイルアートの中には唯一カラフルな色が存在しています。全体がシンプルにまとまっている分、引き立てられますし、色の存在が空間を親しみやすく和らげてくれます。お部屋の中だったら、クッションだけは色とりどり好きな色を並べるとか、カラフルな食器を見せながら収納するなど、ちょっと気分が上がる場所が作れそうです。

▶5:木材の種類に興味を持ってみる(上級レベル)

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(床、壁、家具に栗の木材を使用したキラリナ京王吉祥寺店)

スープストックトーキョーのような決して広くない空間では、素材を絞り込むことですっきりとさせるため、フローリングとテーブルの樹種を揃えて統一感を出しています。家庭でそこまで意識するのは難しいですが、床に使われている木材が杉やヒノキのような針葉樹なのか、ナラやサクラのような広葉樹なのかを意識しておくと、新しい家具を考える時の参考になると思います。木の種類が特定できない場合は、床のお写真を撮っておいて、それと比較しながら家具を選ぶのもおすすめです。

▶6:旅先で何気なくとった写真も、ヒントになる

今すぐに旅に行くことができませんが、私の場合、インスピレーションを受けるのは旅先が多いですね。気づかないうちにそれがヒントになっていて、「あ、あの時のフィンランドのカフェのテーブルの脚!」とふと思いついたりします(笑)。何が役に立つかはわからない。もしかすると、これまでの旅の写真を見返してみると、みなさんの好きな空間のヒントが見つかるかもしれません。

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旅の写真

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この記事の終わりに

「スープストックトーキョーの空間づくりのヒントを知りたい」。そういうふうに思ってくださるお客さまがいらっしゃるとお聞きして、素直に嬉しく思いました。外出自粛中で、使っていないものを捨てたり、巣作りを楽しむことにシフトしたりする中で、こうしたヒントがすこしでもお役に立てれば嬉しく思います。

***
スープストックトーキョーの考える「心地のいい空間づくり」のポイントが、”みなさんそれぞれ”の「心地のいい空間づくり」にすこしお役に立てれば嬉しく思います。次回も後編として、もう一人の空間デザイン・店舗設計を担当するメンバーにたずねていきます。どうぞお楽しみに。

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