77. 薬の飲み方は的確に!
ミュージカル好き救急医の独白 vol.77
- The Monologue of a Musical-Loving Emergency Physician -
はじめに
みなさんは現在飲んでいる薬があるでしょうか?このマガジンでも繰り返し薬に関しては取り上げてきました. 飲んでいる薬は救急外来を受診した場合には必ず全て(処方薬以外も)伝えること, 自身が飲んでいる薬はきちんと理由も把握することなどが大切でしたね.
今回は, 処方された薬の飲み方に関してです. 定期的に飲むべき薬と, そうではなく症状があるときにのみ飲む薬がありますよね. その辺りのお話を.
今回のミュージカル
ジャージー・ボーイズ
初演は2016年, シアタークリエ. 主人公のフランキーを演じるのはアッキーこと中川晃教さん. ミュージカル『モーツァルト』で半端ない歌唱力でミュージカル界に衝撃を与えました. いつかもう一度アッキーのヴォルフガングを観たいと思っているファンは多いはず.
ジャージー・ボーイズでアッキーが演じるフランキーは天使の歌声を持っており, ぴったりの役. フランキー以外のトミー, ボブ, ニックは赤青のWキャストですが, アッキーはソロで全公演歌いっぱなしです.
今年はJERSEY BOYS IN CONCERTという形ですが, コンサート形式も十分楽しめそうですよね. 私は劇場へは行かれそうにありませんが, LIVE映像配信もあるので, なんとか歌声を聞きたいと思っています. 今日は148日ぶりに帝国劇場に観客が入り公演が再開しました. 客席は前後左右を空ける千鳥配列にし, 公演時間も幕間をとらず1本勝負と変更になったようです. アッキーは「148日目に客席が目を覚ました」と表現し喜んでいたと報じられていました. 劇場でBig girls don’t cryの振り付けを一緒に踊りたいですが, パソコンの前に今回は変更しようと思います. くぅぅぅ...
救急外来あるある
81歳男性(AUさん)が, 自宅で動けなくなり救急搬送となりました. 精査の結果, カリウムの値が低く, これに伴う脱力症状が疑われました.
Dr.S:「AUさん, 飲んでいる薬を教えて下さい.」
Pt.AU:「はい, これ(お薬手帳)ですね.」
Dr.S:「ここに載っている薬以外は飲んでいませんか?」
Pt.AU:「はい. 病院は1ヶ所しかかかっていません.」
Dr.S:「市販の薬やサプリメント, 漢方なども飲んでいませんか?」
Pt.AU:「漢方は貰っているのだけですね. 足がつりやすいので.」
Dr.S:「芍薬甘草湯ですね. 頓服で処方がでていますが, どの程度使用しますか?」
Pt.AU:「とんぷく?それは毎日食後に飲んでいます.」
Dr.S:「1日3回ですか???」
Pt.AU:「はい…」
Dr.S:「なるほど…」
定期的に飲むべき薬とは?
高血圧に対する降圧薬, 糖尿病に対する血糖降下薬, 脂質異常症(高脂血症)に対する薬, 脳梗塞や心筋梗塞後の抗血栓薬(血液サラサラ薬)などは, 原則として飲んだり止めたりする薬ではなく, ある程度の期間内服し効果を判定しながら調整していきます. 血圧が問題ないからと自己判断で止めてしまうと, その後じわりじわりと元通りになるでしょう. 薬を飲んでいるから正常なのであって, 生活習慣の改善がなされていなければ早々簡単に血圧は正常化しませんから.
肺炎や尿路感染症などに処方される抗菌薬は, 決められた期間定期的に飲む薬です. 症状が改善したからと途中で終了してしまったり, 飲む回数を減らしてしまうと, 治療が不十分となり再燃してしまいますのでご注意を.
頓服(とんぷく)薬とは
頓服とは, 症状が出たときに薬を飲むことです. 食後や寝る前など時間を決めて飲むのではなく, 痛みなどの症状がひどく必要なときに使用するものになります. 頓服という言葉自体は認知度は比較的高いものの理解率は低いことが示唆されており, 私も処方する場合には頓服という言葉と併せて, 「必要なときにのみ飲む薬」であることを説明するようにしています.
頭痛や腰痛に対する鎮痛薬, 発熱に対する解熱薬などが代表的です.
AUさんの芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)という薬は, こむら返りなど高齢者で使用している方が多いですが, この薬は1日3回定期的に飲む薬ではなく, 原則として足がつりそうなど症状が認められるときに使用する薬です. ”頓服”薬として使用するものです.
自身に処方されている薬が定期的に飲むものなのか, 頓服薬なのかは理解しておきましょう.
♪Sherry
Sherry, baby
Sherry
Sherry, baby♬
『Sherry』
ミュージカル好き救急医から, 知っているとチョコッと役立つ知識を少しずつお届けします. ぜひ!