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#読書感想文 それは「無知の問題」

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』ブレイディみかこ(2019)


話題の本なので、ご存じの方も多いかと。

イギリスの元底辺中学校に入学した息子さん(イエロー=日本人とホワイト=アイルランド人の間に生まれた子ども)と母みかこさんが、社会の縮図とも言える格差や差別やアイデンティティの問題と折り合っていく姿が綴られたエッセイ。

みかこさんも息子さんも素敵。
特に、悪いふるまいを特定のレイヤーで括らず、「無知の問題」として切り分ける作業が素敵だと思う。

 

水泳大会のエピソードが印象深い。
成績優秀な私立校の生徒が、水泳大会でも成績上位を独占している状況を見て、
親の所得格差がそのまま子どものスポーツ能力格差になってしまっている、との記述。

むかしなら、勉強のできない子はスポーツができるとか、そういうこともあったし、労働者階級の子どもが金持ちになりたいと思ったら、スポーツ選手か芸能人になるしかない、と言われた時代もあった。だが、いまや親に資本がなければ、子どもが何かに秀でることは難しい。そのリアリティーが目の前で展開されているのを見ると、なんとも暗い気分になった。

ただ、これで終わるのではなくて、
息子さんが日本の帰省先(玄界灘)で鍛えた泳ぎを披露したり、
庶民にも素晴らしい才を持った子がいたり
恵まれた私立校のあの子はもしや底辺保育所にいたあの子で、里子になったのか?とか
現実の力強さ・タフさもまた、しっかり感じる本。


終章「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとグリーン」が、すばらしい。


以下より4章分試し読みできるので、よろしければぜひ。
推しの水泳大会 6.プールサイドのあちら側とこちら側 も試し読み対象なので全文読めます↓


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