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発行済み株式数の表記がサイトによってまったく違う件

わたしが米国株投資の分析を始めて驚いたのが、発行済み株式数の認識が、ポータルサイトによって異なっていたことでした。発行済み株式数は、時価総額やPSR分析で重要な役割を果たす指標ですが、まとめ方に統一感がないために、どの資料を参考にしているかでまったく違う結果が出てしまいます。今回は銘柄ピンタレストを使って、いかにそれぞれの発表数が違うかを明らかにしていきます。

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わたしの結論:銘柄それぞれが発表しているForm10Qpage1に記されている数字を公式数とする!

まず、結論から言うと、会社が公式資料で発表している内容が正しい、と思っていて、それを見ると、SEC Form10Q、つまり最新決算発表内容(四半期ごとなら最新ターム分)が最新の発行済み株式数である!ということにしました。でないと、分析が飛びぬけて独自流になりすぎて予測が外れていきます。自分だけの発見もいいですが、やりすぎると毒になりました。

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↑この、赤で囲っている部分。前提が長い場合には2ページ目にずれこむこともありますが、すぐに探すことができます。

ピンタレストの株式は大きく分けて2種類

PINSは1株当たり議決権が20票あるクラスB株式と、1株当たり議決権1票のクラスA株式があります。市場に流通しているのはクラスA株式のみです。クラスB株式はピンタレストの経営に従事している人たちが握っているもので、これは敵対的買収対策や大株主からの各種圧力対策として圧倒的多数を維持するための戦略的な所有になります。クラスB株主が持ち株を市場に売却するとき、その株は自動的にクラスA株式に種類変更され、市場に流通します。インサイダーSellがあるたびに、クラスA株式数は増えていくわけです。★ここがあとで書いていく内容のポイントになります

ちなみに、クラスB株式はIPO7年目=2026年か  創業者の死去あるいは同等の状態になったとき、自動的にクラスA株式に全株転換される、としています。

ピンタレストの2020年3Q時点を例に、それぞれのポータルがどうまとめているのか、銘柄発表分と比較すると一目瞭然です

上記の前提をふまえて、直近2回分の決算と4Q決算をリストしてみます。

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まとめは4半期ごとなので、3か月ごとに更新されています。2Qから3Qにかけて、

クラスB株式は30,660,934株減少した
クラスA株式は48,180,431株増加した

数が合わない?いえいえ、たとえば従業員の持ち株がストックオプ行使でクラスA株式として市場に流通したり、公募増資や転換社債でA株に転換されたりすれば、この差額分が説明できます(今回はこのあたりの増減についてはつっこんでいきません)。

色付けした4つの数字が、発行済み株式数として出てくる候補になります。

では、それぞれのポータルがどの数字を採用しているのか、集計を取ってみると、以下のようになりました。

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ヤフーファイナンス。。。本国と日本で表記違うし。

最新決算が出ているにもかかわらず、前回Qの数字を、さらにクラスAの数字だけを使っているYahoo!Finance USとStockRoverには呆れました。

多くのポータルがクラスA株式のみを発行済み株式数として扱っていますが、勝手に端数を切り捨てているのが3つもあって驚きです(ブルームバーグ、Teletrader, Walmine)

わたしが公式数字だ!としたForm10Qpage1に記された株数をそっくり採用しているところはひとつもなかったです。

ばらける理由:市場に出回っていない発行済み株式の取扱い

実際に市場に流通している現実路線を取っているポータルが多いことがわかりますが、2つ前の決算データを使っていたりとお粗末なものもあります。クラスBを扱うと、いつ転換されるかわからないので、「将来的には」という前提で分析をしなければなりません。実績値で分析したい人たちにはなんとも悩ましいわけです。

発行済み株式数がらみの分析を公表しているものには注意が必要

ということになります。とくにPSR分析をしている人の内容は、その人がどのソースを使っているのかをしっかりと確認しないと、数字予測に大きな開きが出るのは必定です。

ピンタレストを例にとると、最大1憶5539万4,601株も差が出ているのです!

小型株投資だとびっくり!な数字誤差ですよ。

他人の数字を参考にする人は、絶対に気を付けましょう。

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