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「コロナ危機」下にある、ベルリン暮らし(3)メルケル首相の演説と「緊急事態」

2020年の3月中旬をいま(4月19日)振り返り、ドイツ、ベルリンでのコロナ関連のメディア報道や、私が見聞きした話をまとめています。 

前回のアップから時間が経ってしまいました。。
いくつか、ドイツ、ベルリンの状況をまとめた記事を寄稿させて頂いたので、ご興味ある方はぜひ。

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/71820

https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5e9907b1c5b63639081bf438

あまりに刻一刻と状況が変わるので、あの日は何してたかなーと思い出すのが大変になってきました。たった1ヶ月前だというのに!

●3月14日

フリーランスの芸術家たちを救え!というオンライン署名が回ってくる。3月11日からスタート、発起人はライプチヒを拠点とするカウンター・テナーの方。10万人を目標にスタートしたけど瞬く間に到達して、20万人を超えてる。署名運動の相手は、経済相のオラフ・ショルツだ。

ベルリンではワンマンバスの運転手が感染したくないのでチケットは事前に買って後部から乗ってほしいと抗議。後部入り口のみとなる。

14日は土曜日で、来週から学校も一時閉鎖、店も一部閉まるということで、みんなの関心事は主に「ハムスター買い」こと、買い溜めだ。除菌剤がないのはともかく、トイレットペーパーや小麦粉、イーストも売り切れているのが謎。パン屋もスーパーも開いているのに。

世界保険機関(WHO)が安倍晋三首相を称賛したというニュースを読む。WHOに日本から1億5500万ドル出したという話も。
オリンピックはまだ2020年の夏に開催される予定、、、をしているようだ。

イタリアは絶対外に出るな!という厳しい外出禁止が続いているが、バルコニーコンサートなんかが行われているらしい。イタリア人のタンバリン所有率の高さに驚く。

この日、ポーランドがドイツとの国境を閉めると決めた(日曜夜から、外国人のみ移動不可)ため、ポーランドからドイツにFlixbusで入国しようとしていた知人から、バスが来ず、列車に切り替えたとの連絡。

●3月15日
50人以上の集会が不可に。 居酒屋、クラブ、映画館、ゲームセンターや賭博場、メッセなどが閉まることになる。宗教施設、教会やモスク、シナゴーグも同じく。数日前からの微熱と喉の痛み。スイス帰国後14日の自主隔離生活はまだ続く。自炊しか楽しみがないので、本日はラーメン。味玉が上手にできる。

ドイツは、明日月曜日からフランス、オーストリア、スイス、ルクセンブルク 、デンマークの5カ国との国境を閉めることを発表。ドイツ人が帰ってくるのはあり、荷物もあり、国境超えの通勤など、理由があれば行き来も許されるとのこと。

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●3月16日(月)
ベルリンでも、18日(水)からより厳しい店舗営業などの制限が始まるらしい。
スーパーマーケットなどの食料品と動物の餌を扱う店、薬局とドラッグストア、銀行、ガソリンスタンド、キオスク、クリーニング屋、郵便局、美容室、DIYショップ以外は閉店。
レストランは朝6時から18時までしか開店できなくなるそう。夜営業のみの店が、こぞってランチを始めるとの連絡。
ホテルは、出張以外の、観光目的の宿泊も許されなくなる。
EU以外の市民は、ドイツ入国も30日できなくなると発表。
街から観光客の姿が消えている。
文具のセレクトショップを経営する知人が、観光客がいなくて売り上げが激減。人件費を減らすためにも店を早めに閉店し、オンラインショップのみに切り替えるとの連絡。レストランなどは3月頭から予約が次々キャンセルになり、厳しい状況で今後経済支援が必要な状況だとの報道。

●3月17日(火)
ドイツの感染者数は9362名。死者は26名。
(NRW州が3375名、BW州が1641名、バイエルン1352名、ベルリンは383名。州によってコロナ感染拡大対策に、かなりの温度差があるのには理由がある)
日本に帰国するために、ドレスデンからベルリンに知人がやってきた。
しかし、予約していたホテルにチェックインしようとしたところで「観光客は泊められない」と宿泊拒否をされたらしい。予約してたのに?事前連絡もなし、しかも代わりのホテルを提案するでもない(電話を貸すから自分でやれという態度だったらしい)。
私からホテルに電話して「明日、予定を繰り上げて日本に帰国しなければならない人なんです。旅行者がダメということでも、一泊くらい融通をきかせてくれないですか?」と言ったら
「これは、私たちメルケル首相が決めたことなんだ」「私たちを刑務所に入れたいのか!」と怒鳴られる。                   ホテルのレセプションの「このもののわかってない外国人にドイツの状況を教えてやらないと」的な対応にカチンと来たが、これ以上問答してもしょうがないと電話を切る。(「私たちの」「私たちが」と、おまえらはそとの人(外国人)だけど、私たちはなあ、と殊更に強調して説教されると、かなりモヤモヤする。。。)                         

