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ささいな変化のサイン「茶花」の秘密を語る

茶室の床の間に、花が生けてあるのはご存じですか。
たいてい季節の花がさりげなく入れてあります。茶席に用いる花を「茶花」といい、花瓶に生けるという意味で、花入れに花を入れると言います。

千利休は「花は野にあるように」と、花を入れる人の感性で、花の持つ自然さを活かせばいいと語っています。
たかが花、されど花。今回は「ささいな変化のサイン『茶花』の秘密」として、仕事の上での気づきに関連付けてお話しします。

野にあるように入れる

利休の教えとして、「花は野にあるように」と言われているように、花の持つ自然な姿を、できるだけそのままにして入れるのが茶花です。
この“自然な姿を”というのがくせ者です。

花屋で購入したのでは、野にある様子がなかなか想像できません。
自分で野原や山に行って探してくるのが、一番わかりやすいです。仕事でも、自分の目で見て確認しようという事と同じですね。

花も枝もそれぞれに形も色も同じものは二つとありません。その特徴を生かして、花になった気持ちで考えて、見定め、花入れに入れるものなのです。
部下の育成に悩むマネージャーが、なんとか部下の特徴を生かせないか、と思う心境と似ていませんか。

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入れ方に決まりはない

茶花は「人に見てもらうため」という意識よりも、自分が表現したい感性で入れればいいと教わりました。
入れ方に決まりはないですが、決まりがないほど難しいものはなく、表現できる感性を磨くことが重要だと実感しております。

お客様として床の間の茶花を見るときは、亭主からのメッセージとして、静かに楽しみ拝見させていただきます。ただ素直な気持ちで感じればいいのです。
客はただ“綺麗だなぁ”でも、“見たことない花だなぁ”でも、“芸術的で素敵”でも、感じ取りながら黙って拝見します。
それらは、美をテーマにした、サプライズをテーマにした、華道家とのコラボをした、などのメッセージなのかもしれませんから。

花一輪だけでも、亭主と客の“思い”のキャッチボールなされるのです。


常に花を身近に感じて

茶花を入れる側として、野にあるようにや感性で入れると語ってきました。
このように、花を入れられるようになるには、常に花を身近に感じて、季節に応じてちょうどよく咲いている花を知ることが大切です。

春の草花は、一週間もしないうちにピークが過ぎて、ふさわしい花の種類がどんどんと変わっていきます。
夏の花は、朝採って花入れに入れても、そう長い時間もたないこともあります。花の特性を知るには、花を身近に感じて親しむことです。

ささいな変化のサイン

茶花として、冬は椿が、夏は木槿(むくげ)がよく用いられます。季節感があり、鮮度が感じられるからと言われています。

タイトルに挙げた「ささいな変化」を説明します。
茶室に入室したときと退出するときで、花の開き加減が変化していることがあります。
椿や木槿は、2時間ほどで(茶事という一連の点前の場合2時間くらいかかります)蕾が膨らむような状態になるのです。

茶道は、湯の沸く音、香のかおりなど、時間とともに変化するものがありますが、花もその一つです。
茶室を出る時に花を拝見しますが、このささいな変化を気づけた時は、ちょうどいい花を選んで準備してくれた亭主の心遣いに感謝したくなる瞬間です。

夕顔の花を入れた、夕ざりの茶事という茶席に客として参加したとき、それは見事な花の変化を体験させていただきました。

さいごに

亭主は花の気持ちになり花を入れ、客は亭主の感性を感じ取りながら花を拝見し、時間経過とともに移ろう花の様子も含めて亭主の心遣いを感じ取る。
こんな「茶花」の秘密をわかっていただけましたでしょうか。

仕事の場面では、客先の様子や部下の態度のささいな変化に様々なサインが隠されているようです。
それらに翻弄されているビジネスパーソンも、茶花を通して感受性を磨いてみてはいかがでしょうか。

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