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⑮心房細動と脳梗塞の密な関係

ミュージカル好き救急医の独白 vol.15
- The Monologue of a Musical-Loving Emergency Physician -

はじめに

みなさんドキドキしてますか?以前, 「③心房細動ってなんだ?」ってことで心房細動という不整脈の話を取り上げました. その際に, 心房細動というのは脳梗塞の原因となり得ることをチラッと触れましたが覚えていますか?そのためにワルファリンなどのサラサラ薬飲んでいる方もいることでしょう. サラサラ薬のこともまた「②なんでこの薬を飲んでいるのだろう?」で語っているので今一度読み返してみて下さい.
今回は, 心房細動を持っている方のうち, どのような方がサラサラ薬を飲んだ方がよいのかっていうお話し. ドキドキしたからといって, 心房細動だからといって, 必ずしもサラサラ薬を飲むわけではないですが, 脳梗塞が予防できるのであれば, そのリスクを見積もり飲むべきかを自身でも考えられたらいいですよね. では今日もお付き合いを.

今回のミュージカル

ベガーズ・オペラ
2006年にジョン・ケアード演出によって初演, 2008年に再演されました. ジョン・ケアードといえば, 代表作はレ・ミゼラブルですよね.
ベガーズ・オペラで主演マクヒースは内野聖陽さん, エリザベートで山口祐一郎さんと共に初代トートでしたね. セクシーで格好いいのです. そして, 島田歌穂さんと笹本玲奈さんという新旧のエポニーヌが共演するとなったらこれまた観に行くに決まっています.
このミュージカル, 他のミュージカルにはない3部構成で, それぞれの幕間(”まくま”ではなく, “まくあい”って読みます, 知ってました?)にはキャストとおしゃべりすることも可能です. 森公美子さんだけだったかな?!笑
そしてそして, 最後数名が客席から連れられ舞台の上で一緒に踊るのですが, 私, 手を引かれ舞台に立ったことがあります!それも観劇した日にちが国家試験の合格発表日, とんでもないプレゼントをいただきました. 私の隣にはあの森公美子さんが!いまでも忘れませんね.
ってことでドキドキした話からの, 心房細動と脳梗塞発症のリスクに関するお話し.


救急外来あるある

今回もまた救急外来でよく経験するケースを紹介しましょう. 68歳男性(Mさん)が自宅で意識が悪く動けない状態で救急搬送となりました. 右半身の麻痺と言葉が上手く出ない状態で, 血圧は180/123mmHgと高く, 脈はバラバラで心房細動を認めました. ご本人から話を聞くのは難しかったため, 奥さんから話を聞きました.

Dr.S:「ご主人はいつからこのような状態ですか?」
妻:「朝は普段通りでした. 私が買い物へ出かけて帰ってきたらトイレの前で倒れていて...」
Dr.S:「いまは12時15分ですが, 何時頃に買い物へ出かけたのですか?」
妻:「10時半に出かけて11時半過ぎ, 40分ぐらいだと思います. 」
Dr.S:「10時半までは普段通りであったということでよろしいですか?」
妻:「はい, 間違いありません. どうしちゃったんでしょうか?」


心房細動と脳梗塞

心房細動は脳梗塞の危険因子の一つです. それ以外の危険因子として有名なものは, ①高血圧, ②糖尿病, ③脂質異常症, ④タバコ, ⑤アルコールが挙げられます. この6つは覚えておきましょう.
心房細動は年齢と共に増え, 今後誰もが起こり得ます. 心房細動は心臓が不規則に動くイメージです. そのため血液が乱れ血栓(けっせん)という血の塊ができ, それが何らかのタイミングで頭に飛び, 脳梗塞を起こします(心原性脳塞栓症と呼ばれます).
血の塊ができやすいのであれば, 血液をサラサラにしておけばいいじゃないかということで, 心房細動患者さんはサラサラ薬の中でも抗凝固薬(ワルファリン, 直接経口抗凝固薬)を飲むことが多い訳ですが, 当然血をサラサラにしておけば, 出血した際に止まりづらくなります. 飲んでいる方で, 手足をぶつけたときや採血をした際に青あざの様になってしまった経験ありますよね.
ってことで脳梗塞を引き起こすリスクが高い方に限りサラサラ薬を飲みましょうっていうことなのです.

心原性脳塞栓症を起こしやすい方とは?

心房細動以外に脳梗塞の危険因子を併せ持っている方がリスクが高そうですよね. リスクを見積もるために有名な評価方法がCHADS2 score(チャッズ・ツースコアと呼びます)です. さらに評価項目を増やしたものを医療者は使いますが, みなさんはまずこの5項目を意識してみてください. 以前と比較し現在は, これらのどれかに該当したら, すなわち1点以上であれば抗凝固療法を考えることとなっています. 絶対に飲まなければならないわけではもちろんありませんが, 心房細動に伴う脳梗塞は, それ以外による脳梗塞と比較して重篤になりがちであることも考え, 慎重に対応を考える必要があるのです.
健康診断などで心房細動がたまたま見つかった方は, それのみで過度に心配するのではなく, 高血圧や糖尿病などが大きく影響するので, 普段から食事, 運動など自身の体調管理を見直すことが大切です.

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♪旅を続けよう 世界の果てへと
 生きてる限り 遠い場所へ どこか♬
『遠い場所へどこか』

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