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熱狂の背景 清水大吾著「資本主義の中心で資本主義を変える」

みなさんはゴールドマン・サックスという企業についてどんな印象をお持ちだろうか。超エリートで高年収、生き馬の目を抜く、超激務など、いわゆる「資本主義の権化」的なイメージをお持ちかもしれない。それは正しい面もあるのかもしれないが、私は仕事の中で、それなりの数の現・旧ゴールドマン・サックスの方とお会いすることがあった。その印象としては、当たり前ながら、彼らも血の通った人間だった。中でも、本書の著者である清水氏のセミナーには何度も参加し、直接声を聞いてきた。彼のセミナーは面白く、信念

    • 座右の書 アンドリュー・S・グローブ著「HIGH OUTPUT MANAGEMENT」

      皆さんには、座右の書と呼べる本はあるだろうか。私にもいくつか候補になりそうな本があるが、当面はマネジメント手法に悩んでいる40手前で巡り合った本書、『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』を座右の書としようと思っている。 本書はタイトルの通り、よりアウトプットを高めるためのマネージメント手法を世界に冠たる半導体メーカーであるIntelの中興の祖、グローブ氏が書き下ろした渾身の一冊である。 ここで皆さんに問いたい。マネージメントとは何のために行うのか。その答えは人に

      • 飽食の国、日本の課題は飢餓の克服 徳成 旨亮著「CFO思考」

        我が国の生活水準は高い。どこに行っても清潔で、物価も安い。ワンコインでもそれなりの質の食事ができる。多くの人が政治や社会に愚痴をこぼすけれど、心の底では日本が好きだ(と私は信じている)。 しかし、今は多くの人が将来不安を抱えていることは否定できない。国が多額の借金を背負い、少子高齢化が進み、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」だった時代から、一人当たりGDPをはじめとする多くの指標で上位から転落しつつある。そうした背景を受け、メディアは悲観一色。将来は今よりいい時代など待ってい

        • 荷物のおろし方 岸見一郎、古賀史健著「嫌われる勇気」

           インパクトの強いタイトルと、目を引く青の表紙。本好きの方に、本書を目にしたことのない方はいないだろう。世の成功者の多くが「他人の目など気にせず、自分の好きなように生きろ」と言ってくる。しかし、どうしても人の目は気になる。特に身近な人には好かれたい。そんな自分を変えるヒントが得られれば、と本書を手に取った。  本書は300ページ近いページ数があるが、哲人と悩みを持つ青年の二人が議論する形式で書かれ、その議論を通してアドラーの思想を学べるようになっており、ページ数ほどの負担感

        熱狂の背景 清水大吾著「資本主義の中心で資本主義を変える」

        • 座右の書 アンドリュー・S・グローブ著「HIGH OUTPUT MANAGEMENT」

        • 飽食の国、日本の課題は飢餓の克服 徳成 旨亮著「CFO思考」

        • 荷物のおろし方 岸見一郎、古賀史健著「嫌われる勇気」

          試行錯誤中のマネージャー必読 櫻田 毅著『管理職1年目の教科書 外資系マネジャーが絶対にやらない36のルール』

           多くの新米マネジャーが「自分なりのマネジメントスタイル」の確立に悩んでいることだろう。私もその一人。この世の全てのことに個々人の向き不向きはあり、生まれつきのカリスマは存在する。スティーブ・ジョブズ氏や孫正義氏、最近だと大谷翔平選手。こんな人たちは、放っておいても人がついてくるように見えるし、自分はこうはなれないなと諦念をも持つ。確かに数万人を束ねるような組織のトップになるには、カリスマ性が必要かもしれない。私にはそれはないので、大企業のトップにはなれないし、なるべきではな

          試行錯誤中のマネージャー必読 櫻田 毅著『管理職1年目の教科書 外資系マネジャーが絶対にやらない36のルール』

          大企業の憂鬱 クレイトン・クリステンセン著 「イノベーションのジレンマ」

           本書は経営学の本としてはかなり有名である。タイトルを聞いたことがある方も多いだろう。その反面、内容を知っている人は少ないのではないか。私もそうだった。しかし、私が勤めていた会社の当時の社長が座右の書として本書を挙げており、試しに読んでみることにした。  アメリカの製造業に日本企業が、日本企業に韓国企業が、韓国企業に中国企業が、キャッチアップするといういつか来た道を繰り返している。なぜ世界に冠たる存在となった優良企業が“破壊的イノベーション”の前に窮地に立たされるのか、その

