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サッカー応援を音から科学してみる その2 「スタジアムとゴール裏を両立する」

前回の「スタジアムを応援で満たそう」「ゴール裏は応援の道標」というコンセプトを受けて、今回は応援を楽器の側面から考えてみます。

尚、本記事は音楽野郎の戯言的な要素を多々含んでいるので、音楽をしない人が見ても全然おもしろくないかもしれません笑。こんなことを考えながらやってたんだー程度に流し読みしてくださいww

遠くに音が届く楽器は?

「スタジアム全体」で考えた場合、大きなポイントは前回も述べたように「距離」です。スタジアムが大きいという話。距離を経ると音量は下がる、つまり遠くに届けるには大きな音量が必要ということになります。

大きな音の出る楽器が有効だということになりますね。

では大きな音が出る楽器とはどういうものがあるでしょうか。
こちらのスガナミ楽器さんのサイトがわかりやすいのでご覧ください。

まぁそりゃそうだ、ダントツでドラムww

そういう意味で、ドラムというか打楽器は応援に向いている楽器と言うことができそうです。

では次に、どういうドラムが向いているのか?という点を考えてみます。

一般にドラムと呼ばれているものは、ドラムセット。打楽器の集合体です。一般的なドラムセットの構成を見てみましょう。
バスドラム/スネアドラム/タム/クラッシュシンバル/ライドシンバル/ハイハットという構成が一般的かなと思います。

(参考写真:佐野康夫さんのドラムセット。僕がエンジニアとして出演した「ドラムレコーディングの流儀」の収録現場より。)

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この他によく出てくる楽器としては、以下のようなものも。
カウベル/タンバリン/スプラッシュシンバル/チャイナシンバル

この中で応援に向いているものはどの楽器なのか?

先程の通りスタジアム全体に届く音という観点で選ぶのであれば、最も効果的なのは、、、、「バスドラム」でしょう。そです、踏むやつです。

え?スネアじゃないの?

そう思いますよね、応援見ているとスネアが中心的存在に見えますので、スネアが重要に見えますよね。

しかし「スタジアムの応援の道標」という観点でみれば最も重要な楽器は「バスドラム」です。正確に言えば、「音が低くて音量が出る打楽器」

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そう、ここで重要なのは、「音が低いこと」なのです。
(18インチフロアタムがMR2に乗ることを見せたいのではなく、このタムの大きさを示したい画像です笑)

どういうことかというと、音の減衰と音の高さは大きな関係があり、ざっくり言えば低い音の方が減衰しません。

同じ音量で22”バスドラムと14”スネアを叩いたら、より遠くで聞こえるのは22”バスドラムです。

ということで、最重要なのは口径の大きいタム/バスドラムです。これが外せない楽器。ついでに言うと、遠くの人にも聞こえているので失敗できない楽器です。苦笑

遠くに届く音とゴール裏が盛り上がる音の違い

全員でバスドラムを叩けばいいんじゃないの?

そういうことになりますよね。
しかしですね。これだと、盛り上がらないんです。ゴール裏が。

前回も書きましたが、いい音、いい音楽とは「自然と体が動く」ものです。

想像してみてください。
楽器のアンサンブルもなく、リズムを刻むのは低音タムだけ。

この状況だと、、、、声を出す方の精神力が要求されるのです。

そう、これは遠方アウェイでよく発生する事例です。飛行機使ってまでアウェイに行くような方はかなりのツワモノなので、なんなら楽器が何も無くても声を出せますし、時には太鼓っぽいものを叩くこともあるでしょう笑。

しかし、ホーム戦はそうも行きません。

今日始めてゴール裏に来てくれた人が、自然と体が動いてしまう環境を作ること。「自然と体が動いてしまうような音楽を奏でられる楽器と演奏」がゴール裏には求められると考えています。

音楽の3要素とは?
リズム、メロディ、ハーモニーです。

このリズムという部分において、打楽器の音が「リズム」になるのは、強弱と音色の変化があってこそなのです。

メトロノームの音聞いて歌いたくなりますか?そうでもないですよね。
これはメトロノームが刻んでいるのはリズムではなく、タイミングだからです。

しかし、バスドラムで強弱つけすぎたり細かいことやりすぎるとそれはそれでうるさいと感じてしまいます。

特にゴール裏以外の観客の皆さんにおいては、細かすぎるリズムがうるさいと感じる人も出てくるでしょうし、そんな細かいことやられても同じように手拍子を叩けないでしょう。聞こえた音に合わせて手拍子を叩くであろうことを忘れてはいけません。

ということで、ゴール裏とそれ以外の両立を図れる構成として、低音タム・バスドラムのシンプルなリズムを基軸にスネアや他の楽器で強弱・音色の変化をつけることができる楽器構成が良かろうという結論に至りました。ひとりではできないので、みんなで合奏して、楽器を組み合わせて、メインの人にもゴール裏にもカッコいいリズムを作り出せば良いということです。

そうです、メインスタンドに届ける音とゴール裏を盛り上げるための音は分けて考える必要があるのです。

スタジアム全体とゴール裏を両立する楽器構成とは?

