記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

【ネタバレ】映画『トラペジウム』感想~本当に彼女は「なんもない」存在だったのか~


今局所的に盛り上がりを見せているアイドル映画『トラペジウム』
これに関して色んな意見が飛び交っているので、「これ自分の目で確かめた方がいい映画だな…」
と判断して映画館に足を運びました。
もともと、よく聴いている星街すいせいさんが主題歌やってたんで
一応見る気ではあったんですが。

結果として思うところはあれど観てよかったです。
どっちかというと、アイドルを目指した少女の青春と再生の物語が主題だったんだと思っています。
ちょっとこれネタバレ避けると上手くお話しできないタイプの映画だと思うので、
恐れ入りますが本編の核心の内容にも触れていきます。


あらすじ


物語の主役・中心人物となるのが、アイドルを志望する高校生・東ゆう。
彼女がどうしてもアイドルになりたい夢を叶えるため、
地元高校の東西南北から美少女を集めてアイドルグループを結成する、という計画を進めます。
この時点でまあまあ荒唐無稽なんですが、実際にどういう因果か3人集まってしまい、
そこからローカル番組でデビューして、ついに全国区のアイドルとして躍進していくのですが…
というお話。

とにかくこの東ゆうが、自身がずっとノートに書き貯める「アイドルになるための計画」に従い
ひたすら打算的に愚直に計画的にアイドルになるための道を突き進むんですね。
“友達”といいつつも本当はアイドルになるための打算で付き合おうとしているだけで。

そうまでしてアイドルになろうとした彼女に振り回された人が、そして彼女自身がどういった道をたどるのか、というのがこの物語のメインストーリーになります。

この映画観ていて「なんだろうこれ…」みたいに思う部分もあるんですが、
実は大体の要素に理由なり回答が付けられていて。
そこはこの映画のすごく真摯な部分だったと思います。

この作品の原作が、実際にアイドルをやられていた方によるものなので
アイドルのえげつない裏側の話とかそういうのをやるのかな…とか思ってたんですが
どちらかというとアイドルとしての面はむしろ控えめにしているようにすら感じます。
代わりに重きを置いているのが、彼女がその生活の中で何を思い何を得たのか、という話をすさまじい情報量で殴りつけています。

アイドルになるために全てを捧げた、言ってしまえば主題歌の通り
アイドルにならなければ「なんもない」状態である彼女が
最終的に何を手にしたのか、というのが大きな主題になっています。
公式PVがやたらめったら不穏なものばかりなのですが、
彼女と彼女を取り巻く青春が一番のテーマなので、なんか観終わった後心なしかスッキリとした気持ちになれるのが
結構不思議なところですね。

ネタバレ・核心 東ゆうとは何だったのか

言ってしまえば彼女、物語の開始時点でブッ壊れてるんですね。
終盤で明かされますが、これまでもオーディション受けまくって全部落ちていて、
もう最後のなりふり構っていられなくなって東西南北のプランに縋るしかなかった。
今までアイドルになるために全てを全振りしてきたのに
なれなければ自分にはもう何も残らない、「なんもない」存在になってしまう。
それがOP曲が流れていたころの東ゆうだったのでしょう。

そうなると東西南北計画を始めとした、彼女の異常行動もその背景が透けて見えてくるんですよね。
異常なまでの計画への固執、テレビ起用が決まった後の案内ボランティアへのぞんざいさとか
そもそもあんな滅茶苦茶な計画を本気で信じて実行しようとすること自体だいぶどうかしてる…

ホントに利己的なことしかやってこなかった彼女なんですけど、
必ずしもすべての行動が誰かのためになっていなかったわけではなくて。
何より東西南北の他の三人、みんな現状に居場所を感じられなかった子ばかりで、
そこに友達だと言って引き合わせてくれた、東ゆうの存在は救いでもあったのでしょう。
やることなすこと、自分が思った通りに結果が出るものじゃないけど。それは決して悪い方だけではなかった。

彼女がやってきたことが本当に意味のないものだったのか、
その答え合わせがされる時が、彼女にとっての救いであり再生の物語だったんだと思います。

他の人も多く言及されていますが、実際にアイドルだった原作者の願いも多分に含まれている作品であるとも思います。
多くの普通の青春を投げうってやってきた活動ではあるけれども、そこにも確かに青春はあったのだと。

というかこの映画本当に悪い人間が一人も出てこない。
誰か一人でも悪意を持つ主要人物が出てきたら、この話成り立たなかったんじゃないかとすら思います。
みんなが東ゆうのことを思って何かをしようとしている…シンちゃんもあいつ良い奴過ぎるだろ
もしかしたら東ゆう、人を見る目に関しては本物だったのかもしれません。あの3人を選んだことについて、自分の目に狂いはなかったことをしきりに強調してましたし、自分に害を為そうとする人は意図的に近寄らないようにしてたのかも


この映画に物足りなさを感じるとしたらその点から来ているものだったんじゃないかと思います。
色んなものが彼女や物語にとって都合よく動いていると見えてしまう。
(状況全然よくはなってないのにね)
ただ、それにも若干力業ですけど理由が付けられていると思います。


その他気づいたこと

・お城のガイドおじいちゃんの正体を知って笑ってしまった
あれウッチャンだったの!?
それ以外の二人も、なんでおじいちゃんなのに女の人起用してるんだろ、と思ったら
エンドロール観て爆笑しそうになった お互いほんとにいいのかそれ

・自分観る前シャイニング・トラペゾヘドロンとか勝手にほざいてたんですけど、
皆それぞれの方向性に向かって進んでいく4人の歪な関係性・青春模様を、不等辺四角形になぞらえてるようで
由来が割かし近いことに気が付いて変な笑いが後になって出ました
輝く偏四角多面体…

・おそらく一番話題になってる「こんなに素晴らしい職業ないよ」のシーン
実際に見るとあれに至るまでの一連のシーンだけ、他と違ってなんか可愛い感じの作画で一層違和感になって凄かった 個人的にはシリアスな話する時にわざわざ使う絵じゃねーだろとは思う
同じ制作会社のぼっちざろっくを思い出す感じ 映画始まる前の予告で劇場版の宣伝観てたので特に
あの凄まじいシーン任せられる腕の人が、あの作画監督さんしかいなかったんかな…

最後に

本映画は、「アイドル」を題材としつつも
そこを媒介とするものに救われ/傷つけられた少女たちが
前に進んでいく青春模様を描いた作品だったのかなと。

私はトラペジウム観てよかったなぁと思ってます。
合わなかった、なんか物足りないって思うところも分かるっちゃ分かるんで、
自分の目で見て感じたものを大事にして頂ければ。

そんなところで。








…まぁ私はもともと星街が主題歌やってたのに加えて、
愛してやまない鷹嶺ルイさんが観に行ってたし
何より原作者が鷹嶺ルイさんの推しだったんで不思議と縁近い映画になってしまってたんですが…

おしまい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?