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一階でも二階でもない夜 2024/05/25

・堀江敏幸の随筆集『一階でも二階でもない夜』を読了。回送電車と名付けられたシリーズの二作目で、2000年代初頭に雑誌掲載された散文たちが収められている。

・「綺麗な文章を紡ぐ作家を挙げよ」と曖昧に問われたとき、私がすぐに浮かぶのは「堀江敏幸」の四文字だ。洗練された文章だと村上春樹、柔らかい文章だと吉本ばななを連想する。

・やはりフランス語のリズムの美しさが反映されているからであろう、平易な文ではないのに非常に読みやすい。絵画にも精通しており、その視点で街や自然を描写すると、鮮やかに色づいて見えてくる。あと、短い文章たちが並ぶと、きょろきょろと周りを見渡している気分になる。

・そして、実に庶民的だ。競馬場へ行ったり、公園でくつろいだり、古書店を冷やかしたりする。インターネットもマイナーな時代。作中で取り上げられる詩歌は、もう失われかけているほど古い作品ばかり。貴重な教養が得られる本だった。

・フランスを克明に描ける作家って、あまり知らないな。他には笠井潔先生や、平野啓一郎先生も書いていたっけ?
 


・新緑が深まり、夜はタオルケットが掛け布団代わりになる。つまり春が終わり、梅雨がすぐに訪れる。少し憂鬱な季節になる。

・新社会人になった友人たち、五月病とかになっていないことを祈る…。話を聞くのが恐ろしすぎて、夏休みまでまつことになるかもしれない。


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