          大企業の憂鬱 クレイトン・クリステンセン著 「イノベーションのジレンマ」

          ゲームチェンジの時代 加藤守和著「『日本版ジョブ型』時代のキャリア戦略 38歳までに身につけたい働き方のかたち」

          今年も会社で年間目標を立てる時期が来た。そのアナウンスとともに上司からオススメされたのが本書。典型的な日本企業であった 弊社も世間の流れに沿って、終身雇用・年功序列型の旧来の人事体系から、成果主義色の濃いジョブ型の人事体系へ変化しようとしている。そうした中で、上司としてはジョブ型とはなんぞや?を伝えるためにオススメしたのだろうが、あと半年足らずで39歳になる私にとっては胸に刺さるタイトルであり、読むことにした。 要旨を一言で言えば、「自分のキャリアに意志と覚悟を持て」という

          ゲームチェンジの時代 加藤守和著「『日本版ジョブ型』時代のキャリア戦略 38歳までに身につけたい働き方のかたち」

          中小企業診断士試験 合格体験記 〜会計知識を持つ社会人の場合〜④(総括)

          6.総括・この試験は2次の筆記試験が掴みどころなく、経営理論のエキスパートならば超短期で受かるというような簡単なものでもないように思う。しかし、事例Ⅳだけは財務・会計のエキスパートならば過去問を解いて、試験に慣れることで、高得点が見込める。また、事例Ⅰ~Ⅲはそれなりに知識は必要だが、1次試験ほど細かい知識は必要ではなく、それよりもわかりやすい日本語を書く能力が問われる。そのため、普段から文書を作成し、上司や先輩から手直しを受ける経験を積んでいる社会人ならば、財務・会計の知識が

          中小企業診断士試験 合格体験記 〜会計知識を持つ社会人の場合〜④(総括)

          中小企業診断士試験 合格体験記 〜会計知識を持つ社会人の場合〜③(2次試験)

          (2)2次試験 ※“”内は略称。正式名称は本タイトル①参照 ①勉強開始前にやったこと ・自己採点の結果、ぎりぎり合格点だったので、慌てて2次試験の情報収集を始めた。 ・”一発道場”を見て、過去問を解いて”ふぞろい”で自己採点するのがベーシックな学習方法であること、細かい知識は1次試験ほど問われないこと、丁寧にPDCAを回しながら過去問を解くことが重要であること、中小企業診断士試験ならではの解答フォーマットがあること、沼にはまるとなかなか受からなくなること、などを理解した。

          中小企業診断士試験 合格体験記 〜会計知識を持つ社会人の場合〜③(2次試験)

          中小企業診断士試験 合格体験記 〜会計知識を持つ社会人の場合〜②(1次試験)

          5.各科目の具体的な学習方法と学習時間、結果と感想(1)1次試験 ※“”内は略称。正式名称は本タイトル①参照 ①科目別の勉強開始前 ・中小企業診断士試験の全体像把握:”非常識”通読 ・一次試験で必要となる知識の全体像把握:”はじめの一歩”を通読(1時間) ・計画立案:1次試験の範囲の広さから、一発合格は難しいと考え、2年計画での合格を計画。受験科目の6科目のうち、財務・会計は素養があるため勉強不要と判断。残りの5科目のうち、初年度は1次試験のみ必要な科目をパスしようと考え

          中小企業診断士試験 合格体験記 〜会計知識を持つ社会人の場合〜②(1次試験)

          中小企業診断士試験 合格体験記 〜会計知識を持つ社会人の場合〜①(概要)

