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ヘドロの創作 2024/7/21

 (承前)
 キジ太郎一行は、王都を出て魔族出没の噂のある、旧時代の遺跡を目指していた。
 旧時代の遺跡はいまの時代とは違い、生贄として動物を捧げたり、子供を修行の旅にいかせたりする時代だったらしいことが分かっている。
 いまはずいぶんいい時代になったんだなあ……と思いつつ、キジ太郎たちは遠くに石積みの遺跡が見えてきたことに気づいた。

「あれだ。急ごう」

 キジ太郎は早足になる。クロ美がキジ太郎に言った。

「遺跡は逃げないわよ」

「そうだぞ。急いだって仕方がない」

 シロベエが言うのだが、シャム蔵が首を横に振った。

(いや。キジ太郎は正しい。魔族の気配がある)

 遺跡にたどり着くと、なにやら動物の死骸を、魔族たちが貪り食べていた。
 魔族たちはキジ太郎たちに気づいて、逃げ出そうとした。キジ太郎は腕を広げて言った。

「違う。僕たちはあなたたちと話がしたい」

「ハナシ……?」

「反応したわ!」

「ネコ、ワレワレト、ハナスコト、アル……?」

「僕たちは魔族と和平を結びたい。魔族も猫も、平和な関係を築いて、一緒に暮らしたいんだ」

 魔族は表情こそわからないが、どうやら動揺しているようだった。
 動揺するということは、心があるということではないか。

「ワレワレハ、マゾクノヨワイモノ。ワヘイヲムスブコウショウハ、デキナイ」

「じゃあ上の身分の魔族に伝えてもらえないか」

「ワカッタ。ダガ、オネガイガアル……」

 魔族のうちの一体が、物陰に隠れていたなにかを連れてきた。
 子供だ。いや子供というには少し大きい、少女、といった年ごろの三毛猫だ。
 三毛猫の少女は、キジ太郎一行を見て、フーッ!! と激怒した。

「コノコヲ……ミケコヲ……ネコノクラシニ、モドシテホシイ……」

 三毛猫の少女――ミケ子は瞳をらんらんと輝かせて、いまにもキジ太郎たちに襲いかかろうとしていた。着ているものはボロボロだ。

「あなたたちが、この子を攫ったのか?」

「ソウダ。ミケコヲサラッテ、マゾクニシヨウトオモッタ……ダガミケコヲ、マゾクニスルコトハ、デキナンダ……」

(キジ太郎とチャチビとは逆だな)

「うん……ミケ子ちゃん、おいで」

 ミケ子はまた背中を丸めて、しっぽを少し持ち上げ、再度「フーッ!!」と怒っていた。

「大丈夫だよ。僕たちはあなたに危害を加えることはしない。あなたの味方だよ」

 キジ太郎がそう言うと、ミケ子は恐る恐る近寄ってきて、キジ太郎の手の肉球の匂いを嗅いだ。

「猫に戻ろう。きみの故郷はどこ?」

 ミケ子はきょとんとしていた。よく見れば、ミケ子はとてもとても美しい少女だった。クロ美が荷物から着替えを出し、ちょっと大きい服を着せてやる。これが猫文明に戻る第一歩なのだ、という意味を込めて。(つづく)

人間とツーショット。


 ◇◇◇◇
  おまけ

 聡太くんが膝に乗りたがる。このクソ暑い真夏だというのに、だ。
 冬なら暖かくて重たくて気持ちいいのは分かる。やはり猫的にはもっと暑いほうがいいのだろうか。
 きのうの夕方あんまり暑いので膝から下ろしたら、またすぐ「どっこいしょ」と戻ってきた。さすがにもういっぺん下ろしたら諦めてふてくされていたが、しばらくしたらまた膝に乗ってきた。我々の業界ではご褒美です……。
 それからきのう買ってきた多肉植物を見てくれ。

パキポディウム白馬城という植物。うつくしい。

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