無学の教育者 八重子おばさんの想い出 #2
その後、八重子おばさんが財布を開けて
「ああっ」
と声をあげた。今まで一度もそんなことがなかったので、どきっとして一気に追いつめられた気分になったが、もちろん知らんぷりをした。すると、
「いちろうくん、大切なお金が無くなってしまったがよお。ああ、どうしよう、奥さん(僕の母のことだ)に怒らるっが。晩ご飯も作れなくなってしまった。いちろうくん、どげんしたらええじゃろか」
と言って、八重子おばさんはその場にへたり込んだ。そして、たくし上げた割烹着の裾で顔を覆って大声で泣き出したのだった。
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