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2020/2/26 「ガーリックバターソースでニンニクに溺れた」

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・ついに買ってしまった。いろはに千鳥のびしゃ掛けの会を見てから頭の片隅にずっと奴はいた。絶対に美味いのは分かっていた。ガーリックにバターが合わないわけがないのは、今日日小学生でも知っている一般常識であろう。

美味いと分かっているのなら買えばいいではないか。人はみな私にそういうだろう。実際に言われたことはないが絶対に言われるだろう。美味いから買えと。その言葉に抗う理由など本来無いはずだが、どこか購入に躊躇してしまう。

改めて商品名を見る。「ガーリックバターソース」。「ガーリック」これはまだいい。食べた後に口の中が口臭ムンムンパラダイスに成り果ててしまうことが難点だが、現代においてはガーリック臭を抑えるための商品等は枚挙に暇がないので実質問題など無い。

「バターソース」。こいつだ。こいつが私に購入を躊躇させていたのだ。「バターは健康に悪い。」そんなステレオタイプの認識をバターに対して抱いていた私にとってバターがメインのソースを自宅に常備してしまうということは、ただでさえ劣悪なバランスになっている自炊生活に拍車をかけてしまうのではなかろうかと恐れを抱き、なるべく目に入らないように気を付けていた。バターソースに罪など無いにも関わらず。

気を付けてはいるものの、時たまガーリックバターソース欲が湧き上がることがある。それを必死に抑えて過ごす日々を過ごしていた。抑圧された感情を頭の片隅に追いやって、さも平然と仮初の日常を送っていた。

幸いなことに今まで私が普段利用するスーパーはガーリックバターソースを取り扱ってはいなかったため、ガーリックバターソース欲が湧き上がったとしても、すぐさま購入することができなかった。amazonで買おうとしたこともあったが、商品をカートに入れてから購入が確定するまでの住所設定や支払い方法選択で、いくらかの間が開いてしまうおかげか、何とかガーリックバターソース欲を抑えることが出来ていた。そう、今日までは。

いつものようにいつものスーパーに行く。肉、野菜、飲み物。いつものようにカゴに入れレジに向かう。「そうだ。焼肉のたれが無くなっていたから買っておかなきゃ。」まるで、何かに導かれるように忘れていた記憶が呼び戻され、調味料売り場へと向かう。

お目当ての黄金の味 辛口は直ぐに見つかった。カゴに入れレジへと向かおうとした時、棚の一番下にあの黄色い奴がいた。「ガーリックバターソースだ!」。目に入った瞬間、シナプスから体中に「ガーリックバターソースを買え」と命令が下った。抗えなかった。いや、抗うつもりなど本当は無かったのかもしれない。

ガーリックバターソースを買い物袋に入れ、帰路に就く。足取りはいつもよりも早かったかもしれない。今日が金曜日ならきっとスキップしていただろう。

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・豚肉を焼いてガーリックバターソースをかける。美味い。予想を超える美味さだ。口の中に入れた瞬間、バターの濃厚さが広がる。その刹那、バターの向こうからニンニクの大波がやってきてバターもろとも口の中を飲み込んでいった。そして口の中は、ニンニクに溺れた。

例えるならガーリックトーストだ。ガーリックトーストの味だ。
おそらく全国にあるガーリックトーストはこれを使って作られているのだろう。ガーリックバターソースを使っていないガーリックトーストなんて世界に存在しないのではないか。とさえ思えてしまうほどの衝撃を受けた。

あいにく今日はパンを買っていないが、豚肉でこの衝撃だとすると、パンに付けてしまったら一体どうなってしまうのだろうか。エビに付けたらどうなってしまうのだろうか。ブロッコリーに付けたらどうなってしまうのか。

私には身も心もガーリックバターソースに溺れる未来しか見えない。
明日、リステリンを買っておこう。それが溺れた未来の自分に対してできる唯一の救いなのだろうから。


お金を捨てるためのドブです。 ドブに捨てるよりも時間はかかりませんので是非。