マガジンのカバー画像

Sound Horizonの考察・調査記事まとめ

95
ニンニ リズが書いた、Sound Horizonの楽曲や世界観に関する考察や調査記録記事のまとめ。
運営しているクリエイター

#Moira

【SH考察:095】アルテミシア占星術師説

Sound Horizonのキャラクターのうち、Moiraに登場するアルテミシアは巫女として死を迎える。 しかし彼女は単なる巫女ではなく、精度の高い占星術の心得があったのではないだろうか。今回はその巫女兼占星術師像について考えたいと思う。 対象6th Story Moiraより『星女神の巫女 -Αρτεμισια-』 考察巫女であり占星術師だった? アルテミシアは星女神の神殿で巫女として生きていたようだが、実際には占星術師としての要素を持ち合わせた役職だったのではないだ

【SH考察:094】Moiraの世界にElysionはあるのか

Sound Horizonの世界・地平線の中でも、Moiraは群を抜いて古い時代をテーマにしている。明らかに古代ギリシャがテーマだが、古代ギリシャと言えば別の地平線で題材になった死者の楽園エリュシオンが想起される。 しかしMoiraの中でエリュシオンへの言及はない。そこで今回はMoiraの世界観にエリュシオンがあるのかないのかを考えてみた。 対象6th Story Moira 考察古代ギリシャの中でも具体的にいつか 古代ギリシャと言ってもその期間は非常に長い。それこそ

【SH考察:092】エレフセウスが暗黒時代を引き起こした説

Sound HorizonのMoiraは他と比べて群を抜いて古い時代をテーマにしているように見えるが、曲中のワードを拾っていくと、想定されている時代を絞り込めるように感じる。 中でも今回は、エレフセウスがギリシャ史で暗黒時代と呼ばれる時代を引き起こしたという設定なのではないか?という点を深堀したい。 対象6th Story Moira 考察暗黒時代とは ギリシャの歴史における暗黒時代とは、紀元前12世紀~紀元前8世紀の文字記録がとにかく乏しい時代のことだ。 ミケーネ文

【SH考察:080】Moiraの神々とギリシャ神話の神々の比較

Sound HorizonのMoiraにおいて、様々な神の名が登場する。 舞台は古代ギリシャのような世界であるため、実際のギリシャ神話との関連性が気になるところだ。 今回はMoiraの神々を実際のギリシャ神話と比較しながら理解を深めようと思う。 対象6th Story Moira全曲 考察Moiraの神々 Moiraの世界には30柱以上の神の存在が確認できる。 この神々にどのような特徴があるのか、実際のギリシャ神話の神々と比較しながら見ていくことで、その世界観の理解

【SH考察:079】冥府の扉を開いた「或る男」は誰か

Sound HorizonのMoiraにて、『神話の終焉』では、それまでエレフセイアという叙事詩の中でさんざん人物名が登場してきたにもかかわらず、なぜか「或る男」と濁されている人物がいる。 今回はこの「或る男」が誰かを考えてみよう。 対象6th Story Moiraより『神話の終焉 -Τελος-』 考察まず文章の意味を整理しよう 或る男について考える前に、或る男が登場する文章全体の意味を整理したいと思う。 この部分は前半が比喩、後半がその比喩の意味を表していると

【SH考察:075】Moira登場人物のうちギリシャ神話に登場する人物からの引用

Sound HorizonのMoira(およびその派生曲)には、現実のギリシャ神話に登場する名前をもつ人物が登場する。 そこで、元ネタの人物と照らし合わせて共通点・相違点を探った。 対象6th Story Moiraより『運命の双子 -Διδυμοι-』『雷神域の英雄 -Λεωντιυς-』 9th Story Neinより『愛という名の咎』 考察現実に残るギリシャ神話に登場する"人" Moira作中には人物や神の名が大量に登場する。 そのうち、神の名は海や風など自然

