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69. 敗血症(sepsis)らしいバイタルサインとは?

ミュージカル好き救急医の独白 vol.69
- The Monologue of a Musical-Loving Emergency Physician -

はじめに

「敗血症ってなに?」と聞かれて答えられますね?「え?無理」って方は「68. 敗血症ってなんだ?」を読んで下さいね.
敗血症は, 肺炎や尿路感染症など, 高齢者を中心に頻度の高い疾患でも起こるわけですが, 自宅や施設において, 遅れることなく病院を受診するためにはどうすればよいのでしょうか. 敗血症は臓器障害を来している, すなわち重篤な状態であるため, 受診のタイミングが遅れれば, その分予後も悪くなります. 病院を受診すれば, 採血や画像検査などの詳細な評価ができますが, 受診前には当然できません. その場で, マズいか否かの判断をするために診ておくべき点は何か, 今日はその辺りのお話.


今回のミュージカル

エリザベート
東宝版エリザベートの歴代トートは何人いるかご存じでしょうか. ①山口祐一郎さん, ②内野聖陽さん, ③武田真治さん, ④石丸幹二さん, ⑤城田優さん, ⑥マテ・カマラスさん, ⑦井上芳雄さん, ⑧古川雄大さん, そして2020年, 20周年を迎えるエリザベートでは⑨山崎育三郎さんが新たに加わる予定でした.
エリザベートは何度観に行ったかわかりませんが, 城田トートを初めて観た時には特に感動しましたね. 登場シーンからして”きたぁー”って感じで, 今まで観た中で最もトートらしいというかなんというか…その公演後, 縁あって本人と話す機会があり, それもあってその公演は鮮明に覚えています.
自身の環境や状況で, その時に観たいキャストは変わりますよね. 山崎トートも早く劇場で観たいものです.

救急外来あるある

83歳女性(AMさん)が施設で発熱を認めました. 発熱以外の目立った所見はなく解熱薬で様子をみていたのですが…

Dr.S:「どうされたのですか?」
施設職員:「昨日から熱があって, 今日は熱は下がっているのですが, 反応が乏しくて…」
Dr.S:「食事は摂れましたか?」
施設職員:「いえ, 全く.」
Dr.S:「呼吸数も速いですね…」

敗血症らしいバイタルサイン

脳卒中らしいバイタルサインは高血圧でしたね. 例え麻痺を認めても血圧が正常ないし低い場合には, らしくないため注意が必要なのでした.
それでは, 敗血症らしいバイタルサインとはなんでしょうか. 感染症が原因であると発熱を認めると思いがちですが, これには注意が必要でした. 熱は必ずしも上がりません. むしろ熱がない方が重篤であったりします.
敗血症らしいバイタルサインとして, 意識, 呼吸数を覚えておきましょう. 危険なサインとして血圧が低いことも挙げられますが, これは誰もが気付きます. それに対して意識が少し悪くても熱のせいだろう, まぁ大丈夫だろうと軽視しがちです. 呼吸数に関しては, このマガジンでも繰り返し取り上げていますが, 最も大事なバイタルサインであり, 呼吸数が勝手に速くなることは通常なく, そこには必ず理由があります. 高齢者では原則として過換気症候群など精神的なことが理由で呼吸数が速くなることは通常なく, 内因性, すなわち心臓や肺の病気, 感染症では肺炎などの内科的な疾患があるのです.

救急外来では, ①呼吸数が22回以上か否か, ②意識が普段と異なるか否か, ③収縮期血圧が100mmHg以下か否か, この3点をパッとチェックし, 複数項目満たす場合には敗血症の可能性を考え対応します. 自宅や施設で非常に効果的であるという評価はなされていないのが現状ですが, これら3項目の異常が認められる場合には, 敗血症でなくても危険な病態であることが多く, 早期に病院を受診した方がよいので覚えておくとよいですよ.




♪最後のダンスは俺のもの お前は俺と踊る運命
 最後のダンスは俺のもの お前は俺と踊る運命♬
『最後のダンス』

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