ベルリン観光局で働く知り合いにダメもとで電話をかけてみたら、リモートで仕事中だったので相談してみたところ、そもそも水曜日から施行される「観光目的の宿泊はNG」というこの取り決めも、法律ではないので采配はホテル側に任されているという。
「ビジネス目的である」となにか証明できれば大丈夫、とのアドバイス。
無事ビジネス客として、一筆書いて宿泊が可能に。
場所によっては、特に問題なく宿泊ができ(そもそもツーリスト不可のお達しの施行は明日からだったのだが……)
宿泊予約サイトbooking.comやhotels.com などの当日予約は可能だったとのこと。(その後、サイト上に、オンライン予約はできてもホテルに現状を確認しなさい、との断り書きが出るようになった)

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●3月18日
感染者の数が、1万人を超えた。
ドイツの感染者数は12329名。死者は28名。感染者数が二倍に増える速度は2,5日。
メルケル首相が、18:30からテレビ演説
メルケルは15年間に及ぶ任期の中で、新年以外に国民に向けてのスピーチを行ったことがない。何が発表されるのか。

>>この演説から1ヶ月ほど経ったいま、その後の動き(3月23日に出た接触制限、外出制限)なども合わせてもう一度見直して見ると、この演説では「民主主義」が強調されているなあと思う。
ドイツの基本法に定められている基本的人権、様々な自由を奪わざるをえない状況にあることを理解してもらい、聞く人に、連帯と常識に訴えかけようとしている。
1919年に制定され当時、世界でも最も民主的な憲法とも言われていた「ワイマール憲法」だったが、1933年1月ヒトラーが政権を取ると、その後「非常事態権限」を悪用、濫用し、基本的人権(個人の自由、言論の自由、集会の自由など)を制限し、ナチスによる権力の掌握を許してしまった。

参照:ナチス政権を生んだ緊急事態条項

西ドイツ(そして現在のドイツ)には1968年からNotstandsgesetze(緊急事態法)があるが、今もそれに対する嫌悪感や猜疑心は強いように思える。
今回の状況を皆がきちんと理解して、何が一番効果的なのかをそれぞれが考えて行動すれば、強制的な外出禁止などの厳しい措置を取らなくても済む(かつ強い反発を生まない) ー という考えがあったのではないだろうか。
(私はこの辺は全く専門ではないので、推測の域を出ないが)

実際、ここ数日(4月19日現在)アメリカのトランプ大統領は「解放しろ」と、(反トランプの)州知事による外出制限への抗議行動を煽っている

ベルリンにも、いま、そんな動きがある。
「Kommunikationsstelle Demokratischer Widerstand 通信室:民主的な抵抗」が率いる「Nicht ohne uns(わたしたちなしでは)」だ。4月4日から、毎週土曜日に、ミッテ地区のローザ・ルクセンブルク広場に集まり、集会の自由を訴える。
そのデモの映像を見て、ん??とひっかかった。
「WIR SIND DAS VOLK(我々こそは人民だ!)」という、呼びかけが行われていたからだ。もともとは、東ドイツの民主化運動、平和革命での呼びかけだったこの言葉は、PEGIDAという極右グループに利用されている。

ペギーダ については過去ブログをご参照ください:
ペギーダってなんだ? ペギーダの成り立ちを振り返る。(2016年3月)

このデモの中心にいるのは、元ベルリン・ブランデンブルク放送のレポーターKen Jebsen。2011年に「ホロコーストをPRだ」といって首になった人物だそうだが、彼以外にも、いわゆる「オルタナティブ・メディア」(極右、右派ポピュリストたちがいうところの、既存媒体(嘘つきプレス。日本語でいうならマスゴミ、となるのか?)ではない、メディア)や右派ポピュリスト政党AfDのYouTuberなんかも来ていたという。デモの中には、現在の外出禁止、行動の自由を奪う措置が法律に抵触するのではー今後の政府の権力を強めてしまうのではーという懸念を持つ、緑の党や左翼党の人などもまじっていたというから、今回のデモのテーマの幅広さを感じて興味深いところ。

詳しくは、tazの4月12日の記事(ドイツ語)をどうぞ。
この国を憂う「愛国者」たち最初はドイツ基本法を手に、ドイツ国歌を歌おうとしていたらしいが、歌詞が分からず「WIR SIND DAS VOLK(我々こそは人民だ!)」になったらしい(苦笑)

思い起こして色々書いていたら、長くなってしまいました。
3月23日の接触制限・外出制限まで辿り着けず。。。。

続きます。


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