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第0章#05「きょうはサンタさんがいっぱいです」(施設内通貨スマイルに込めた想い)

――「きょうは、おばあちゃんもおじいちゃんも、みんなサンタさんですよ」と、ローリエ女史に案内してもらって、スープタウン建設予定地・松平にある「デイサービス スマイリング松平」&「スマイリング スピナティ」を訪問しました(=2023年12月現在)。前回のnoteにクリスマスチキンの話が出てきたし、12月になると「毎日がクリスマス!」とウワサには聞いていたけど…どんな雰囲気なんだろう?

ローリエ女史(以下、ローリエ)
「スマイリング スピナティー」では、ちょうど、今、みなさんでおやつをつくっています。カップにはプリンが入っているのかな? ホイップクリームやチョコレートで飾りつけしていくみたいですね。このスピナティーという施設には、年齢に関係なく、障がいのある方、認知症の重い症状がある方もいらっしゃいます。できる方には好きなようにやってもらって、難しい方には介護職員がサポートします。みんなの様子を見ているのが好きな方、食べるだけでいいという方も。過ごし方はそれぞれです。

チョコレートでデコレーションをする利用者さん。
握力が弱くなっている方にはさりげなくサポートします。

――噂の「クリスマスチキン(前回記事)」も、みなさん召しあがったのかな?尋ねてみると「美味しかったよ」「みんなで食べると食欲が出るね」「鳥が丸ごと出てくるんだよ」などのお元気な声が返ってきました。慌ただしい年の瀬ですが、ここに流れている時間はとても穏やかです。

ガスパッチョ隊長
「スピナティー=SPINATY」というのは、これらの言葉の頭文字をとってつくった造語です。

S=SMILE(笑顔)
P=PERSONAL(個性)
I
NA=NATURALLY(自然に、あたりまえに)
TY=COMMUNITY(集まる場所、集団)

頭の四文字「SPIN」には、「紡ぐ」という意味があります。高齢者の方も、子どもも、障がいのある方も、それぞれに備わっているちからを「個性」と捉え、ごくあたりまえにみんなが笑顔を紡いでいく場所としたいという思いでつくりました(=2018年)。覚えにくいかもしれませんが、慣れてもらうしかないですね(笑)。ここには、認知症ケア専門士、認知症実践者研究修了者などがたくさん在籍しています。トレーニングルームやリラクゼーションルームもあって、より専門的なケアを受けていただけるのが特徴です。

ローリエ女史と談笑する利用者さん。
「私の名前は覚えている?」「忘れんよ。おなじ名前だからね」

ローリエ
キッズステーション(隣棟)の子どもたちがちょくちょく遊びにくるので、子どもと触れ合う場面も多いです。「スマイリング松平」に比べると、少し、ゆったりと過ごしていただけます。

――松平にある「スマイリング スピナティ」と「スマイリング松平」は、巴川(ともえがわ)のそばに隣接して建てられています。川沿いのデッキを歩いてお隣りに移動してみました。わあ、本当にきょうはあっちもこっちもサンタさん。

ローリエ
「スマイリング松平」の方もご案内しますね。今は何してるかな・・・あー・・・ちょうど、お茶の時間ですね。こちらにもサンタさんがいっぱいです。入ってみましょう。さきほどの「スピナティ」に比べると、身体の自由がきく利用者さんが多いです。今日は、みんなでクリスマスのクッキー「スノーボール」を、生地からコネてつくりました。いっしょにいただきましょう。

――ほろほろ、サクサク。内側から“あんこ”が出てきました。お手製スノーボールをいただきながら、おしゃべりの輪に加わります。ある女性の利用者さんは、広島県呉市から豊田にお嫁に来られたそう。「故郷には帰ってみたいね。妹が住んでいるけど、迷惑をかけるし、なかなか帰ることができないわね」と話されました。 

お札のようなもの!?を手にして、ご満悦のご婦人。

――あれれ…なにやらサンタさんが手にしている「お札のようなもの」に目が留まりました。あれは何でしょう? 

ローリエ
あー、あれは「施設内通貨スマイル」といって、スマイリングの施設内で稼いだり、使ったりできる「おかね」です。利用者さんたちは、自分たちでこのスマイルをどんどん稼いで、コーヒー代やマッサージ代、カラオケ代として使うことができるんです。

――へえ、面白い♩どうすれば「施設内通貨スマイル」を稼ぐことができるんですか?

ローリエ
「稼ぎ方」はいろいろありますよ。施設の作業をお手伝いしたから〇〇スマイル、できなかったことができたから〇〇スマイル~など。利用者さんがリハビリや習い事を受けたい時は、受講料をスマイリングの職員に支払います。そして、受講し終わった時には「リハビリがんばった!」という意味を込めて受講料の倍のスマイルを「稼ぐ」こともできるんです。施設内で「施設内通貨スマイル」が流通しているところがポイント!レクリエーションなどの賞金になることもあるので、勝負事などのゲームは盛り上がるんですよ。
 
隊長
デイサービスにやってきた方が、強制的に何かをやらなきゃいけない状況ではなくて、自主的に何かをしたくなる状況をつくるにはどうすればいいんだろう?と考えた時に、「お金を稼ぐ」という、人間の欲求に訴えてみようと思ったんです(笑)。「自分たちで稼いだお金を、自分たちで使う」こういった経済活動がデイサービス内にもあると、社会とのつながりが続いていくはずなんです。
 
もともと、この「施設内通貨スマイル」の仕組みは、とあるデイサービスの視察に行った時に出逢いました。そこでは、利用者さんが自由に「施設内通貨」を使って、パンを買ったり、運動をしたり、好きなことをやって過ごしていたんですよね。「こんな風に自由に過ごせる方が絶対いいよね~」と話して、取り入れてみることにしたんです。
 
ローリエ
当時のスマイリングには、まだ過ごし方の「選択肢」がなかったんですよね。それで、この施設内通貨を取り入れることにして、どんな風に使ってもらったいいかを考えました。朝、利用者さんが施設に到着したら、まず「料理」「裁縫」「運動」の3つのうち、やりたい種目を選択してもらおう。昼からはおやつ作りをしよう。など、少しずつ選択肢を増やしていきました。
 
隊長
「きっと、お札も本物っぽくないと使ってくれないよ」という意見があったので、導入当時は、自分たちでデザインして印刷までしましたね。施設内にパチンコ台を置いてたこともあって、スマイルを稼いでパチンコに使っていた方もいました。音が大きすぎて、いつのまにか消えましたけど(笑)。

実際の施設内通貨スマイル。
単位は、「笑(スマイル)」。

サンタさんたちは、おやつを食べたあと、歩行リハビリの時間です。最後までやりとげたら、何枚かのスマイルを稼ぐことができるんですって。

「私はこれでマッサージするのよ」という方もいれば、「あら、私はまだ使ったことがないの。ずっと貯めているわ」という方も。

身体や心がどんな状態であったとしても社会から切り離すことなく、自主的にチャレンジできる場をつくる。「施設内通貨スマイル」のバックグラウンドに、ガスパッチョ隊長たちの、こんな想いがあったんですね!!

つづく。

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