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日本一周一筆書きの旅②

前回の続きです。よろしければこちらをお読みきださい。

皆さんは財布が落ちていたら、それを届けるだろうか?

僕は激しくそれを問いかけてみたい。当然?でも、もし財布の中に17万円入っていたら?以前書いたことがあるが、僕は17万円が入った財布を拾い、それを正直に届けたのであって、そんな素晴らしい僕にとってこの「出来事」は悲しすぎるものであった。

ズタズタになった財布の記憶を思い出しながら、でもそんな人ばかりではないだろう。今回はなぜか出てくるような気がする。そんなことを思いながら、鳴門へ引き返す道を僕はバイクに乗っていたのである。

果たして結果は?朝食を取ったローソンに引き返してみると、それならお客さんが届けてくれ、既に警察に届けてあるということだった。その足で警察署に向かうと、バックはその中身がそのままのかたちで届けられていた。ありがたかった。しかも届けた人は何の謝礼も求めず、持ち主に返ればいいと、名前や連絡先も届けていなかったとのことである。

僕の中で再び人間に対する信頼がむくむくと復活した。空も海も青くきれいに見えた。時間は相当ロスしたが、おかげで僕は四国一周の旅を断念することなく、無事旅を終えることができたのである。


ついでながら、もうひとつ質問してみたのだが、皆さんは財布をなくして困っている人がいたら、お金を貸してあげるだろうか?これは賛否相半ばするところかもしれない。

福島の高速警察の主任さんもお金を貸してくれたが、実は、この四国の旅でもお金を貸してくれた人がいた。室戸から鳴門に戻る途中、早く連絡した方がいいかもしれないと、道の途中にあったローソンに立ち寄って鳴門のローソンに連絡を取ってもらうとした。

朝ご飯を食べたローソンのレジートもすぐに捨ててしまっていたので、どこの店か特定もできなかった。応対してくれたのは、親切な女性で、本部に電話して鳴門のローソンをピックアップし、それぞれの店舗に確認してくれた。結果的にはどこの店にもそういう落し物の届け出はないということだったのだが、これは僕がそれがローソンプラスという別系列のローソンだったからかもしれない。

そのときである。彼女は「もしよかったらガソリン代だけでも貸しましょうか」と言って1万円を差し出してくれた。レシートの裏に自分の名前を書き、レシートに書かれた店の住所を示して、「ここに送ってくれればいいです」と言って僕の名前も住所も聞こうとしない。

ありがたく貸していただくことにし、自分の住所と名前を伝えたが、困っている身にとっては、地獄で仏を見るような心持ちだった。このお金はバックが見つかって、再び室戸に向かう道でお返しした。「あってよかったですね」と彼女は我が事のように喜んでくれた。

そこで再び聞いてみたいのだが、皆さんは財布をなくして困っている人がいたら、お金を貸すだろうか?


話があちこちして申し訳ないが、この四国の女性の善意に接した時、ふと再び僕の記憶によみがえった「もうひとつの出来事」があった。

それはまだ草薙の図書館に勤め東名通勤をしていた時のこと、由比のPAでひと休みしていると、30代くらいの男が近寄ってきて、次のSAまで乗せて行ってほしいと言う。「いいよ」ということで車に乗せ、道すがら話を聞くと、岡山から来た。貸金業か何かの仕事を立ち上げようとしているところで、打ち合わせのため静岡に来たのだが、財布を落としてしまった。横浜に行かなければならないので、ヒッチハイクしているのだと言う。
身なりはさほどきっちりはしていない。Gパンに上着、髪の毛はやや長く、煙草のにおいがする。
 
少し危険なにおいもしたが、ことば遣いも丁寧で仕事のことを語る様子がとても熱心だった。それで、余計なことかもしれないと思いつつ、困っているならお金を貸そうと、東名を降りて新富士駅まで一緒に行き、お金と名刺を渡した。

男は「貸してもらえるんですか?ただ、今月は返すのが難しいので来月になってしまうかもしれません」と言うので、「それでいいですよ」と言って車を降ろした。車を出すと、男がバックミラーの中で深々と一礼するのが見えた。笠地蔵のおじいさんのように満ち足りた気持ちになって、僕も家路を急いだのであった。

結末は・・、おおよそ想像していただけるかもしれないが、にもかかわらず、結局お金が返ることはなかった。何か事情があったのか、初めから返す気がなかったのかも分からない。いまだに何の音沙汰もない。

さて、そこで三たび質問してみたいのだが、皆さんは財布を落として困っている人にお金を貸すだろうか?

いろいろな人がいる。お金は おっかねー! とくだらぬおやじギャグをかまして長きに渡ったこの話を締めくくりたい。


全くの蛇足になるが、四国へ行く前、休暇を取るために上司に「バイクで出かけるので事故にでもあった時は後のことをよろしくお願いします」と言い置いて出かけた。もちろん冗談ではあるが。
ところが、落とした財布が警察に届き、中に入っていた名刺からまず職場に連絡が入ったらしい。電話に出たその上司は徳島警察署からだということで驚き「○○という人物がそちらに勤務しているか」と問われて、「ああ○○さんは(僕のこと)とうとう・・」と思ったのだそうである。

以上、お金を貸す、貸さない、についてのエトセトラである。

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