小説『人間きょうふ症』44

 数日後の夜だった。おやすみの一言を言うために、先生の寝室へ行った。
 「…えぇ。佐藤さんも高瀬さんとお会いできたら、きっと喜びます。明日のお昼頃、伺いますね。」
 私に聞かれないようにするためなのか、掠れた声で先生は電話で話していた。そっと入るのも申し訳ないと思い、ドアから距離をとり、わざとドタドタ、と音を立てながら再び向かった。
 すると、先生はその音に察したのか、携帯電話を彼女自身の後ろに隠した。
 「せんせー、おやすみー。」
 「佐藤さん、今日はちょっとラフな感じなのね。」
 「多分アドレナリン使わなすぎてそれが疲れに変化したんだと思う。」
 「そう、。今夜はしっかり睡眠を摂るのよ。お昼はどっか行くから。」
 「どっかー…?」あくびしながら言った。
 「眠そうだから、明日言うね。」
 「えー…まぁおやすみー。」
 寝室から出ながら言った。何か企んでるはず、そう思った会話だった。

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