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形が変わるとき熱エネルギーを放出する。

少しだけ仕事を残しているが、珍しく雪が降り積もった東京で帰宅難民となる前に帰り支度を始めた。

「明日は風だけは吹かないでほしいな」
仕事おわりの駅のホーム。コートとマフラーに身を包みスマホを眺めている人々とは異なり、ポケットに手を入れ反対側の自動販売機をただ見つめ電車を待つ僕が思う。
出来れば暖かい日が続いて欲しいが冬だから仕方がない、せめて肌を切り裂き、寒さを一段と感じさせる風だけは吹かないでほしいと思う日々。

寒さが苦手なのは四季を楽しめる日本で比較的暖かい地域で過ごしたことが関係しているだろう。
先週末、厚めのアウターを買おうとユニクロに行ったが予算をオーバーしていた。学生の頃のイメージだともう少しコンビニ感覚で立ち寄り、購入することができた気がする。
足を伸ばしてGUにも行ってみたが、アウターを買うくらいなら寒さを我慢すればいいと思い、今シーズンも通勤時は寒さとそして満員電車と戦う。

今日は一段と寒いな。
「いや、電車が来ない」
少し高めのイヤホンはノイズキャンセリング機能がついているから
駅のアナウンスは聞こえない。
いつもよりも長い間ホームにいる気がする。


・・・、 、

電車の遅延に文句は言わない。
地元は1時間に一本しか電車が来ないことが常識だ。
ただホームで次の電車を待つ。
なんとしてでもこの最前列をキープしないと。
次の電車で早く家に帰りたい気持ちが最前列を死守する。

線路上に屋根はない。
僕の真上に屋根はあるが、今日は風が吹く。
最前列の僕に雪が叩きつけられ、何事もなかったかのように足元に落ちていく。足元の雪は一呼吸おいて溶けていく。
”雪がとけたら、春になる”僕の足元に春があるのか。
東京に来て4年、新卒ではないから社会人の春ではない。
彼女はいないから恋の春がやってくるのか。
風情が今日を少しだけ色付けてくれるが今僕は電車が恋しい。
乗り鉄でも撮り鉄でもない。利用客としてこんなにも純粋に電車を待つ。
雪国の人は「雪が積もったごときで電車が止まるなんて。」上京すればそう思う日が来るだろ。僕からしてみれば雪が積もった日は授業が止まっていた。
小学4年生の時「雪が積もっているので授業を中止して校庭で遊びましょう」突然の校内放送で教室は歓喜。学級崩壊が起こりそうなクラスが一つになったその日から、僕は雪が大好きだ。
雪は好きだが寒いのは苦手、これは矛盾しているようであながち間違えでは無い。
雨の日よりも雪の日の方が暖かいからだ。
ただ、そんなわずかな気温差は関係ない。
寒いことに変わりはない。

電車を待つ。耳が痛いがヘッドホンは無く、耳の穴を塞いで、熱くなる曲を聴いて電車を待つ。
ポケットの中で画面を見ずにスマホを操作し、曲を飛ばす。

背中のリュックを電車側に移動させる。

微かに揺れる炎は魂なのか、車窓に映る満月か

必ず明日も震えてる。

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