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第0章#09 ママたちの「働く」をあたりまえにする挑戦。(保育園と訪問看護)

「泣いたらおんぶが、ルール!?」。ガスパッチョ隊長も子どもの話になると表情が和らぎます。スマイリングの介護現場を支えているのは大部分が女性職員。2022年には、0~2歳までの乳幼児を預けることができる「スマイリング キッズステーション」(企業主導型保育所)が誕生しました。ただ、そこに至るまでのめくるめく展開にも、「できないと言うな、どうすればできるようになるか考えろ!」というスマイリング・マインドを感じます。ママたちの「働く」を叶えてきたガスパッチョ隊長とローリエ女史によるチャレンジをのぞいていきましょう。

高齢者施設のなかに子どもたちが当たり前にいるって
こんな笑顔が生まれるんです。
おばあちゃんもきれいきれいしようね~♪

ガスパッチョ隊長
――下山の話が続いたので、舞台を松平に戻しますね。松平地区には、いまスマイリングの主要施設が3つ並んでいます。2015年7月にまず、元喫茶店だった建物に出会って、幸穂台にあった1号店を移転させました。これが「スマイリング 松平」です。そしてその隣に、2018年1月「スマイリング スピナティー」を建てたんです。実はここ、建てるつもりはなかったんです。でも、建てた理由は、松平のデイサービスも数年経つと認知症の度合いが進んでいって、「あの人、ボケちゃったね」などと利用者さん同士で陰口がはじまることがあるんです。介護度が軽い人と、重い人を分けるのは好きじゃないんですが、どちらにもいい影響がないと判断し、「介護度が重たくなった人が安心できる場所をつくろう」という流れで、もう一棟、施設の建設に踏み切りました。  
(→SPINATYの様子はココから)


ローリエ女史

――ただ、施設が増えていくにつれ、働く人が足りなくなりました。当時は、50代の人が面接にくると、若い人が来たね~というぐらい平均年齢も高かったし。労働力不足が課題でした。
 
隊長
――あれは、「産業フェスタ」だったかなあ。スマイリングでイベント出店したときに、ローリエ女史の昔の職場友達に再会したんですよね。
 
ローリエ
――友人はお子さんが生まれたばかり。「働きに出たいけど、さすがに無理じゃんね~」と話していまして・・・。ただ、スピナティ―を建てるときに、隊長が「あの時の友だち、働いてくれないかな?呼んでみてよ」と言ってきたんです。
 
隊長
――僕たちは働く人が足りなくて困っている。一方で「働きたくても、子どもが小さいから働けない」という人がいる。ここを解決できたら、前に進みますよね。それで、「ママさんたちに子連れ出勤してもらって、子どもの面倒はこっち(施設側)でみよう」と考えました。

「泣いたらおんぶ!」がルールだよ~♪
カラフルなソファでおしゃべりする
年の差フレンズ。

おおおおお~~~!!ガスパッチョ流「できる方法を考える」の術!!!!

隊長
――当時は、まだ保育も無償じゃなかったんです。「1歳の子どもを外に預けると1か月=5~6万掛かりますが、うちで働いてくれるなら、子どもは施設側で面倒みます。時給は最低賃金だけど、保育園に預けるお金を抑えられるから手元にはたくさん残ります、どうですか?」とお誘いしました。スピナティ―を建てる時期だったので、テレビの近くにキッズコーナーを設置。ここで遊んでいたら、おじいちゃんやおばあちゃんも喜ぶし、面倒見てくれます。ママたちには、「子どもは必ず泣くから、その時はおんぶして働いてね!」とルールを決めました(笑)。
 
ローリエ
――そんな経緯で、友人が子連れ出勤してくれるようになりまして、今度はそれが、ママ友たちに広がりました。「なんで、小さい子がいるのに働けているの?」・・・って。口コミで、スマイリングのことを知ってくださって、20~30代のママたちがたくさん働いてくれるようになりました。
 
隊長
――結果、スマイリングとしても、人手不足を補うことができました。ママたちが増えたぶん、会議に出るのは難しいなど家庭の事情も受け入れながら仕事を回していく苦労はありましたけど、人が足りないという現状は改善されました。旦那さんの転勤などで豊田にやってきたママなどは、友だちもいないし、働くことで「社会とのつながり」ができた、という人もいました。

【創立12年記念で、職員から隊長に贈られた手作り表彰状より抜粋】
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「あなたは、子育てスタッフの子どもたちには、優しい社長を演出されましたよね。 がんばれ、ママ。子連れ出勤を支えてくださり、小さな子どもに会うと「〇〇君 〇〇ちゃん」といつも声をかけ抱っこもしてくださいました。子どもたちは今でも隊長が大好きです。この会社に私と一緒に出勤していたときのことを子どもたちは今も覚えています
」
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ガスパッチョ隊長が自ら、子守り担当に。
室内遊びがあきてきたら、外に連れて出ることも。
回転ずしにも連れて行ったり!

