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第0章#04「〇〇さんの笑顔が見たいから」(フードコート大作戦とクリスマスチキン)
――〇〇さんの笑顔が見たい。じっと黙っていらっしゃる日でも、心の扉を開いてみたらいろんな思いが飛び出してくることがある。そんな想いから、ガスパッチョ隊長とローリエ女史は、増えてきた職員と共に「そこまでする?」をデフォルトとしたチャレンジを繰り返しました。…でも、まだ序の口。その先を聞いてみましょう。
ガスパッチョ隊長
創業当初は、自分たちが食べてかなきゃならなかったし、利用者さんにデイに来てもらうにはどうしたらいいかと必死でした。と同時に、はじめての介護業界に身を置き、「介護って何だろう」と考えさせられることもしばしば。「体力がなくなってきたから買い物に行く回数が減った」とか、「大好きだった裁縫も、針に糸を通せないのでやめた」などの声が聞こえてくるのですが、本音は別にあることもわかってきたのです。「買い物に行きたくないわけじゃないよ。だけど、若い人と行くと歩くペースが違うからついていけないし気を使うの…」「裁縫も一人でやるのはつまらないけど、みんなでやるのは楽しいんだよ」などなど。
―― ふむふむ。それでどう思われたのですか?
隊長
それって、自分たちの世代と変わらないな~って。僕だって、一人でもくもくと走るマラソンは苦手だけど、みんなでわいわいできるバレーボールなら楽しめる。楽しいことやってる時間の方が心も身体も動きます。なんだ、同じなんだな、と。そこに気付いてから「高齢者だから〇〇〇〇だろう」という考えをやめました。普通に接しよう。自分たちが楽しいものは利用者さんもきっと共感してくれるはずだ。それぞれが楽しいと思えることをつなぎ合わせれば、みんなが元気になれるのではないかという考えにシフトしていきました。
――「フードコート大作戦」も、そんな背景から生まれた企画でしょうか?
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「高齢者さんって、めちゃお肉を食べるよねえ」と気付いた瞬間がありました。勝手に高齢者さんは「煮魚」と決めつけていたのですが、外出先で、好きなものを頼んでねというと、唐揚げや焼肉など、予想していないメニューを頼んだんです。その様子を見ていて、食事制限のある方は別にして、そうでない方には「食べたいものが選べる日」をつくってもいいよね、ということで「フードコート大作戦」が誕生。スマイリングでは、ずっと手作りの食事にこだわっていますが、月のうち1週間だけ、「好きなものを食べられるかわりにレトルトでも許してね!」という条件をつけて、オムライス、麻婆豆腐、親子丼・・・など20種類ほどのメニューを設けて、食材を集めます。これは「好きなものが食べられる」という状況をデイサービスで創出できるかのチャレンジでした。「好きなものを食べるのか」「出されたものを食べるのか」の二択があったら、好きなものを食べる方がきっと人生が楽しくなるだろうと思ったんです。
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あつあつを提供したいので11時すぎから大忙しです。
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ケチャップで何を書いたかなあ?
――だんだん見えてきました。いくつかの選択肢があったとしたら、たとえ遠回りしてでも「楽しそうな方を選ぶ」「〇〇さんの笑顔のために」がスマイリング流と言えそうですね。「秋刀魚まつり」も、毎年盛り上がっていますよね。外にテーブルを出して、炭火で焼くんでしょ?
隊長
キッチンのグリルより、外で炭火焼きする方が美味しいじゃないですか!それだけです(笑)。ものすごい数の秋刀魚をネットで仕入れて、みんなで食べるんですよ。だけど、ある年、秋刀魚を高齢者さんに食べさせた、といってケアマネさんに非難されたことがあるんです。骨が喉に引っかかるから危険だと。それって、「できない、危ない」と最初から決めつけていませんか?と思ったんです。悔しかったので、翌年、そのケアマネさんたちを秋刀魚まつりに招待して、「高齢者さんたちは、こんなにきれいに骨をはずして食べるんですよ」「こういうイベントもリハビリになりますよね」とお伝えしました。
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楽しいと食欲でるんです。
――クリスマス・ウィークになると毎日のように、「チキンの丸焼き」がテーブルに並ぶと聞きました。
隊長
これには理由があるんです。ただただ、クリスマス=チキン、というわけではありません。今から10年前の利用者さんの年齢を考えると、戦争を体験している方が多かったんです。テーブルにチキンの丸焼きがあって、ケーキがあって、ツリーがキラキラ・・・そういうクリスマスを知らない方が多いだろうから、僕らで体験させてあげたい。その気持ちがスタートでした。毎年、90羽ぐらい丸焼きチキンを注文するのが定番になりましたが、その背景にある気持ちも、〇〇さんの笑顔を見たいから、に他なりません。
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ただ、こうやって羅列していくと、イベントが目白押しのデイサービスのように見えちゃいますが、決して、毎日がジェットコースターのような日々をつくりたいわけではありません。どうやったら子どもからおじいちゃんおばあちゃんまで、みんなが役割を持ち、楽しみながら日々生活を送れるかを、ずっと考えてて。ハレの日(=非日常)よりも、ケの日(日常)を充実した日々にできるよう精進したいと考えています。
――「高齢者だから〇〇〇〇だろう」という考えをやめて、普通に接しよう。自分たちが楽しいものは利用者さんもきっと共感してくれるはず。そうしたガスパッチョ隊長の介護現場での気付きは、多世代が互いを尊重しながら暮らすスープタウンの基盤となりそうです。
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