「会社のため」とは何か 映画「7つの会議」

組織というのは不正が起こるもの。これは古今東西変わらない。子どもの頃は、会社は巨大なお化けのようなもので、不正は全社で行うもの、しっかりしている会社からはホコリなど出てこないというイメージがあった。しかし、大企業であればあるほど、優秀な人から普通の人まで何十万人という人が少しずつ歯車を回して動かしているものだというのが実態である。中には善人ばかりではなく、押しに弱い人、上司の顔色ばかり伺う人、とにかくお金が欲しい人、色んな人がいるものだ。

我が国でもリコール隠しや製品の品質不正など、様々な不正が定期的に発覚してきた。個人による経費の使い込みなどは別にして、組織ぐるみとされる不正には、始めた人に何の利益ももたらさないケースが非常に多いようだ。多くの場合、目標達成のため、仕事を終わらせるため、上司にいい顔をするため、など出来心としか言えないようなきっかけで始まる。これは我が国の不正の特徴らしい。

我が国には、自分に利益をもたらすことは不正として厳しい目を向ける人が多数なのに対して、自分が損することは会社のための行動として良しとする風潮がないだろうか。私からすれば、どちらも不正である。近々開催予定の世界的なスポーツイベントの関係者が「スタッフがサービス残業をしている」と堂々と言及して話題になった。サービス残業が問題視されてからかなりの時間が立つのに、解決している雰囲気がないのは、「会社のため」を履き違えている人が多いためではないだろうか。

さて、本映画は、我が国の製造業における品質不正を題材としている。内容はネタバレになるため割愛するが、野村萬斎さんが最後に独白するシーンは、製造業勤務の方は特に必見である。また、野村萬斎さんの脇を固めるのは池井戸ドラマでおなじみの面々ばかり。内容もこれぞ池井戸作品という趣きで、自分にハマるかどうかは見る前から容易に想像できる作品。私は池井戸作品のファンなので、既視感があってもなお面白かった。

本作は不正が発覚すると、いかに大問題になるかを示している。やはり不正は会社のためにはならないのである。我が国の企業で働き続けることを誓う者として、不正撲滅のために考えていることを記したい。あなたが思う「会社のため」は、本当に会社のためですか?会社は本当にそんなことを望んでいますか?ありもしない忖度をしていませんか?自分だけ苦労すればいいといいますが、あなたが上司になった時に、部下にどう説明しますか?不正を進んでやりたがる人は極めて少数派だと信じているが、空気の読み違いなどの些細なきっかけで、誰でも起こしてしまう可能性がある。そんな空気は即刻直さなければならない。周囲から煙たがられても、正しいと信じることをやっていきたいし、その方が精神衛生上健全だと思っている。

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