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局所的歌詞語り #1 ―「mer」THE NOVEMBERS

歌詞を語るとき、ひとの愛は偏りがちである。このミニ連載では音楽を聴いて射抜かれた瞬間と、そこから生まれた言葉たちを肯定する。

歌詞の1文のみをピックアップし、語ってもらう局所的歌詞語り。第1回は音楽ライターの滝田優樹さんが、THE NOVEMBERS「mer」の歌詞を語る。

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執筆者:滝田優樹@takita_funky
地元苫小牧での野外音楽フェス開催を夢みるサラリーマン兼フリーライター。
猫と映画鑑賞、読書を好む。小松菜奈とカレー&ビリヤニ探訪はライフスタイル。あれこれ書いています。仕事に関するお問い合わせはfunky.takita@gmail.comまで


「君が吐き出したものを僕が食べる」
――「mer」THE NOVEMBERS


君と僕、あるいは君と私。それぞれが違う個体で、僕や私は決して君にはなれない。それを受け入れた上で、君に近づきたい。君を知りたい。それでも君になりたい。“君が吐き出したものを僕が食べる”は、決して狂気や穢れではなく、ひとつの純粋さから生まれた言葉。勿論そんなことは、君に言えるわけもないけれど。

そして“どうしてそれがわからないんだろう/君のその肌の中で起こる/全ての出来事はなんて美しいんだろう”と歌詞は続く。そんな行為がデカダンスだと罵られたって、耽美だと信じて疑わない。究極の愛情表現だ。その言葉や行為ではなく、こんなことを言えてしまう――無垢な心性に惹かれた。

花や虹やメリーゴーランドが本質的に美しいんじゃなくて、美しいと思うから美しい。自分に素直で、正直でいること。美に対する価値観は自分で決めること。他と違ったって恥ずべきではない。それをいつまでも心に留めておきたい。



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