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時間の進む速さの比較

東大寺の修二会「十一面悔過法」

【時間の進む速さの比較 1】
東大寺の修二会には、実忠なる東大寺の僧が笠置山で修行中に竜穴から天界の一つである兜率天に至り、そこで目にした法要「十一面悔過法」を東大寺でも行いたいと願い出たのが起源と伝わる。


【時間の進む速さの比較 2】
しかし天人の一人から、「兜率天の一日はそちらの400年に当たるので到底追いつかない」と指摘される。
そこで実忠は、「ならば、少しでも兜率天に合わせるように走って行い差を埋めます」と答えたそう。


兜率天ってどうなってる?

【時間の進む速さの比較 3】
これがしっかりと法要に反映されて現在まで1200年以上も続いているのだから面白い。
ところで兜率天の自転周期は400年。金星ですら‐243日だってのに、兜率天時間では実忠が帰ってから4日も経ってないのか…。実に悠長。ざっくり昼が200年、そのあと夜が200年。

【時間の進む速さの比較 4】
生態系も実に悠長。代謝もとてもゆっくりそう。
というわけでもなさそうだ。
実忠が法要を持ち帰ったからには、少なくとも法要をある程度は見て、教わってきたはずなのだ。


【時間の進む速さの比較 5】
それは天人と意思疎通が図れたということ。天人が殊更スロウリィというわけではない。
兜率天時間が著された時代に、惑星ごとの自転周期なんて恐らく想定にないだろう。これは時間の流れる速さが違うと考えた方が自然だし、何よりロマンがある

【時間の進む速さの比較 5(余談1)】
兜率天人の身長は2里。この「里」の距離が何mなのか不明だけど、恐らく一寸法師やガリバーもびっくりのスケール差だろう。よく意思疎通できたなあ。やっぱり神通力だろうか。

【時間の進む速さの比較 5(余談2)】
ちなみに兜率天人の寿命は兜率天時間で4000歳だそう。換算すると5億8千4百万歳。やっぱり悠長。地球では大陸の離合集散が何回か起こる時間。


時間の遅れ

【時間の進む速さの比較 6】
時間の進み方が違うという発想は古くは浦島太郎を始め、リップ・ヴァン・ウィンクル、SFではウラシマ効果としてお馴染みのギミック。異世界召喚されて、戻ってきたら全く時間が経っていなかったなんてこともあるだろう。

【時間の進む速さの比較 7】
比熱や比強度と同じように、比時間なるものが存在するのだ。相対性理論だってそう謂ってる。


本家、兜率天での十一面悔過法の所要時間は?

【時間の進む速さの比較 8】
十一面悔過法は長時間に及ぶ。東大寺の修二会では14日間に渡って修められる。東大寺で急いで14日間。兜率天では一体どれほどの時間を掛けていたのだろうか。

【時間の進む速さの比較 9】
走ることを始め、諸々工夫して半分に所要時間を縮めたとすると兜率天では28日間(地球時間)の法要となる。
実忠が兜率天で一月、「十一面悔過法」を学んで帰ったなら、経過時間は約18秒。これが14万6千倍の比率


他の場所では? ――六欲天と八大地獄

【時間の進む速さの比較 10】
押し広げて、他の場所ではどうだろうか。兜率天は仏教の欲界に属する天界の一つ。他にも五つ、合わせて六欲天。それぞれが兜率天同様、時間の進み方が違うようだ。また、八大地獄も同様であった。


【時間の進む速さの比較 10(余談1)】
四天王の住む六欲天の第一天、四大王衆天は天界で最下に位置する。
これが強さに対応したら仏教全天界中、四天王が最弱。

【時間の進む速さの比較 10(余談2)】
また、第六天・他化自在天には修行を妨げる魔縁・波旬が住むと謂う。
第六天に住む魔縁の王だから第六天魔王。第六天魔王波旬、通称は天魔。


時間倍率、計算してみた

【時間の進む速さの比較 11】
ここから時間に関する記述を抽出して時間倍率を算出した。
但し、一年は365日リップ・ヴァン・ウィンクル(一晩で20年)の一晩は半日龍宮(3日で25年)ナルニア(一月で数時間)の数時間は3時間とした。

時間倍率の比較l2

【時間の進む速さの比較 12】
また、阿鼻地獄は記述が2種類あった為、それぞれを計算。
最初はグラフを作るだけのつもりだったのに、説明するとなると実に長い。
横軸は倍率で対数グラフなのに注意。

【時間の進む速さの比較 13】
それぞれの場所で一定期間過ごした時の経過時間も計算した。

ナルニアで一日 → 360秒
精神と時の部屋で一日 → 237秒
アクセルワールドで一日 → 86秒

【時間の進む速さの比較 14】
四大王衆天で一月 → 142秒
忉利天で一月 → 71秒
夜摩天で一月 → 35秒
兜率天の一月 → 18秒
化楽天で一月 → 9秒
他化自在天で一月 → 4秒

【時間の進む速さの比較 15】
等活地獄で千年 → 9秒
黒縄地獄で千年 → 2秒
衆合地獄で5千年 → 3秒
叫喚地獄で10万年 → 15秒
大叫喚地獄で100万年 → 37秒
焦熱地獄で100万年 → 9秒
大焦熱地獄で1000万年 → 23秒
阿鼻地獄で1000万年 → 6秒、4秒

【時間の進む速さの比較 16】
うん。地獄凄い。大体人間が一生分過ごしても1秒も経ってない。六欲天でも十分凄い。溜まった仕事も疲労も、積んだ本もゲームも片付けて余りある。忙しい現代人には需要高そう。但し寿命と引き換えに

【時間の進む速さの比較 17】
生産業は時間圧縮のメリットが凄い。農業も工業も醸造も放射性廃棄物の処理も!
ブラック企業も勤務時間ごまかせそう。計算機の計算時間を実質加速させて悪巧みも。とにかく職場が地獄の人は気を付けよう

【時間の進む速さの比較 17(余談)】
ところで小野篁は昼間は朝廷、夜は地獄の閻魔庁で閻魔の補佐官として働いていたそう。
とんだ鉄人かと思いきや、等活地獄にでも自室を用意してもらえれば、住環境はともかく時間的猶予は潤沢だなあ。但し寿命と引き換えに。




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