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ヘドロの創作 2024/6/9

 魔族の子であるチャチビは、意外なことに猫であるキジ太郎一行と同じものを食べたがり、猫と同じように過ごそうとした。
 チャチビはなかなか賢くて、太陽の高さを見て「まんまー」と騒いだり、日が沈むと「ねむたいー」とぐずったりした。
 その育つ様子はふつうの猫の子と何ら変わるところはなかった。ただ、尻尾の先についた口にギザギザの歯が生えて、それだけがチャチビが猫でなく魔族であると示していた。
 チャチビは常にキジ太郎に抱っこされた状態であった。幸い魔族にも出くわさなかった。キジ太郎以外の仲間が抱っこしようとすると激しく反撃して、ニャーオニャーオと大泣きするのだった。
 その日も、焚き火を囲んで魚の干物をモグモグしていると、チャチビは干物を欲しがった。キジ太郎が食べさしの干物を見せると、がぶっと噛みついてモグモグと干物を食べ、「けぷ」とゲップをした。

 チャチビはあっという間に目が青くなくなり、猫の言葉を覚えはじめた。
 その育つ様子に、キジ太郎は故郷に残してきた弟妹たちを思い出していた。
 チャチビはもう自由に歩けるようになり、キジ太郎に抱っこされなくても平気になったものの、疲れると泣き出すので結局キジ太郎が抱っこして歩いていた。チャチビはもうズッシリと重い。もうチビじゃなくなってきたのだ。

「チャチビ、ボラも食べなさい」

「いやだ〜」

 クロ美に叱られてチャチビがわめいている。チャチビはキジ太郎以外の面々にあまりなついていなかった。みんなはチャチビのことをなんだかんだかわいいと思っていたのだが。
 チャチビは特にクロ美が嫌いだった。キジ太郎は、チャチビを発見したときにクロ美が「魔族は放っておくべき」と主張したせいだろうか、と思っている。

「チャチビ、ボラもおいしいよ。ほら」

 キジ太郎が魚を口に入れてモグモグとやってみせると、チャチビは幼いなりにうろんな顔をして魚を口に入れた。

「まずい〜」

「……チャチビのやつ、ずいぶんしゃべりが達者になったな」

 シロベエがチャチビをちらりと見た。チャチビはパヤパヤの毛をしている。目こそ緑になったが、まだまだ子猫、子魔族なのだ。

(チャチビや。お前は言葉が早いな)

 シャム蔵が声をかけると、チャチビはよくわからない顔をした。

 チャチビが寝てしまってから、一行は難しい顔を突き合わせた。

「僕は、魔族っていうのは、猫がベースの生き物だと思うんだ。イグニッション! (©︎爆上戦隊ブンブンジャー)みたいな」

「なんだその『©︎爆上戦隊ブンブンジャー』つうのは」

 キジ太郎のボケとシロベエのツッコミはともかく、キジ太郎は持論を展開した。魔族は、何者かが猫を改造したものではないのか、と。

「でもチャチビは卵から生まれてるじゃない。猫は母猫から生まれてくるのよ」

「そうだけど……魔族にされてしまった猫の間から生まれれば、卵から孵化するとか……」

「キジ太郎、あなたどうかしちゃったんじゃない? 魔族に魂を取られちゃったの?」

「それはない。でもチャチビはどう見たって猫の子だ。しっぽが化け物なだけで……」

「まあ難しいことを言うのはよそうや。そろそろ寝ねえと明日がきつい」

 シロベエの提案した通りであった。一同、適当に横になる。キジ太郎の懐で、チャチビが「おかあさん……」と寝言を言った。(つづく)

薄暗いと涼しい気がする(暑い)。


 ◇◇◇◇
  おまけ

 なんだか昨日から突然暑くなった。きのうは今年で初めて暑いと思った。夜も寝苦しかった。
 なので半袖を着たら、腕を一日で聡太くんにズタボロにされてしまった。当分腕カバーは手放せないと思われる。

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