66. 脳卒中らしいバイタルサインとは？

ミュージカル好き救急医の独白 vol.66
- The Monologue of a Musical-Loving Emergency Physician -

はじめに

脳卒中, 毎日の様に救急外来で出逢います. 突然左手足が動かなくなった, しゃべりづらくなった, 意識が悪くなったなど, 突然の状態の変化を認め救急搬送される症例が半数, 症状は軽度で自身で来院する場合や家族に連れられてくる症例が半数, そんな感じです.
脳卒中の治療は時間が大切というのは以前お話しました. 今日は, 脳卒中らしいバイタルサインとはどんなものかを頭に入れましょう. ”脳卒中らしさ”を見積もることは極めて大切です.

今回のミュージカル

夢から醒めた夢
劇団四季のオリジナルミュージカルで, 上演回数は1,000回を超えています. 主役のピコ役は, 保坂知津さん, 堀内敬子さん, 濱田めぐみさん, 吉沢梨絵さんなど素晴らしい方々が演じてきました. 保坂知津さんは歌った瞬間”らしさ”がでますよね. マンマミーアのドナ役などはまり役が多く, 劇団四季退団後も個性的な歌声をいつも楽しみにしています.
本日（7月13日）, 演出家, 浅利慶太さんが亡くなって2年が経ちます. このミュージカルには浅利さんのメッセージが込められています. 胸が熱くなりますね.

救急外来あるある

84歳女性（AJさん）が, 自宅で倒れ救急搬送となりました. 左上下肢麻痺を認め, 救急隊は脳卒中を疑っています.

Dr.S：「どのような状況ですか？」
救急隊：「食事中に倒れ救急要請となりました. 観察上, 左上下肢麻痺を認め脳卒中を疑っています.」
Dr.S：「バイタルサインはどのような感じですか？」
救急隊：「意識は清明, 血圧は120/85mmHg, 脈拍は…」
Dr.S：「血圧120/85mmHgですか？」
救急隊：「はい. 脈拍は70回/分で…」

脳卒中らしいバイタルサイン

脳卒中らしいか否かは, 以前「⑧脳梗塞の見つけ方」でお話ししましたね. 以下の3点に注目するのでした.
①顔面の麻痺（Face）：顔の右, 左の力が入らない場合には要注意です. イーと口を動かしたり, おでこに皺を寄せてみたときに左右の差がある場合には”まずい”サインです.

②上肢の麻痺（Arm）：両手を前に出し（まえならえの姿勢）, どちらかの手が上がらない, もしくは下がってしまう場合には”まずい”サインです.

③呂律が回らない, 言葉が出ない（Speech）：なんだか喋りづらい, 言いたい言葉が出てこない, 辻褄の合わない言葉を発している場合には”まずい”サインです.

さらに脳卒中らしい血圧を覚えておきましょう.
脳梗塞など頭蓋内の病気では, 脳圧が上昇するため, 体血圧（一般的な血圧）を上げて, なんとか脳へ血液を流そうとします. つまり, 脳梗塞など脳卒中では一般的に血圧は普段よりも高くなるはずなのです.
手足の麻痺を認め, 喋りづらさなど顔面の症状も伴っているときには, 脳卒中（特に日本では75%程度は脳梗塞）を強く疑いますが, 血圧が普段よりも高いとなると, より”脳卒中らしい”わけです.
逆に血圧が正常ないし低い場合には, 脳卒中の様で実はそうではないこともあるのです. この話はまたいずれ.
血圧が高く, ①〜③の症状を伴う場合には, 脳卒中らしいと覚えておきましょう！

♪今日私たちは, 劇場で逢いました 夢は眠りの中にだけあるわけじゃない 劇場でも大きくふくらむ どこよりも素晴らしく花開く 誰か出逢ってみたいひとは？ 行ってみたいところは？
舞台の空間はあっと言う間に変身してその人と出逢わせてくれます 人生を生きるには夢が必要
苦しいとき, 哀しいときはここへいらっしゃい さみしいとき, 嬉しいときも是非
劇場は夢を創りだし, 人生を映し出す大きな鏡です♬