パイロットの天気の話の続き
前回の記事で、パイロットの天気の見方の原則として
大きく見て、公式の数字を確認、逃げ道を確保して、決断を下す
という流れがあることを紹介し、「大きく見る」ところについては無料版で、「公式の数字」については有料版で解説しました。
今回は、後半の「逃げ道を確保して、決断を下す」について解説します。
運航可否の判断
パイロットが運航可否を判断する場合、前回の記事で見た公式の数字であるMETAR(現況)やTAF(予報)を空港の最低気象条件(ミニマ)と比較することで可否を出します。現況や予報がミニマを下回っていれば運航不可(NOGO)、そうでなければ運航可(GO)と、比較的シンプルです。
注:本当はそれに様々な条件が付随して可否を判断するので、ここまで単純ではありませんが、当座の原則論としてはこれでよいでしょう。
誤解を恐れずに言えば、上記のように運航の可否を機械的に判断するために必要なのは法律の知識であり、気象の知識ではないのです。では、なんのためにパイロットは気象を学ぶのでしょうか。
気象の知識は、新しい言語のようなもの
気象の知識は、新しい言語を学ぶのと似ています。気象を一通り体系的に学んだ人は、雲の形ひとつから、おおくの情報を得ることができます。ちょうど、雑音にしか聞こえなかった外国語が、意味のある言葉として聞こえてくるようなものです。
ある教科書の目次。PPL向けでも、これだけ広範囲に渡ります
気象の勉強をするときも、この点を意識するといいと思います。そして、学んだ知識(言葉)をフィールドに出て使ってみるのです。
VFRに必要な気象知識
訓練初期は、VFR運航ですね。この場合、オペレーションにもよりますが、雲に入らないようにすること、風が強くなるところや巻いているところの目利き、天気の急変の察知、霧、昼と夜の天気の違い、山岳部の特徴などがメインテーマになってくるでしょう。
IFRに必要な気象知識
訓練が進むと、IFR運航になって雲に入るようになります。今までは避けていた雲の中に、堂々と入っていくので、入っていい雲と悪い雲の見極めが大事になってきます。また、飛ぶ高度が少し高くなってくるので、インバージョン(逆転層)なども体験するようになるでしょう。
また、VFRでは飛べなかったような悪い視程や、低い雲でも飛ぶことができてしまうので、予報の背景を考えずに数字だけを見てしまうと、帰ってきたときは寒冷前線に突っ込んでしまった、などということになりかねません。冒頭で話したとおり「GO・NOGO」を機械的に判断するだけではいけないのはこういう理由があります。
高気圧でも、低気圧でも低い雲は出ますから、ここでは大気の安定度や前線と低気圧の知識、積乱雲の知識など、リスクを測るための知識が必要になってきます。もちろん、VFRでもそれは大事なのですが、天気が悪ければ問答無用でNOGOだったVFRと違い、IFRはよりリスクを取れて「しまう」ので、知識の積極的な運用が必要になっていきます。
また、気象と法律の結びつきが強くなってきます。それは、VFRならとりあえず地表が見える前提ですから最悪の場合はどこかに不時着すればいいと考えるのに対し、IFRは雲の中にいて周りが見えない前提で法律が組み立てられているからです。オルタネート空港の適用や選定はその典型ですね。
エアライン運航に必要な気象知識
エアラインに入れば、飛ぶ高さも距離も桁違いに大きくなります。また、日本以外の国に言ったり、外国をベースにして飛ぶ場合は、当然その土地ごとの天気の特徴などもつかむ必要があります。この段階では、今まで習ってきた気象の知識全体を総合的に使う機会がたくさん出てきます。
以下の有料版では、私が以前にnoteにアップした下記の有料noteの内容を公開して、PPLの時に習った気象の知識がエアラインの運航にどのように活きているのかを、具体的に紹介したいと思います。
本記事(580円)をご購入いただくと、下記の有料note(350円)の内容が見られるので、お得です。
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