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Red 後戻りはもうできない

ネタバレあり。

「Red」
一言でいうなら、問題作だ。
朝の情報番組のMCの彼が感想を寄せていた。

確かに。

主人公、搭子と同じように子育てをし
家庭を守ろうと日々努力する女性からしてももちろん問題作である。

エリートの夫は思いやりのないイヤな男として描かれていて、映画が始まってしばらくしたあたりで「わー、これはツラいです」となる。

私が一番嫌悪したのはすき焼きのシーンだ。
結婚記念日のお祝いとして夫婦二人で食事をする。
高級な店に席をもうけ、妻を連れてくる。
まさに、世間的に見て良い夫を演じる。
しかし、妻に豆腐や春菊ばかり寄越し
自分は霜降りの牛肉をうまいうまいと食っている。

嫌悪すべきは、本人は「良い夫」を演じているつもりはなく、まさに、自分を良い夫であると自負しているということ。
それを信じて疑わない傲慢さに嫌悪感が最高潮であった。

まあとにかく、最初から最後まで
この夫は妻の本心など知ろうともしないし
さして興味などないのだが
それでも焼き場に娘を連れてくるラストシーンでは私は彼に同情するしかなかった。
母親に捨てられてしまう悲しみでいっぱいの娘が母親を求める泣き声が痛々しい。
そして、なすすべもなく立ち尽くすその父親。

若くして死んでしまった鞍田なんかより、余程不憫に思う。
これから、あの父子はどうやって立ち直るのだ?

母親はすぐに帰ってくると信じていた娘。
自分は良き夫として、家族と共に幸せに生きていくのだと信じて疑わなかった男。

結局、成就しなかった若き日の思いに身を焦がそうが
私たちはまだその先を生き抜かねばならない。
鞄を抱き締め、泣きながら歩いていく主人公。
もう、後戻りはできないのだ。

女としてこの映画を観るのか

妻として観るのか

母親として観るのか

姑として観るのか

年を重ねるにつれ、より複雑な思いに心がざわつく作品であることは間違いない。

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