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コンビニ人間

図書館でたまたま手に取った「コンビニ人間(村田沙耶香 著)」。

主人公の古倉さんはおそらく発達障害なのだろう。発達障害の自分にとって、共感する部分がとても多かった。相当の変わり者であっても、自分にピッタリくる環境さえあれば生き生きと社会活動が送れるという希望が、この本にはあった。

古倉さんと同じで、私も色々なことがマニュアル化されているとスムーズに暮らすことができる。何時に起きて何をするから始まり、何曜日の何時に何をする、ということがしっかり決まっていて初めて、心穏やかに時間を過ごすことができる。逆に、何も決まっていなかったり、突発的な出来事や急な予定の変更などがあるとパニックになる。

他人の表情や話し方を観察して、どういう風に笑うのか、どういう表情をするのか、どういう言葉遣いをするのか、といったことを徹底的に真似て、自分の中でマニュアルにする。これも私が主人公と同じように実践していることだ。作り上げた「他人に見せられる自分」でなければ、他人には受け入れてもらえない。「自分を作る」のを忘れて他人と接すれば、不思議な顔をされてしまう。

同じような人がいるんだ(フィクションだけど)、ということに驚きつつ、古倉さんに「一人じゃないよ」と言ってもらえたようで嬉しくなった。

古倉さんは本当に工夫上手だ。彼女が温かい家族にサポートされながら、懸命に「普通に近い自分」を作って同級生やコンビニの同僚とコミュニケーションを重ねていく姿が、おなじ身の自分にはとても痛々しく映り、同時に「やっぱりこうすればやっていけるんだ」という希望も持たせてもらった。

発達障害者が社会でうまくやっていくには、周りの理解も、本人の努力も欠かせない。ただそれ以前に、環境が大事なのだと改めて思った。主人公の場合は、コンビニのように決まりきったマニュアルのある環境が働きやすい。自由な何も決まりのない環境のほうが実力の出せる人もいるだろう。特性に合わせた環境づくりが見つかれば、世にいう「生きづらい人々」も幸せに社会参加ができるのだと思う。

私にもいつかそういう環境が見つかって、一般就労ができる日が来ればいいな。そのためにも、自分がいきいきと力を発揮できる環境とはどのようなものか、自分はどのような工夫をすればよいか、改めて考えてみたい。

もうひとつ。私は「自分のような人間のDNAを残してはいけない」と思うので子供を持つつもりはないが、小説のなかで主人公が「あなたのような人は子孫を残すな、そんな遺伝子は天国まで持っていってそれで終わりにしてくれ」と言われるくだりがある。彼女は「この人はなかなか合理的な考えができる人だ」と感心するのだが、なるほど自分の思いと世間の目は同じなのだなととても興味深かった。

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