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木造新築ピアノ室の施主の皆さんへ

この記事では、新築木造建物における約6帖から8帖程度の部屋を想定した新築計画の留意点を中心に述べます。

主に音響と防音性能をバランスさせる設計仕様・工法などについて、私が経験した実例の現場と相談案件をもとに考察したものです。
今までの投稿記事と内容が重複する部分もありますが、改めて、これから新築木造のピアノ室を計画する施主(ピアノ演奏者)向けの内容としてまとめます。

プロのピアニストのアドバイス

狭い部屋ほど、壁や床の仕上げ材が重要であることは、プロのピアニストや音楽教室のピアニストが共通して指摘している留意事項です。

床の仕上げ材は「無垢杉材のフローリング」が音響的にベストであり、予算に余裕があれば、壁面の一部に杉の羽目板を使用すると、音響的に音が伸びるような響きを体感出来るというご報告です。
*私も自分の担当した現場で音の響きを体験しました。
*予算が厳しい場合は、別の方法もありますが、床については杉の無垢材を推奨します。※カーペット仕上げで予算を節約した現場もあります。

防音しすぎないように調整する

ピアノ室が狭いほど、すべての壁面と床を遮音強化すると音響が悪くなります。これは木造ピアノ室の特長でもあります。
*床下の空間は音響の最適化のために必要な空間です。床下に音が響くことを想定して対策をします。
このため、間取りの計画段階から近所や家族への影響を考慮して検討することが重要です。

壁面については、反響やフラッターエコーを軽減するために、4面のうち1面を適度に音が抜けていく部分として想定する。

天井は、できる限り高さを確保して、遮音しすぎないように注意する。

防音ドアは、音響と緊急時の避難を考慮して木製ドアとする。※地震時にドアが開かなくなった場合は、スチールドアは自力で脱出できない。

ピアノ室の工法は木造軸組在来工法がベスト

ツーバイ工法を選択すると、防音対策だけでなく音響対策の難易度が高くなり、部屋が狭くなるだけでなくコストが嵩みます。

私の経験では、プロのピアニストは全て木造軸組在来工法を前提条件として依頼されています。※おそらく、国外でのピアノ演奏経験も考慮されていると思います。
ピアニストは「木造の部屋全体が適度に響くこと」を好まれます。
*ツーバイ工法では、共振が強くなるので音響調整が難しくなります。

木造軸組工法は、将来の間取り変更が可能ですが、ツーバイ工法は構造的な制約から殆ど出来ません。

壁と床の下地材の施工要領

壁に軟質シージングボードを使用する場合は、二股のタッカー金物の間隔が8ミリ・9ミリ程度の製品を使用し、ビスを併用するときはボード用ビスを選択します。
*基本的に接着剤は健康被害のリスクを考慮して使用しませんが、やむを得ない場合は、木工ボンドを部分的に使用します。

フローリング床の下地材に、軟質シージングボードを使用する場合は、捨て貼り合板(ラーチ合板など)を重ねますが、厚さは9ミリを標準とします。

壁などにシナ合板5.5ミリを使用する場合は、タッカー金物の二股の間隔が4ミリ程度の製品を使用し、仕上げ材として施工するときは、つなぎ目をシーラー塗布しパテ処理してから、クロスまたは塗装仕上げとします。
※漆喰仕上げにする場合は、シナ合板の下地に厚さ9ミリ以上のラーチ合板が別途必要です。パテ処理とシーラー塗布の順番は用途に応じて、クロス・塗装担当職人と相談して調整してください。
なお、シナ合板を「現し仕上げ」とする場合はシーラーもパテも不要です。

以上の内容を参考にして、新築木造ピアノ防音室に生かしていただければ幸いです。

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