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ヘドロの創作 2024/7/14

 (承前)
 司祭たちはキジ太郎たちを包囲していた。ここは王の城だ、剣を抜くことは許されない。司祭たちは棍棒を持っているが、それは血の出ない武器だから許されていることだ。いや棍棒で殴られたらふつうに血が出ると思うのだが、なぜか猫の法律ではそういうことになっていた。

「落ち着いて。話し合いましょう」

「魔族と和平を結ぼうというものと話し合えと? それは僧会の意志に反する」

 どうやらキジ太郎たちが王に話した内容が、すでに僧会に流れているようだった。

「魔族に心があることを、僕は魔族の子を世話して知りました。だから、魔族と戦うのは、心ある猫と戦うのと同義です。それに魔族の多くはさらわれた猫の子です」

「……ふむ……」

 僧たちはとりあえず棍棒を構えるのをやめた。

「話し合いましょう。話せばわかる」

「……それは、魔族も同じなのか?」

 司祭の1人がそう言った。一同顔を見合わせる。

(どういうことだ?)

「魔族にも心があるのなら、魔族とも話せば分かる、ということではないのか? それとも、魔族の心はニセモノなのか?」

 なるほど。
 魔族も話すことができるのはここまで戦ってきた魔族を思えば事実である。それならば、魔族の心が本物であれば魔族と話して解決できる、ということではないのか。
 和平を結ぶというのはそういうことである。魔族の心が本物でなければ話にならないが、もし魔族の心が本物であれば、間違いなく和解できる、ということである。
 魔族だって戦って消耗するのは嫌なはずだ。

 問題は、魔族の心が本物なのかどうかだ。チャチビとのやりとりを思えば本物のような気がする、しかしすべての魔族がそうだとは確信できない。子供のうちは心があっても成長すればニセモノの心になってしまうのかもしれない。
 そもそもチャチビがレアケースで、みなニセモノの心しか持っていない可能性もあるだろう。
 キジ太郎は司祭たちに言った。

「僕たちが、それを確かめてきます。だから、どうか僕らの旅の成功を祈っていてください」

 司祭たちは理解した、と頷いた。

 キジ太郎たちは城を出た。魔族と話す、というのは、難しいことかもしれない。
 それでも、これ以上死者を出さないために、魔族と話しあう必要がある。そして、チャチビを取り返さなくてはならない。キジ太郎は、きりり、と平原の彼方を睨んだ。
 チャチビ。いま迎えにいくからな。待ってろよ。キジ太郎は心の中でそう呟いた。(つづく)

黄昏ている。暑い。


 ◇◇◇◇
  おまけ

 きのう聡太くんにフィラリア予防の薬をぽちぽちとつけた。もちろん「やめろ! はなせ! なにをする!」とものすごく嫌がられてしまった。猫には薬の意味がわからないから仕方がない。
 それからドコノコでずっと見ていた「ももちゃん25歳」がどうも厳しそうで心配している。お刺身もちゅーるも受け付けなくなってしまったらしい。ついこの間まで元気そうにしていたのに。
 ちょっと悲しい気分になって、聡太くんに「お前も20とかまで生きていいんだからな」と言ったが無視されてしまった。聡太くんには元気で長生きしていただきたい。

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