役割的に割り振るとこうなります。

バスドラム(もしくは大口径低音タム):遠距離担当、リズムシンプル度3
スネアドラム:至近距離担当、リズムシンプル度1
中〜大口径タム:中距離(遠近両用)担当:リズムシンプル度2

もうね、スネアは完全に盛り上げ担当なんですよ。理論的に考えると。

なのでスネアでなくても良く、なんならドラムセットでもいいかもしれません。ドラムセットを入れる場合は、バスドラムが大きすぎると大口径タムのシンプルなリズムとかぶってしまうので、小口径バスドラムのセットがよろしいかと。

そういう意味ではやっぱりヤマハの廃盤カクテルドラム”Club Jordan”がいいなと思います。欲しいw

また、コレ以外に楽器を足す場合は基本的に至近距離盛り上げ担当だと認識したリズムパターンが適していると思います。

ちなみに、リズムの柱となる人も決めておいた方がタイミングを合わせやすいでしょう。一般的にはスネア担当がリズムの柱になることが多いでしょうね。マーチングバンドも概ねスネアがリズムの柱です。

それぞれの楽器を考える

役割が整理できたところで、楽器別にどういった楽器、セッティングが適しているのか考えてみます。

■バスドラム/大太鼓

これはとにかく大口径でしょう。22”/24”あたりが良いのではないでしょうか。バスドラムがなければ18"あたりの大口径フロアタム。複数の低音打楽器を用意する場合はタイミングが完全に合わせられることが条件。でないと一般サポーターの方が手拍子のタイミングで迷ってしまいます。

素材はあまり選びようも無いでしょうが、使用環境を考慮すると最適解はアクリルではないかと思います。ただし実際には圧倒的にウッドシェルのものが多いので、あまり選択の余地が無いでしょう。ウッドシェルの場合は雨の後のメンテナンスを忘れずに。

アタック音はどうせ減衰してしまってスタンドには届かないので、必要ないです。故に叩くツールはマレット系、マレットヘッドも柔らかいものでOKですね。ペダルを使って足で踏んでも良いですが、見た目的には手(マレット)で叩いた方が良いかも。

このマレット↑、安くてすごく良かったのですが、在庫切れが続いているようです。。柄に穴を空けて紐を通すと(下の写真参照)、紐の力で叩けるのですごく楽。ピッチにマレットが飛んでいくこともありませんw

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(僕がタムを叩いていた頃に使っていた初代SC相模原仕様のマレット。2016年)

■スネア

至近距離重視か遠距離重視かで楽器のセレクトが変わりますね。

至近距離重視の場合は好きなもので叩けば良いでしょう笑。いい音!好きな音!楽しく叩ける音!コレ大事です。また、音が大きすぎると近くの人の耳がやられますので、ピッコロなどの浅胴でも良いと思います。使用環境と耐久性を考えると錆びないアクリルがベスト、次いでメタルシェルが好ましいかなと思います。

スネアを複数人立てる場合は、誰がリズムマスターとなるのか決めておく事、また、リズムパターンを合わせて叩く事も重要です。

スネアの音ってそんなに違うの?という人はぜひこちらをどうぞ。動画で5曲出てきますが、5曲ともスネアの音が違うのがわかると思います。

■タム

これは人数にもよりますが、16"以上の大口径を増やすのであればタイミングがきっちり合うことが条件になるかなと。至近距離向けであれば小口径タムを入れると良いかなと思います。10"、12"あたりが扱いやすいと思います。

材質はバスドラム同様ですが、流通量を考えるとこれもバスドラム同様ウッドシェルになることが多いかなと思います。

叩くモノもバスドラム同様マレットがよろしいかと。ただし細かいリズムを刻む場合はアタック音があったほうがはっきりしますので、スティックもアリかなと思います。リズムパターンにあわせて考えるのが良いですね。

■シンバル

これはお好み案件ですが、ゴール裏盛り上げ用グッズだと思って導入したほうが良いですね。DAZNで研究しましたが、かすかに聞こえる程度しか遠くでは聞こえてません。ゴール裏においてはリズムの頭などにアクセントがつき、格段にノリがよくなりますのでオススメです。

色々試した結果では、余韻の短いシンバルの方が使いやすいです。よってチャイナ、スプラッシュ等が適しています。普通のクラッシュ・シンバルといえば16"クラッシュ当たりが定番ですが、ちょっと余韻が長くてチャントのキメの部分などで余韻が邪魔になることがあります。叩いた後にミュートすれば良いのですが、チャントって長いのでキメを複雑にしすぎると大変になります苦笑。

■共通項目・・・チューニングとヘッド選び

チャントはテンポが速い物が多いので、余韻を短めにチューニングするのが良いです。余韻が長いと4分、8分音符で叩いた時に音が濁ります。低音でありながらかつ余韻を短くチューニングする必要があります。両立できなければガムテミュート等の胴の鳴りを殺さないミュートで調整。

