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ドリアンとは(ジャズ理論基礎)

どうも、ペンタトニックおじさんです。表題の件、けっこうな確率で食べ物の話だと思われてしまうので、書き下ろしで説明を試みます。無料部分だけ読んでも分かるようになっています。音楽学校や理論書でも、あまりうまく説明されているとは思えないことが多いので、有料部分では初学者が心から納得できるような説明を目指しました。このくらいの内容は楽典の範囲ですし、ジャズ理論と呼べるようなものでもありませんが、「ジャズ(でも使う)理論」ぐらいに思って下さい。

古代ギリシャの名前が今でも使われている

まずドリアンやフリジアンという名前は、ギリシャ語から来ています。ドリアとかフリギアとか呼ばれる音階があって、それらがヨーロッパ音楽の基礎になっていった関係で、英語でもDorianとか書くわけです。そんな歴史的な背景があるので、西洋音楽をちょっと深くやろうとすると、どこかで必ず出てきます。ちなみに「果物の王様」の方は、durianとつづり、発音もどっちかというとデュァリアン、みたいな感じでぜんぜんべつの言葉です。

ぶっちゃけて説明すると「レミファソラシドレ」

ピアノの白い鍵盤だけ弾く時、ふつうはドから弾くものだと思いますよね。良くも悪くも、義務教育の賜物です。さて、ではこれをレから弾いてみましょう。なんなら、左手で低いレを弾きながら押さえたまま、右手で高い方のレから、レミファソラシドレ〜、と弾いてみましょう。下降してもいいです。レドシラソファミレ〜と弾いてみて下さい。

どうでしょうか。ドから弾いたときの明るい感じと聴こえ方が違って、なにやら物悲しいというか、哀愁漂うというか、ちょっと謎めいた感じまでしてきませんか。この「弾き方」を、Dドリアンと呼びます。

ところで、英語ではドレミファソラシをあまり使わず、CDEFGABといいます。もし英語で音名を言うときは、「シ」を「ティ」というので注意しましょう。ドレミファソラティド、です。「レ」もReなので、Leではないです。

さて、いま紹介したDドリアンですが、それはレの音から始まる音階なのでそう呼びます。英語だと”D for Dorian”とか言って覚えます。頭文字が同じなので覚えやすいということです。つまりレの音はドリアンの開始/終止音だよ、という暗記の仕方ですが、これはあくまでもハ長調のとき(=ピアノの白鍵だけを弾く時=キーがCの時)のドリアンだけに通用する話です。もしキーがE♭だったら黒鍵を3つ使いますし、ドリアンはFから始まります。この場合はFドリアンと呼びます。

一番低い音がポイント

Dドリアンを弾く時、左手で低いDの音を伴奏しました。ここがとても大事で、ポップスでもジャズでも和声に基づく音楽は、一番低い音、ベース音とかルートとか呼びますが、この土台になる音によって和音やメロディの聴こえ方が左右されます。「いまDが引力を持っている」みたいな言い方をすることがあるのですが、いま、土台になるルート音がDのときには、同じドレミファソラシドを弾いても聴こえ方が変わるということです。ピアノよりもオルガンの音色で弾いてみることをおすすめします。左手でCやDの音を押さえながら、右手は白鍵だけを使って適当に音を出してみて下さい。響きの違いがよくわかるはずです。

「メジャー・スケールの2番目の音から弾けばドリアンだよ」という説明の功罪

聞く人によって悲しかったり楽しかったり個人差があるでしょうが、とりあえずここでは「物悲しい感じ」だとします。つまり、どこの音から弾き始めても、この物悲しい感じがする「弾き方」がドリアンなのです。それがCから始まるのならばCドリアンだし、F#から始まるならF#ドリアンです。ドリアンの定義はあくまでも「この感じが得られる弾き方」ということです。

ですので、Dから始まるこの物悲しい弾き方はなに?と考えたときに、それがたまたま、白鍵をレから弾き始めたときに得られるぞ、つまりハ長調の2番目の音から弾けばドリアンになるぞ、という理解をする方が自然かと思います。ドレミファソラシの7つの白鍵の音で構成される音階のことをCメジャー・スケールといいますが、このCメジャー・スケールの中で「あの物悲しい感じ」がするのは、レから弾き始めた時だよ、レの音は英語でDだから、Dドリアンと呼ぼう、ということです。このように音階を並べ替えて弾く方法や並べ替えた音階のことを「旋法」あるいは「教会旋法」などと呼び、ドリアンの響きを得るための弾き方を「ドリアン旋法」と言います。英語だとモード(mode)と呼び、”Dorian mode” のように使います。

ここまで理解できると、ドリアン旋法は、実は厳密には「スケール(音階)」ではないということが分かると思います。メジャースケールには7つの音があるので、7つのモードがあります。モードは元になるスケールの転回型のような位置づけなんですね。だから「旋法」という名前まで付いているのです。すごく狭い意味で言えば、ドリアンや他のモードは「モード」であって、「スケール」ではありません。よく、音大を出た人でも「ドリアン・スケール」などと便宜的に言ってしまうことが多いのですが、そんな事を言っていると、モード警察に逮捕されるかもしれません。笑 まあ、こんな細かいことを言う人は敬遠されるので、知っていても黙っていましょう。。。

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