ケアマネジャー制度の課題を考える~受験要件緩和の問題点~
ケアマネジャー不足の解消策とは?
厚生労働省がケアマネジャーの受験要件を緩和する方向で検討しているというニュースが話題になっていますね。
ケアマネジャー不足を解決するためとのことですが、私は賛成できません。
現場の問題を解決するどころか、さらに悪化させる可能性があると思うからです。
2018年の改正がもたらした影響
■ケアマネジャー資格取得の厳しい条件
2018年の制度改正で、ケアマネジャー試験を受けるには、『社会福祉士や介護福祉士、看護師などの国家資格を取得後、さらに5年以上の実務経験』が必要になりました。
💡この条件の厳しさから、ケアマネジャーを目指す人が減り、現在のケアマネジャー不足が引き起こされていることは明らかです。
■社会福祉士の矛盾
社会福祉士は相談援助の専門職であり、国家資格を取得する過程で高度な知識と技能を習得しています。
それにもかかわらず、ケアマネジャーの試験を受けるために5年もの実務経験が必要とされるのはなぜでしょうか。
介護保険やケアマネジメントについてより深く学ぶため、講習や実習が必要だというのであれば理解できます。
しかし、すでに取得している国家資格に基づく業務の実務経験を5年間も求める理由が分かりません。
この実務経験が本当に必要であるとするならば、ケアマネジャーは社会福祉士より「上位資格」として位置づけられるべきです。
しかし、制度上そのような位置づけにはなっておらず、ここに大きな矛盾を感じます。
■医師や薬剤師にも必要?
医師や薬剤師のように、すでに専門知識や経験が豊富な人も、ケアマネ受験には5年の実務経験が求められます。
この条件が、現場の状況に合っているとは思えません。
すでに十分な知識を持つ人に、さらに経験を求める理由が見えないのです。
■地域包括支援センターの矛盾
見逃せないのが地域包括支援センターの業務との矛盾です。
地域包括支援センターには
●社会福祉士
●主任ケアマネジャー
●保健師
が配置されており、ケアマネへの助言や支援が業務の一環として定められています。
新人の社会福祉士が職歴20年のベテランケアマネに助言をすることがある一方で、ケアマネジャー受験には5年の実務経験が求められます。
このような矛盾は現場を混乱させるだけです。
更新研修の問題点
■負担が大きい更新研修
ケアマネジャーとして働くには、5年ごとに88時間の更新研修を受ける義務があります。
この研修はケアマネジャーの質向上にどれほど役立っているのでしょうか。
また、多忙を極めるケアマネジャーに時間的・経済的な負担を強いている一方で、収入の改善はほとんど進んでいません。
かつて、ケアマネジャーは介護職の花形でした。
「経験を積んで、いつかはケアマネに!」
と、多くの介護職員が目指す憧れの存在だったのです。
しかし、今ではその地位が失われつつあります。
💡処遇改善加算のある介護福祉士の方がケアマネジャーよりも収入が高いという逆転現象が起きています。
せっかく資格を取っても報われない現状では、ケアマネジャーを目指す人が減ってしまうのは当然の結果です。
受験要件緩和が引き起こす問題
■努力を否定する方針
2018年の改正によってケアマネ不足を招く結果になることは、最初から明白でした。
それなのに、今さら要件緩和を検討していることには強い憤りを感じます。
かつての私のように無資格から介護福祉士を取得し、その後ケアマネジャーを目指した場合、最短でも8年の時間が必要です。
今になって受験要件を緩和するのは、多くの努力をして資格を取得した人たちを否定する行為です。
むしろ、過去の改正が「改悪」であったことを認めるような形になり、制度への信頼をさらに損なうだけではないでしょうか。
処遇改善こそが最優先課題
厚生労働省にお願いしたいのは、ケアマネジャーの受験要件を緩和することではなく、現場で働くケアマネジャーの処遇を改善することです。
たしかに受験できる人が多ければ、一時的にケアマネジャーの数は増えるかもしれません。
しかし、その後どうなるでしょうか?
業務の負担が重い上に、報酬が見合わない現状が続けば、新しく資格を取った人もすぐに離職してしまうのではないでしょうか。
これでは、問題を根本的に解決するどころか、むしろ人材不足がさらに深刻化してしまいます。
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ケアマネジャー不足を解消するためには、今ケアマネジャーとして働いている人達が「この仕事を選んでよかった」と感じられる環境を作ることが大切だと思います。
5年ごとの更新研修も、廃止か、現場で本当に役立つ内容に絞って時間を短縮するべきだと思います。
ケアマネジャーが職業に誇りを持ち、安心して働き続けられるような制度を作ることが、ケアマネジャーの担い手を増やす一番の近道ではないでしょうか。