難しい話ですが、「鳴っていなくて良い」のではなく「鳴っていて余韻が短い」です。ここは混同しているドラマーさんが結構多いので注意が必要です。

ヘッドは細かなニュアンスやアタック音よりも音量、それよりも耐久性。笑

タムに関して言えば、普通のワンマンライブのドラムセットよりも多く叩かれることになります。普通はそんなにタムを多用しませんのでw

ということで、基本的には厚いヘッド、REMOならEMPERORが適していると思います。コーテッドかクリアかという点については、どちらでも良いかなと思いますが、ルックス的にクリアヘッドの方が良いケースが多いかなと思います。コーテッドの倍音もそんなに必要ありませんし。

多少耐久性を犠牲にする場合は、REMOでいうところのCONTROLLED SOUNDやPINSTRIPE等の倍音がコントロールされたヘッドにするとチューニングが楽です。僕はCONTROLLED SOUNDに落ち着きました。REMOの場合なんちゃらXは耐久性が高いのでオススメですね。

RENEISSANCEやカーフスキン等の変わり種系は、その細かなニュアンスの違いがほぼ影響しないシチュエーションなので、耐久性重視の方が実用的です。僕は1年で1枚以上破れています。

ヘッドは両方張った方が良い?

サッカーの試合では裏のヘッドを外しているところをよく見ますがこれについて考えてみると。

片面ヘッドのメリットは、ヘッドが1枚なので「音程感が強い(音の高さがはっきりしている)」ことと、「アタックがハッキリしている」こと。

つまり応援ではどちらも重要ではない要素ですw

ということで、スタジアム応援においては音量と響きの方が重要なので、ヘッドは両面張った方が良いと思います。

グローブは付けたほうがいい?

好みにもよると思いますが、グローブ付けた方が叩きやすい人は付けたらいいんじゃないかなと思います。

僕はタムを叩いていた初期はグローブを付けていましたが、日焼けがすごくてグローブをつけるのをやめました。これ、屋外で楽器演奏するという応援の特殊性を象徴していると思います。120分くらい炎天下で叩いたりしますので、かなり日焼けします。試合後に恥ずかしいことになりますw

ちなみに、スネアはもともとグローブつけない派なので、スネアに転向してからはグローブ無しです。

マーチングタム・マーチングスネアは?

いやですね、これは実際トライしたことがある訳です。跳びながら叩ける、動けるという課題解決にはマーチングじゃね?という仮説のもと。

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結果、、、撃沈。

重すぎた笑。
そしてスタジアムでは全然音量が足りませんでした。

個人的な感想ですけど、マーチング楽器って、楽器隊自体が聞く人に近づいていくので、音が大きい必要がなく、あまり大きな音が出るように作られていないのではないかと感じました。また、とてもじゃないですけど跳びながら使うようにできていません笑。

ただし、レコーディングするととても良い感じに聞こえます。レコーディングにおいては音の小さい楽器でも録音レベルを合わせて聞こえるようにしますので、実は過度な音量は必要無いのです。

他の楽器は?そんなに真面目にやる必要ある?

というわけで、「スタジアムを応援で満たすための道標となる」、そして「音」の観点から応援楽器について考えてみました。次回は各スタジアムでのセッティング写真を見ながら実際の応援セットの紹介、そして最後は応援のリズムに関する考察に進んでいきたいと思います。

ちなみに、僕はサッカーゴール裏応援においては太鼓・ドラムのところまでしか考えないことにしました。打楽器以上にディープなので。

どこか忘れましたが、「音楽でなくて応援なんだからそこまでやらなくていい、考えなくていい」的な意見を見たことがありますが、それは違うと思っています。もちろん全員そこまでやる必要はないと僕も思います。

が、真面目に考えて試行錯誤している人に文句言うのは違うんじゃないかなと。選手も監督ももちろん真面目にやっている訳ですから、こっちもやるなら真面目にやるのが礼儀かなと。趣味なので結果に対する責任は負わなくていいと思ってますが、人前に立つ責任はあると思ってます。故に、真面目に音のこと、応援を聞いた人、見た人のことを考えることは間違いではないと思います。音を追いかけたい人はぜひ自信を持って!音楽は、カッコいい、良いと思ったものを追いかける遊びです。応援も、音楽です。

実際に太鼓を叩いて、自分の音を聞いてを繰り返さないとわからないことも多いと思いますし、あくまで理想論であり、ひとつの目標でしかありません。こんなこと考えてやってると楽しい、同じ目的を持って合奏するのは楽しいです、という話ですのでご容赦ください。

と、いうことで今回は終わりです。また次回。どこまで読んでいただけるのかは謎ですが苦笑、今年なのか10年後なのか、太鼓を本気でやろうと思う人が出た時に、何かの役に立てばいいなと思ってがんばります!




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