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きょうの聡太くん 2024/5/17

 きのう聡太くんはずっと奥の物置で1人のんびりしていて、これはご飯どきにならないとこないやつだな……と思っていた。
 しかし夕方くらいになって、聡太くんはのそのそとやってくると、あつ森をやっているわたしの膝によっこいしょと座った。ソファに座っている人間の膝に座るのは毎日だが、床に座っている人間の膝に座るのはかなりのレアなイベントである。
 そのあとも聡太くんはずっと甘えてきた。読書する膝に乗り横になる胴体に乗り、とにかくひたすらべったりと甘えてきた。どうだうらやましかろう。
 どうやら1人でのんびりするのに少し飽きた、というか寂しくなってしまったらしい。寂しいなら最初から部屋の中にいればいいのだ。しかし探検に出かけたい気持ちもあったのだろう。早稲田大学探検部だ。
 なんというか、「あまえたい」と「たんけんしたい」を両方持っているのが、なんんとも猫らしいと思う。
 なおきょうは急に寒くなったので、おそらくストーブの前でぐうたらすることであろう。それもまた猫らしい。

 きのう、人間の夕飯が少し遅くなって、聡太くんの楽しみであるかつおぶしタイムも少し遅れた。聡太くんは眠い顔をしてテーブルの上にいて、ショボボボボ……という顔をしていた。
 食事をしながら、聡太くんに「ちょっと待ってて、いま食べ終わったらかつおぶしあげるからね」と言ったのだが、すぐくれるわけでないのが分かるらしく、大して色めき立ったりする表情はなかった。
 しかしわたしがごちそうさまをしてから「かつおぶし食べるか?」と訊くと、「うううううんっ!」と言って起き上がった。今度こそもらえるとわかるのだ。
 なんてウルトラスーパー賢い猫ちゃんなんだ。空気が読めるのだ。自分の利害に関わることなら人間以上に空気を読むのではあるまいか。
 そしてかつおぶしとササミを食べて満足するころには人間も眠たくなっており、てんでに部屋へ散っていった。寝る支度をして聡太くんを探したが見当たらないので適当にボールを投げたら唐突に暗がりからバッと飛び出してギャリギャリ走っていってビックリしたのだった。

あの……重いんですが……。


 きのうの夜、酔っ払った父氏がなんの意味もなく、母氏の膝にいる聡太くんに「そうくん?」と声をかけた。聡太くんは「にゃ」とちっちゃく鳴いて返事をした。うらやましかったので「そーた?」と声をかけたがこちらを向いただけで「にゃ」とか「ううんっ」などの返事はなかった。
 敬称をつけなかったのがよくなかったのかなあと「聡ちゃん?」と呼んだがやっぱりこっちをちらっと見るだけだった。
 どうやら父氏に返事をしたかったらしい。なんなんだいきみは。
 ムツゴロウさんの本のなかで「犬と人間は違う生き物なので、犬は人間のお父さんを頂点とした群れ構造を作ることはない」という話があったが、犬ですら「おとーさん」が頂点の群れを作らないなら猫にとって「おとーさん」とはなんなのだろうか。
 ご飯をくれるわけでも遊んでくれるわけでもないし、むしろ座っているところからどかされたり臭い毒煙(タバコのことである)を吐き出したりしている「おとーさん」に、猫は敬意を払ったりするのだろうか。
 そのあたりは分からないが毎晩顔をなめにいくらしいので好きではあるのだろう。猫は不思議である。

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