           私は令和4年度の中小企業診断士試験に最終合格した。いろんな幸運もあり、世間的にはかなりの短期合格の部類だろう。受かった試験はどうしても時が経つと”簡単だった”と思ってしまうものなので、なるべく記憶がフレッシュなうちに記録に残しておきたく、合格体験記を書くことにした。中小企業診断士をめざす方に、この合格体験記が何らかの参考になれば、幸いである。※全4編 1.年齢・家族構成・最終学歴・これまでのキャリア(1)年齢・家族構成 38歳、妻と息子二人 (2)最終学歴とこれまでの

          中小企業診断士試験 合格体験記 〜会計知識を持つ社会人の場合〜①(概要)

          健康第一 石原新菜著「眠れなくなるほど面白い免疫力の話」

           昨年末、遂に新型コロナウイルスに感染してしまった。あと2日で仕事納めという歳の瀬の最中のことだった。年末年始は一人で布団で過ごすという、人生でもトップクラスで碌でもない年末年始を強いられた。改めて楽しい人生は心身の健康に支えられていることを思い知らされる、情けない経験となった。  私は毎年年初に、その年に達成したいことを70個くらい書き出している。もう体調不良にはなりたくないということで、「免疫について学ぶ」ことをそのリストの上位に置いた。そこで、早速書店で手に取ったのが

          健康第一 石原新菜著「眠れなくなるほど面白い免疫力の話」

          自分を貫く強さは美 映画「ケイコ 目を澄ませて」

          私は滅多に映画館に足を運ばない。“タイパ”という言葉が流行るはるか前から、映画は家で倍速で観ることがほとんどだった。観ることが目的化しているのではと問われると、強く言い返せない。妻や子どもから誘われて観に行くことはあっても、自発的に観に行ったのは、振り返ると周防正行監督の「それでもボクはやってない」以来かもしれない。 そんな私がこの度一人で映画を見に行くことにした。それは、三宅唱監督のファンだからである。本作もいずれサブスクで見れるかもしれないが、身銭を切って観ないとファン

          自分を貫く強さは美 映画「ケイコ 目を澄ませて」

          幸せな長寿大国に 映画「老後の資金がありません!」

          世界一の長寿大国である我が国。本来それは喜ばしいことだ。しかし、いつまで生きるかわからないために、老後の資金がどれだけ必要かわからず、長生きがリスク化しつつある。正に不都合な現実である。 老後を迎える前に仕事は岐路を迎え、親の介護、子どもの就職、結婚などのビッグイベントが重なり、青写真通りに貯蓄ができない。こんな人は多いだろうが、考えても解決策が見えないから、考えるのもやめず、ずるずる老後へ向かってしまう。 本作はそんな日本の苦悩する中高年の姿を描いた映画である。暗いテー

          幸せな長寿大国に 映画「老後の資金がありません!」

          “小金”ではなく“富”を築く不滅の原則 ジョージ・S・クレイソン著 「バビロンの大富豪」

          冒頭からアンコンシャス・バイアスな物言いで申し訳ないのだが、我が国は0か1かでものを考え、答えらしきものを見つけると、そちらに全振りする人が多いと思う。先日のワールドカップでも「日本代表を応援するぞ!」と日本中が応援一色になったのも同じかもしれない。一度方向性が固まれば一致団結する。そんな日本が大好きだ。 しかし、ビジネスや資産形成など、お金に絡む話では、およそこのような考え方はよくない。世の中に0も1もほとんどなく、大抵のことは0.2だったり、0.5だったり、0.7だった

          “小金”ではなく“富”を築く不滅の原則 ジョージ・S・クレイソン著 「バビロンの大富豪」

          不朽の名作 映画「フォレスト・ガンプ/一期一会」

          子どもの時に、初めて「全米が泣いた」的なCMで強い印象を持ったのが本作。どんな話かもわからないまま、当時からとても気になっていたが、いよいよ見てみることにした。 30年の時を経て、本作は知能が低いけれども体が強く、一途で誠実な「フォレスト・ガンプ」の人生を描いた映画であることがようやくわかった。知能の低さゆえに時に周囲にののしられることもあるが、ただただ誠実に周囲の人々を大事にしながら生き、知らず知らずのうちに周囲に影響を及ぼすフォレスト・ガンプの生きざまには、見終わった後

          不朽の名作 映画「フォレスト・ガンプ/一期一会」