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【R1-013-014】 高齢男性の頭痛

【R1-013-014】
問題13-14連問:次の文を読み, 2つの問いに答えよ.
76歳の男性
既往歴:高血圧症
現病歴:自宅で頭痛を訴え倒れた. 来院時現症:意識レベルGCS8(E2V2M4),脈拍100/分, 血圧 200/100mmHg,呼吸数24/分,SpO2 98%(room air). 瞳孔径 右3.5mm,左3.5mm, 対光反射両側緩徐であった. 頭部単純エックス線CT画像を示す.

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問題13:WFNS分類ではGradeはいくつになるか. 1つ選べ。
a. Ⅰ
b. Ⅱ
c. Ⅲ
d. Ⅳ
e. Ⅴ

問題14:救急外来で急に意識レベル GCS3(E1V1M1)となった. 急変の原因として可能性が高いのはどれか. 3つ選べ.
a. 脳幹出血
b. けいれん
c. 脳血管攣縮
d. 急性水頭症
e. くも膜下出血(再出血)

解説

救急外来で”頭痛”ときたら, まず考えるのがくも膜下出血(subarachnoid hemorrhage ; SAH)ですね. 突然発症の激しい頭痛が典型的ですが, 救急車で来院するとは限りません. 一定数のSAHは歩いてくるため, 常に”発症様式”を意識した対応が必要です. 10分以内にピークに達する頭痛であれば, 必ず鑑別に挙げましょう. また, 10%は失神を主訴に来院します. 失神は瞬間的な意識消失発作ですから突然発症ですもんね.

くも膜下出血の重症度分類

3つ有名な重症度分類がありますね. Hunt and Hess分類, Hunt and Kosnik分類, そしてWFNS分類です. WFNSとはWorld Federation of Neurological Surgeonsの略で世界脳神経外科連合のことです.
GCSと主要な局所症状の有無で判断するため瞬時につけることができます.
今回の76歳の男性は, GCSは8点ですからその時点でGrade Ⅳとなります.
入院時の重症度と予後も頭に入れておきましょう.

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くも膜下出血 急性期合併症

問題14は救急外来で常に意識しておかなければならない合併症です. これは必ず意識しておく必要があります.

再出血
特に意識しておかなければならないのが, 予後悪化因子である再出血です. これはなんとしても避けなければなりません. そのためには, とにかく早期にSAHであることを認識することが大切であると思います. 典型的な激しい頭痛があれば, 誰もが疑うとは思いますが, 意識障害で来院し, 明らかな麻痺がない場合には頭蓋内疾患を除外してしまっていることがあります. しかしここは要注意です. 脳梗塞や脳出血であれば, 身体所見上左右差を認めることが多いと思いますが, SAHはむしろ左右差はないことが多いのです. 私は”左右差の無い意識障害”をみたら, まずはSAHを意識するようにしています.
また, 失神で来院した場合にもSAHが鑑別から落ちていることもあるため忘れずに. 脳血管攣縮もまた, 再出血と同様に予後悪化因子ですが, 発症して間もなく起こるものではありません.

けいれん
くも膜下出血の急性期に最大で30%, けいれんを合併します. 明らかな痙攣が認められる場合以外に, 画像に見合わない意識状態である場合には痙攣の関与を考えましょう.
その他, 急性水頭症はイメージしやすいですね.

参考文献

#1 . Report of World Federation of Neurological Surgeons Committee on a Universal Subarachnoid Hemorrhage Grading Scale. J Neurosurg.1988 ; 68 : 985-6
#2 . 脳卒中データバンク 2015. 東京:中山書店;2015.
#3 . Macdonald RL, Schweizer TA. Spontaneous subarachnoid haemorrhage. Lancet. 2017 Feb 11;389(10069):655-666.

答え:d(問題13), b, d, e(問題14)

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