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HONDAの組織開発実践事例が凄い!

組織開発の実践者を我々は“ジッセンジャー”と呼んでいます。そんなジッセンジャーの実践内容を共有し、自身の実践に役立てる、そんな勉強会を定期的に開催しております。今回は、そんな勉強会の中で共有された本田技研工業株式会社での組織支援実践事例をご紹介します。

共有されたホンダさんの事例


「これができたら、みんなもっと喜ぶだろうな」これは、Honda創業者の本田宗一郎の想いであり、それは今につながっています。 本田技研工業株式会社にはHondaフィロソフィーという“人間尊重と三つの喜び”から成る基本理念と、“社是”“運営方針”で構成される基本的な考え方がある。Hondaで働く従業員一人ひとりの価値観として共有されているだけでなく、行動や判断の基準となっており、企業活動の基礎となっている。人間尊重は以下の3点で構成されている。・自立自立とは、既成概念にとらわれず自由に発想し、自らの信念にもとづき主体性を持って行動し、その結果について責任を持つことです。・平等平等とは、お互いに個人の違いを認め合い尊重することです。また、意欲のある人には個人の属性(国籍、性別、学歴など)にかかわりなく、等しく機会が与えられることでもあります。・信頼信頼とは、一人ひとりがお互いを認めあい、足らざるところを補いあい、誠意を尽くして自らの役割を果たすことから生まれます。Hondaは、ともに働く一人ひとりが常にお互いを信頼しあえる関係でありたいと考えます。

そうした中、2016年の従業員への意識調査結果において、「チャレンジ精神」や「満足度」、そして「個人の尊重」といった項目のポイントが低下していた。

「個人の尊重」は“Hondaらしさ”に関わる重要な項目であり、人事部はもっと現場を知り、この状況の中で何ができるのかを考えなければ!と奮起した。
2017年、担当者の熱意により開始した組織開発活動は、20年度になり組織開発から組織支援へと名称を変更し(組織のマネジメントに寄り添い、人事部門がパートナーとして組織運営を支援していくこと)現在の形になってきた。具体的に、どのように進めてきたのかを紹介する。

2017年の開始当初は、全部長・室長への「ワークショップ」を演習形式で実施した。その中で、受講者自らが自組織の課題把握から実践へとつなげていくようにできればと考えていたが、現場が抱える課題はさまざまで、具体的に支援をして欲しいという声があった。「研修だけでは解決できない問題」が見えてきたのだ。

今必要なことはもっと現場に伴走して、課題に向き合う必要性があるという結論から、現場に寄り添う人側面に焦点を当てた組織支援を取り組み始めた。

現場の部長自らが手を挙げて人事部門とともに取り組みを開始した事例では、ビジョンの落とし込みを目的としたワークショップを実施。部員全員が集まり、自らを見つめ、意見を出し合い、他者との違いを理解し認めるという場づくりを実施。部員同士のなかで、自部門に対する共通認識がより必要であるという意識が部員全体に生まれる結果となった。

一方で、人事部から組織の問題を確認し、現場に対して活動の提案をした際には以下の様な実践を阻む壁が現れた。
「なぜ、組織支援が必要なの?」
「何をしてくれるのか?」
「本当に問題なのか?」
「誰がやってくれるのか?」
「続けるにはどうすればいいか?」という言葉が出てきた。

新しい施策を始める場合、元々の風土や背景から、現場からの反発や関心が低く取り合ってもらえない。これは実践者が経験することであり、Hondaであっても例外ではない。

 組織開発を現場で進めるには、マネジメント層の施策への納得と協力が不可欠だ。より理解共感を生むために、過去の経験を体系化・メソッド化した冊子やツールを2021年4月に作成した。導入編として通称“赤本“、実践編として通称”青本“、そして、関係性に特化した現状把握のサーベイとして通称”緑本“があり、現場の主体者の共感を得て、武器となるパッケージを目指した。
 導入編の赤本では、マネジメント環境が従来よりも難しくなっている現状を、「技術的問題」と「適応課題」に分けて考えることの必要性や、現場のマネジメント層が抱える悩みは、「適応課題」に類するものが多く、これまでの手法や考え方が通用しにくい状況を理解できるよう構成した。そのうえで、職場へのアプローチには、“関係性のマネジメント“が重要であることを解説している。
“関係性のマネジメント”とは、『観察(事実を知る)・推測(自らの考えのクセを知る)・仮説(相手の目線も含む)から、自らの行動をメンバーに適用させていくこと』と定義している。ダニエルキム教授が提唱する組織の好循環モデルをベースとして、Hondaらしく「関係の質」に着目することに主眼を置いた。

日常行動の実践支援としての青本には、Honda社内の組織開発の実例を掲載している。人事部門がマネジメント層の壁打ち相手となることや、直截伴走役として前述のワークショップを実施する場合などを記載している。

実践を通して立ち返ると、組織が変わる主体者は現場であり人事ではない。
人事から見た問題を受け入れ、施策を実施するのではなく、現場発で『やってみたい、できるそうだ』といった想いを引き出す支援をすることが重要である。

今後の方向性として、人事部門の介入を必要とする組織への支援を行う場合と、上述のツールを確実に浸透させていくため、実務として職位を担っている層などを対象に限定して内容の解説や配布を行っていく。今まさに直面している現場のマネジメント層が、主体的に動きたくなるか、そこを支援できるかが成功のカギであると認識しており、既に紹介をした方からは好評を頂いていることもある。現場の声や想いを大切にしながら、着実にこの取組みを全社で進展させていきたい。

ジッセンジャーでの討議内容


 この発表を受け、ジッセンジャーな中では「技術的問題」と「適応課題」の違いをマネジメント層がしっかり認識することが大切なのではとの話になり、自分自身の「適応課題」の経験を語り合った。ちなみに、ロナルド・A・ハイフェッツ著 『最難関のリーダーシップ』の中で、「技術的問題」は、既に解決策がわかっている・既存の知識で実行可能・知識や技術を適切に使うことによって解決できる・高度な専門知識や技術を持った人(権威のある)によって解決できる・問題は自分の外側にある。「適応課題」は、未知の状況で解決法がわかっていない・既存の解決策がない(既存の思考様式では解決できない)・既存の思考様式を変えて、行動を変える必要がある・関連する人々との探求と学習が必用・問題の当事者である(本人がシステムの一部)と定義されている。
 また、ホンダの実践事例に対し、「ここまでマネジメント層に寄り添った施策は素晴らしい」「ホンダのフィロソフィーを体現してほしい!」「ホンダの成功事例を他社に広めてほしい」といった感想も共有された。

まとめ


 今回はホンダのジッセンジャーによる実践報告をベースに、ダイアローグを重ねた。組織開発を進めるにあたっては、様々な壁が現れる。その際に必要なのは、実践者の思考と行動の柔軟性である。この柔軟性を鍛えるべく、我々ジッセンジャーの学びの場は続く!

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文責:Tao(田岡英明)

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