下北沢とアマレット
10年くらい前、下北沢は憧れの場所だった。
とにかくおしゃれ。
街行く人も、古着屋さんも、カフェも、劇場も、ヴィレヴァンも、ライブハウスも。
サブカル=おしゃれの思考を持った大学生のわたしの憧れの地。
服のセンスなんて皆無だし、古着は苦手だけれど、とにかく下北沢で服を買うことに憧れた。
下北沢にはおしゃれなカフェもたくさんあると思っていた。
ライブハウスはいろいろ行った。
サーキットイベントなんかであちこちのライブハウスを回ったことも何度もあった。なんなら手伝いをしたこともあった。
すきなバンドが打ち上げによく使ってたお店に行った時の聖地感、朝まで餃子の王将にいることの憧れなんかも。
欲しいものがなくてもヴィレヴァンには寄ってみた。後にモテキの映画で長澤まさみと森山未來が待ち合わせするシーンなんかは特に印象的だった。
劇団に興味はないけどなんとなく知らない劇団の公演を見たこともあるし、そういえば大学の映画サークルの先輩が撮った映画を下北沢で観たこともあった。
兎にも角にも、わたしにとって下北沢は手を伸ばしても届かないけどいつでも行くことはできる憧れの場所だった。
下北沢に住んでる友達を羨ましく思ったし、その子の家に泊まった翌朝や朝まで打ち上げに参加した後の早朝の下北沢の街を歩くのがなんだかかっこいい気がしていた。
そしてもう何年ぶりかわからないけど、久しぶりにライブで下北沢を訪れた。
駅はとっても綺麗に変わったけれど、街を歩いたら当時のことをそれはそれはどんどん思い出す。自分でも驚くほどこんなに?!ってくらいに。
だいたいはライブ関係の思い出だけど、友達と入ったカフェやなんの集まりか忘れたけど飲み屋を探してた時のあの居酒屋とか。
そしてあんなに下北沢に来ていたけど初めて行くライブハウスのドリンクで頼んだのはアマレットジンジャー。
アマレットというお酒はすきなバンド(THE NOVEMBERS)の曲名で知って、下北沢でよくライブをしてたそのバンドを観に行くとアマレットを頼んだ。
ドリンクメニューを観ながら、カクテルはライブハウスで飲むばかりで居酒屋で飲むことはほとんどなく、こうやってお酒を少しずつ知っていったなと思いだしたりしながら。
後ろに並んでた人もアマレットジンジャーを頼んでいて、見掛けるとつい頼みたくなりますよね、と世間話をしたりもした。
そして、今日のライブはそのバンドのボーカルソロと別のバンド(Ropes、このバンドは大人になってからすきになったバンド)の2マンイベントで。久しぶりに飲むアマレットは甘くて懐かしかった。
約2時間半のライブはとてもとても贅沢な時間だった。
そして下北沢は今でもわたしにとっては憧れの場所で、何度訪れてもいつでも他所者の気分で、知ったかぶりをしたくなるような、だからなのかそわそわしてしまう場所に変わりはなかった。
22時前に電車に乗ろうと駅へ向かうと、きれいに変わった駅前でも、昔と変わらずにギターを持った人やパフォーマンスをする人なんかがたくさん居て、やっぱり下北沢はおしゃれ!と思わせてくれた。
下北沢は憧れのまま、ずっと憧れていたい街だ。
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