隊長
――当時の子守りは、ほぼ僕が担当してました。一番、手が空いているので(笑)。可愛いから面倒をみていただけなんですけど。当時は、どこに行くのにも連れて行っていましたね。室内遊びにあきると、畑に連れて行ったり、車にのっけて回転寿司に行ったり。僕自身、下山の祖父母に預けられていた時に、いろんなところに連れて行ってもらったので、子どもがいると、そういうことが自然発生するのがいいなあと思っていました。
 
ローリエ
――スピナティーの立ち上げ時には、4人ぐらい子育て真っ盛りのママが働いてくださいました。なので、当時は、7~8人の子どもを面倒を見ていたかな。ただ、活気が出てくるしいいんですが、だんだん子どもの数が多くなってきちゃって。施設内を走り回ったりするので、子どもが中心の施設になるのは本末転倒。それで、託児所をつくった方がいいよね、という流れになったんです。

人材不足が解消したとおもったら、今度は「託児所」をつくる? 

隊長
――「託児所をつくるためにはどうしたらいいか?」、豊田市に相談にいったら、「企業主導型保育所」※という制度があると教えてもらいました。これを導入すれば、スマイリングで働く人のお子さんを、100%面倒を見ることができる。それが、現在の「スマイリング キッズステーション」。2020年2月にオープンしました。スピナティーの立ち上げ時に預かっていた子どもは、小学校2~3年になりましたね。我が子のように抱っこしていたので、今でも可愛いですよ。

※「企業主導型保育所」:企業が従業員のために設置する保育施設。国からの補助金があるため、認可外保育園でありながら、保育料も安く設定できる。

松平にある「スマイリング・キッズステーション」の外観。
スマイリングで働くママたちの
子どもたちが走り回ります。
お隣りの建物はデイサービスだから
年の差をぴゅんと飛び越えて仲良くなっちゃう。

ローリエ
――ただ・・・キッズステーションが出来たことで、もうひとつ、「訪問看護」という新たな事業がはじまっちゃいました(汗)

ど、ど、どういうことですか? 保育所と訪問看護はつながらない気がしますが?

隊長
――「訪問看護」の事業は、以前から構想として考えていました。松平・下山の山間地域には、近隣の病院から看護師さんが回ってきていましたが、数が足りないことはわかってました。だけど、スマイリングの事業としては採算ベースにのらず、踏み切れませんでした。ですが、ここにきて、保育所をつくることになったことが大きな追い風に!なぜかというと保育所には、病児室、病後児室が設置でき、設置した場合、受け入れ対応のために「看護師」を雇用する必要があるんです。ただ、病気の子どもがいなかったらほかの仕事をしても良いという決まりがあったので、それなら、その看護師さんたちも訪問看護事業の仕事を手伝ってくれることができそうだということに気が付いたんです。
 
ローリエ
――訪問看護の事業所は、「SPINCステーション」。といいます。スマイリングのなかで訪問看護をやりたい人がその部署に異動して、立ち上げました。
 
隊長
――もともとスマイリングに看護師は多かったんです。これは介護あるある、なんですが、看護師さんが介護施設に就職すると半年ぐらいで辞めることが多いんです。面接のときは、「医療現場に疲れました」という。でも、しばらくすると「やっぱり病院で働きたいです」となる。

それは、何が理由となるのでしょう?

隊長
――たぶん、病院はスピード感をもって患者さんをさばいていくことが必須。それに比べて、介護の世界は、ひとりひとりに向き合って、じっくりとアセスメントをとってケアしていくという風に見えるのでしょうね。でも、現実としてそれをやってみるとこれまでに自分が受けていた教育と合致しなくて、耐えられなくなって辞めるケースが多いです。

ローリエ
――介護現場では、医師の指示を待つのではなく、どんどん自分で判断して動いてもらわないといけないので、そのあたりが、かみ合わなくなってくる場合があります。
 
 隊長
――で、その問題を解決するために「医療の世界にに戻りたいんだったら、訪問看護したら?」という選択肢を社内につくったんです。結果的に、僕自身がずっと温めてきた松平・下山地域での「訪問看護」の事業を加速することにもつながりました。

なんだか「風が吹いたら桶屋が儲かる!」ってぐらい、いろんな必然が織り重なってきましたね(笑)。

隊長
――創業して、数年経過してくると利用者さんたちの状態も変わってきますし、職員も増えていきますから、もっと良い組織体になるには?と、多方向から考えるようになりました。「働き方改革」という言葉も生まれてきましたしね。

つづく。


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