小説『人間きょうふ症』11

 後日、私は先生に現代文の勉強の仕方を教えてもらうことになった。先生は分厚い3冊の参考書とプリントが沢山入っているファイルを机に置いた。
 「勉強すること、そんなに多いんですか…?」
 「こんなにやっても、理解が追いつかなければ受験失敗するだけよ。だから、プリントを作成しました〜!」
 レジュメを手渡しながら言った。一度、目を通してみる。
 「直喩と隠喩の違いについて…」
 文字の操り方が他のものとは異なっていて、字数もそこまで多くなく、スラスラ読みたくなるような気持ちが高ぶった。
 「これらを一通り読み終わったら実践問題を解いてもらいます。多分、佐藤さんなら解けると思う。」
 「問題解けたら、現代文は得意ってことになりますか…?」
 「まぁ得意の一歩手前って言ってもいいんじゃないかな?これから勉強は教えるから、読み終わったら、理解できなかったプリントを見せること。そうすれば、成長すると思います。まだ高校2年の春ですから、早く理解しようとはしなくてもいいです。ただ、一日に20ページは読み進めること。そうすると、7日間で140ページになるから、その中から理解し難かったのを言ってください。それが終わったら改めて学校にきてください。何か質問はある?」
 「…えっと、家じゃなくて学校で読んでおくのはありですか?」
 「あ…え…あ、うん!もちろん。あなたがそれで良ければ、教室は準備しておく。」
 「ありがとうございます!」
 なぜかわからないが、顔が熱くなり、勝手に頬の筋肉が上がって、歯が見えるような顔になった。先生はそんな顔を見て言う。
 「なんか、顔赤くなってきたけど、気分でも悪いの?」
 「え、?そんなことないです。」
 「あら、そう。熱っぽいんじゃない?ちょっとおでこ触らせて?」
 掌が私の額に触れた。どういう訳か、さらに顔は熱くなった気がする。動悸もし始めたかも…。
 「ん…。熱じゃないかな?一旦、家帰ろっか。お母さん呼ぶ?」
 「あ、いえ、私は本当に大丈夫ですので!一人でも帰れます!」
 「そう?んじゃ、帰ってきてから、私のメールの方に無事に帰れたことを知らせてくれる?心配しちゃうから。」
 「わかりました」

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