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ヘドロの創作 2024/3/31

 2024年度(正しくは明日からだが)から、日曜日はなにか聡太くんが面白いことをしないかぎり創作を掲載していこうと思っている。エッセイのネタ切れ防止とウソ混入防止のためだ。というわけで、少々お付き合いいただけたら幸いである。

 ◇◇◇◇

 猫は外宇宙からの侵略者だ。この人間のいる宇宙の外側にある別の宇宙で、猫たちは生まれた。
 しかし猫たちは基本的にたいへんぐうたらした生き物なので、開発に失敗した危険な廃棄物をザカザカ埋めたり隠したりしたせいで、外宇宙は滅びた。まさかそうなると猫たちは思っていなかったのだ。
 猫たちはワープ送路を通じて、宇宙船でこの地球にやってきた。そこは紀元前の地中海周辺で、そこにいる地球人は猫をみて「こいつらに任せておけばネズミに穀物へチョッカイを出されないで済む」ということに気付いた。
 この人類というものを見て、猫たちは「なんて下等な生物だろう」と思った。
 高いところに飛び上がることもできないし、爪も尖っていない。人間の子供は猫の子供以上に幼稚だ。
 人類は猫たちが外宇宙で築き上げた文明と比較するとあまりにも下等な文明と、あまりにも脆弱な肉体しか持っていなかった。
 猫は地球に文明を広げるべきか話し合うことにしたが、猫はぐうたらな民族なので話し合いの会場に議員が揃うことはなく、結局ぼんやりと全て先送りになってしまった。

 猫たちは地球に自分たちの文明を広げるべきか、要するに地球を侵略するべきか、一人一人で考えた。
 考えている間にも、人間は猫を世界の至る所に連れて行き、ネズミ駆除を頼むようになった。経典を運ぶ船のネズミ駆除などがよい例である。猫としては好奇心のままにネズミを追いかけなぶり殺しにして遊んでいるだけだったが、それを人間はたいそう喜んだ。人間の寝床に死んだネズミを持っていくと、人間は絶叫して喜んだ。
 そのころには猫も人間の気持ちがうっすら分かるようになった。どうやら人間は、自分たち猫をかわいいと思っているらしい。猫たちはかわいがられるのを素直に嬉しいと思った。
 猫たちは経典とともに大陸から島国に渡り、その島国において猫は恐ろしいまでの猫かわいがりを受けた。貴族の屋敷の柱に紐で繋がれる生活は不便だったが、食べ物を毎日もらえる暮らしはそんなに悪くなかった。
 そういうわけで猫はすっかり人間にほだされ、自分たちが外宇宙からの侵略者であることをほとんど忘れかけてしまい、それもまたいいか、と思うようになった。

「にんげんのおひざ……」


 しかし猫たちは忘れていないことが一つある。人間の文明がいくら進んでも、外宇宙で作った自分たちの文明に、人間が勝てないのだということだ。
 もう自分たちの宇宙から脱出したときの宇宙船が地中海に沈んでいることも、それをどう操作すれば地球人と戦えるかも、すっかり忘れてはいるのだが、いま自分たちをかわいいかわいいと撫でくりまわしてくる人間など、自分たちの作った文明の前には一瞬で滅びるのだ、ということを猫たちは知っている。
 だから世話される身分になっても、それは人間が自分たちを尊重して勝手に奴隷をやっているのだと、猫たちは思っているのであった。(了)

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