【SH考察:066】エレフセウスの半生を表す神託の意味

Sound Horizonの作中の「神託」といえば、最近は絵馬に願ひを!に注目が行きがちだが、それより前の作品であるMoiraにも神託はあった。 国と時代が違えど、神託というものはその真意がわかりにくかったり、結果がすぐには目に見えなかったりと、聞いたものを迷わせるようだ。 Moiraでも明らかにエレフセウスの半生を表す神託だとわかるのは、最初から最後まで見届けた我々聴き手だけ。 今回はMoiraの神託と、それが何を表していたかを整理した。 対象6th Story Mo

【SH考察:048】冥王は母を何と呼んだか

Sound HorizonのMoiraでは、『冥王 -Θανατος-』にて、タナトスが母上のことを「モイラ!」と呼ぶ。 アルバム名の読み方が「ミラ」だから、初見では違和感があるだろう。 なぜ発音の揺らぎがあるのか、その理由を考えまとめた。 対象6th Story Moiraより『冥王 -Θανατος-』 考察タナトスが母を呼ぶとき 曲中、タナトスは母を2回呼ぶ。 ここの「母上」の発音が気になる。明らかに「モイラ」と発音しているように聞こえる。 6th Story

【SH考察:041】第六の地平線とギリシャ神話での冥府と死神の違い

Sound Horizonの第六の地平線Moiraは、古代ギリシャ的な世界観の物語だ。 しかし、現実に伝わるギリシャ神話とは少し違った面もある。 今回はその中でも、死後の世界である冥府に着目し、その相違点の整理と、そこから推測できるMoiraにおける神の位置づけについてまとめた。 対象6th Story Moira 隠し曲の『神の光 -Μοιρα-』についても触れる箇所があるため、念のため#ネタバレタグをつけておく。 考察冥府とは 冥府とはギリシャ神話における死後の世

【SH考察:022】詩女神六姉妹の名前と配色の由来

Sound HorizonのアルバムMoiraに登場する詩女神六姉妹。創世の三楽神の末妹神ハルモニアの娘達。 彼女達の名前の由来は、既にいろいろな人がまとめていることではあるが、私が一か所に情報をまとめたいというわがままで、自力でもまとめておく。 出来るだけ音楽的な知見が無くても理解できるように努めた。 対象曲6th Story Moiraより『神話 -Μυθος-』 考察教会旋法 六姉妹の名前の由来は、教会旋法が由来の可能性が高い。  そもそも旋法とは とてもざっく

【SH考察:007】Moira作中の時系列

Sound HorizonのStory CD(アルバム)の中で、特にMoiraは全体を通して時系列がわかりやすい。改めて時系列を整理してみた。 対象曲6th Story Moira 考察舞台 大雑把に言うとバルカン半島やアナトリア半島あたりの地域。 サンホラの中でも群を抜いて古い時代を扱っており、ざっくり見ても時代背景は紀元前。 曲中の情報から、ざっくりと地理イメージを図に起こした。 地理については別途こちらでもまとめているので、もしよろしければご一読ください。 1

【SH考察:006】Moiraの地理

※2024/05/07更新 Sound Horizonの地平線の中でも、群を抜いて古い時代をテーマにしているMoira。 詳細な年代情報は少ないが、地理情報はある程度つかめるためまとめた。 対象曲6th Story Moira 考察ギリシャ各領域の位置関係 舞台は大まかに言うとギリシャだが、現実現代の地理や国と照らし合わせるとトルコなども含まれる。ざっくりエーゲ海の周辺ととらえるほうが良いだろう。 おおよその配置は現実の地理と、各曲の描写で判断できる。 『神話 -Μ

【SH考察:002】アレクセイ ロマノヴィチ ズヴォリンスキーとその周辺人物

Sound Horizonの楽曲『人生は入れ子人形』に登場する人物、 【ロシア人富豪:Алэксэй Романович Зволинский】 アレクセイ・ロマノヴィチ・ズヴォリンスキー。 ロシア人のチャーミングな、そしてギリシアの遺跡を発掘したらしい男。 彼自身と周辺の人物関係を整理したい。 ※一部隠しWebページの話に触れるため、念のためネタバレタグをつけておく。 対象曲6th Story Moiraより『人生は入れ子人形 -Матрёшка-』 考察彼の名